8/12 Thu 未読1
その日、彼女のLINEへメッセージが入る。その送り主は長らく名前を見ていない人物だった。一瞬だけ躊躇したものの、無視するわけにもいかないので彼女は本文を見る。
――久しぶり
――元気だった?
最初の言葉は彼女が想像していたよりもシンプルだった。しかし、どうしてこのタイミングで送られてきたのか理由がよくわからない。返信に少し迷ってから彼女は「うん」と短い返事を送る。
それから数分後、次のメッセージが入る
――この休み中
――会えないか?
その言葉で少しだけわかった。相手は夏休み中だから送ってきたのだ。絶好のタイミングではないが、それでも長い休みの中で声をかけることはそれほど不自然じゃない。少しの間会っていなかったが、高校生になって初めての夏休みで久しぶりに会いたくなった。それらしい理由だと彼女は思った。
ただ、彼女にとってその言葉に返信するのは先ほどよりも難しかった。その始まりは相手からで、別れは彼女自身が切り出したものだが、彼女は最後にこう言った。
『これからは元通り友達として……ね』
それは彼女が望む本心だった。その期間の関係性がどうであれ、そこに至るまでの過程では彼女とその相手は間違いなく仲の良い友達の一人だった。それが一歩踏み込んで、元に戻ろうとしているだけだ。彼女はそう考えていた。
しかし、その関係が元通りになることはなかった。相手は彼女を徹底的に避けた。確かに相手は彼女の最後に頷いてはいなかった。だけど、あれほど仲が良かったはずなのに、避けられるようになるなんて彼女は想像していなかった。
その時、彼女は思った。そうなるくらいなら、アタシが最初に頷かなければ良かったのだと。アタシはそのままでも十分だったのに、断ればそれが壊れてしまうんじゃないかと考えたのが間違いだったと。だって、そこで断っていれば……
すると、彼女が言葉を返す前に追加のメッセージが送られる。
――やり直したいんだ
(そんなのって……)
その言葉がどちらの意味であるか。敢えて外して考えるなら、もう一度友達になりたいという意味になる。ただ、それはまた彼女が望むだけの話だ。今日まで連絡を寄越さなかったのに、そんなことを唐突に言い出すのはどこからやり直すにしても、最終的に着く地点は同じだ。その結末は以前の繰り返しになってしまうのだろう。
――16日の月曜日
――空けておいてくれ
彼女はそれを見て最後にスマホをベッドへ放り投げた。
(アタシは……)
過去は振り返らない。そう思っている彼女だが、過去は変わらないもので、現在まで続いてしまうものだった。
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