6月2日(水)曇り 大山亜里沙との会話その10
まだ新しい席からの景色に慣れない水曜日。今日もテスト返却が中心で、返された直後は一喜一憂する声でクラスがそれなりにざわざわとする。
そんな中で僕が一番気になっている現社の授業でもテストが返却される。
「良ちゃん、何点だった?」
「僕は……」
「あー!? うぶクンと本田ストップ! やるならアタシに聞こえないようにね」
大山さんが割り込んできたので、僕はテスト用紙そのものを本田くんに見せた。そこまで厳重にしなくてもと思うけど、今のところ僕の方では大山さん側の点数を一切把握していない。この現社は色んな意味で大山さんの点数が気になるけど、無理に聞いたら怒られそうだ。
そこで、僕はつい先日知った情報源を使うことにした。
「本田くん、ちょっと聞きたいんだけど……大山さんって中学の時は成績優秀だった?」
大山さんに聞こえないよう小声で本田くんに聞くと、本田くんは何とも言えない表情をする。
「それは……わからない。テストの点数は聞いたことないから」
「そっか……」
「でも、悪い方ではないとは思う。そういう悪い話は聞いたことない」
その言い方からして補習を受けたり、先生に怒られたりといったことはなかったんだろう。僕も現社の授業態度以外は悪目立ちするところはないと思っているから、テスト終了後や返却時の自信満々な様子は本物なのか。
「それで良ちゃんは勝ったら何をお願いするんだ?」
「……勝った時に考える。というか、その話結構広まってる感じ……?」
「さっきもこのテンションで喋ってるから、それなりに聞こえてる人も多いじゃないか? 後は……大山自身が直接周りに喋ってるとか」
悪目立ちしているのは僕の方だった。男子から言われる分にいいけど、女子にどんな風に思われているかは絶対に聞きたくない。
それから現社も通常授業に移っていくと、さっきまではハイテンションに周りと話していた大山さんはいつも通り考えるポーズで居眠りしていた。その余裕があるということはテストはできているということなのか。
「そんなわけでうぶクン、ノート貸して☆」
「そんなわけじゃなくて、ちゃんと起きて……」
絶対に僕が心配する話じゃないんだけど、大山さんの授業態度のためにも僕は勝たなきゃいけないのかもしれない。
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