6月16日(水)雨 本田真治の恋煩いその2
「うぶクン、ノートありがと!」
5時間目の休み時間。相変わらず現社の授業中の大山さんはすやすやしていて、授業終了後に僕からノートを借りていた。そして、ノートが返却された後はルーティンのごとく会話が始じまる。
「そういえばさ、からあげと竜田揚げの違いって知ってる?」
「違い……名前が違うってことじゃなく?」
「そりゃそうだけど、そこ以外にも大きな違いがあるんだな~ わかる?」
「うーん……本田くんは知ってる?」
大山さんのクイズを僕は前の席の本田くんへ受け流す。
「いや、全くわからん」
「なんだ、本田も知らないんだ? 実はね、からあげは小麦粉、竜田揚げは片栗粉を使うんだって」
「そうなのか。衣が違うけど原材料は知らなかった」
「まぁ、実際は小麦粉と片栗粉の両方使ったり、地域によっては竜田揚げがイコールからあげだったりするらしいけどね」
「なるほどな。大山はそういう情報、どこで集めてるんだ?」
「集めるっていうかインスタの投稿でマメ知識書いてあるやつで見たりするカンジ? あっ、この話は料理系の人の投稿だった」
「大山も料理するのか」
「しないことはないけど、美味しそうな料理見るのは楽しくない?」
それは何となくわかると思いながら僕は二人の会話を聞く側に回っていた。大山さんの件を聞いた日以降、何となく大山さんとの会話に本田くんも巻き込み始めたけど、話し始めると二人は結構普通に話せている。
「てかさ、本田って高校でちょっと変わった?」
「え? どこか変わったか?」
「中学の時はもっとカタそうな雰囲気だった気がして……あっ、気のせいだったらゴメン!」
「自分では変わったつもりはないが、そう言われるなら柔らかくなったのかもな」
「アタシはそう思うな~ うぶクンは……って、おな中じゃないかわかんないか」
「いや、僕も最初の印象だと固いわけじゃないけど、しっかり真面目な感じがあったよ。話すと普通に冗談とか言うけど」
「良ちゃんまで言うなら最初の印象はそう思われるんだろうな」
本田くんは少し照れながらそう言う。まさしくその表情は最初の本田くんからはあんまり想像できなかった。
「ま、アタシからしたら二人とも真面目だケド……これから真面目コンビって呼ぼうかな?」
「良ちゃん、言われてるぞ」
「いや、それでも僕は大山さんにテスト負けてるから……」
「えー? テストと真面目って関係ある?」
そんな感じの今日の休み時間も楽しく会話は終わっていった。完全なお節介で始めたことだけど、大山さんと本田くんが話すきっかけができ始めたなら良いことをしたと思う。がんばれ、本田くん。
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