7月5日(月)雨のち曇り 大山亜里沙との会話その14

 テスト2日前の月曜日。水曜日からテストが始まるけど、通常授業からいきなりテストに切り替わるのは何だかやりづらさを感じてしまう。僕は土日が終わった次の週で全てのテストが終わった方が楽だと思っている。その分、前日の土日はがんばらないといけないけど。


「うぶクン、今回はアタシとテスト勝負しないの?」


 1時間目が終わった休み時間、大山さんはそう聞いてきた。特に前振りもなく言われたから僕はちょっと驚く。


「テスト勝負って毎回やる感じなの?」


「だって、前回アタシが勝ったままだからうぶクンもリベンジする機会が欲しいと思って」


「僕ってそんな闘争心溢れてる感じに見えるかな?」


「もー そこはノリ的な問題じゃん~」


 そう言われても前回はそれで返事をしたらお願い付きの勝負になってしまったんだ。今回は慎重にいかなくては。


「良ちゃんがやらないなら、オレと勝負するのはどうだ?」


「えっ? 本田と?」


 そんな僕と大山さんの会話に本田くんはさらりと混ざってきた。先週の件があったから本田くんに話を振ろうか迷っていたけど、本田くんから来てくれるなら何も問題ない。しかも勝負をしかけるなんてなかなか積極的だ。


「オレじゃ役不足か?」


「ううん、全然! アタシは競い合った方がやる気が出るだけだし。でも、本田がそう言うのちょっと意外かも?」


「本田くん、この前のテストの点数が僕と同じくらいだから、大山さんともいい勝負になると思う」


「へー、そうだったんだ」


 よし、今のは自然な感じでアシストできたんじゃないか? この勝負で二人の距離が近づく……かどうかはわからないけど、少なくとも話すきっかけにはなりそうだ。


「じゃあ、今回は本田と勝負ね! それで、勝った方がお願いするのあり? なし?」


 あれ? 僕の時には問答無用でありだったのに、本田くんには聞くのか。どっちがいいかわからないけど、扱いの差を感じる。


「ありでいいよ。その方が勝負のしがいがあるんだろ?」


「わかってるぅ! じゃあ、何お願いするか考えとくね」


「ああ、オレも考えるよ。勝つつもりで」


「あー!? 言ったな~」


 また聞く側に回っているけど、僕が感じている以上に二人は仲良くなっているのかもしれない。そう考えると、中学の時の本田くんがあまり話せなかったのは単にきっかけがなかっただけに想える。


「うぶクンはどっちが勝つと思う?」


「うーん……前回のままでいくと、大山さんが勝ちそう」


「じゃあ、うぶクンはアタシの味方だね!」


「良ちゃん、参加してないからって余裕だな」


「いやいや、本田くんもがんばって」


 本当はまた何かお願いされると困るから回避できて良かったと思っているし、二人がお互いにどんなお願いをするだろうかと考えるほど余裕だ。やっぱり勝負事は外野で見ているのが一番楽しいと思った。

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