7月8日(木)雨 大山亜里沙との会話その15

 期末テスト2日目。今日も僕と大倉くんは腹式呼吸からスタートして落ち着いたつもりでテストをこなしていく。


「うぶクン、現社のテストどうだった?」


 そして、テスト終わりに大山さんが話しかけてきた。でも、その内容は僕の方が聞くならまだしも大山さんから振られると思ってなかった。


「できた方だと思うけど……どうして?」


「いや、アタシがめっちゃできたから」


「そ、そっか」


「自慢ってワケじゃなくて、今回もうぶクンのノートに感謝してるって意味だよ?」


 大山さんとは少しばかり話さない期間があっても現社のノートは毎回貸していたから言った通り役立ったのだろう。というか、席替えしてからも本当に現社だけはぐっすり眠っているから逆に感心する。


「それでさ、うぶクン……」


「な、何?」


「……本田の得意科目って何かわかる?」


「本田くんの? うーん……理科総合や化学は僕より高かった気がするから理系かな?」


「なるほどねぇ……同じ暗記系が得意なんだ」


 理系と暗記系だとちょっと意味が違う気がするけど、点数で競うことで考えれば同じ得意科目になるのか。前回の点数を正確に覚えていないから、現時点で僕も二人の実力差がどれくらいあるのかわからない。


「まー、今更探っても仕方ないんだケドねー」


「確かにそうだね。本田くんと話してる時はテストの話題出なかったの?」


「あんまり出なかったかなー」


「へぇ。じゃあ、どんな話してたの?」


「それは……秘密」


「えっ? 秘密って……」


「逆にアタシと本田の会話ってそんな気になる?」


 そう言われてしまうと普通は気にする必要はない。だけど、大した話じゃないとか、忘れてしまったとかならまだしも”秘密”と言われてしまったら何だか興味を惹かれてしまうじゃないか。特に本田くんの真意を知ってる僕は。


「いや、ちょっと聞いてみただけ」


「なーんだ。それはそれとして、本田には勝ってみせるから任せといてよ!」


 大山さんの言い方からして、僕はいつの間にか大山さん陣営に含まれていたらしい。確かに大山さんが勝ちそうとは言ったけど、何か賭けてるわけでもないから大山さんを応援するよりは本田くんを応援した方がいい気がする。本田くん、勝ったら何をお願いするつもりなんだろう。

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