9月12日(日)曇り 明莉との日常その17

 気がつくとあっという間の日曜日。居間でゆっくり過ごしていた僕に明莉が話しかけてきた。


「りょうちゃん、来週って体育祭だよね?」


「うん。そうだよ」


「大山先輩って何の種目出るの?」


 そう聞かれて僕は新喜劇のようにこけてしまう。それが聞きたい本題だとしても最初に聞くのは僕の方じゃないのか。お兄ちゃんはちょっと寂しいぞ。


「わからないよ。女子は女子で種目決めしてたから」


「えー……何に出るか話したりしてないの?」


「……してない」


 恐らく席が隣だった頃なら知っている可能性は高かっただろうけど、そうだとしても僕からその話題を振らない気がする。体育祭に関しては僕の興味はほとんどない。


「じゃあ、ついでにりょうちゃんは何に出るの?」


「ついでなのか……ムカデ競争」


「うーん……地味」


「そ、そう言われても。あとはチーム戦とは別だけど部活対抗リレー」


「ええっ!? りょうちゃんがわざわざ代表者として走るの!?」


「男子が少なかったから……」


 明莉が驚くのは僕がそれほど走るのが得意じゃないのを知っているからだ。しかし、それで興味を持って貰えるとはちょっと出たかいがあったかもしれない。


「もしかして体育祭来る予定?」


「まー、朝からってわけじゃないけど、せっかくりょうちゃんの高校の晴れ舞台だしねー」


「別に体育祭は晴れ舞台っぽいことしないけど……」


「それに大山先輩も見たいし!」


「そっちが本音か」


 夏休みのあの一回しか会ってないのにその懐き方はいったい何なんだろうか。連絡先を交換していた感じもなかったから明莉が一方的に言っている気がする。というか、そうでないと僕の立場がない。


「だから、大山先輩がどの種目出るかそれとなく聞いといて。あとは部活対抗リレーの時間帯も教えて」


「わかった。たぶん来週には両方とも教えられると思う」


「りょうちゃんが大活躍したらあかりが何かおごってあげるからね!」


 その気持ちは嬉しいけど、部活対抗リレーはともかくムカデ競争では活躍具合がわからなさそうだ。それはそれとして妹が見に来てくれるからには例え出番が少なくても精一杯やろうと思った。

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