5月27日(木)雨のち曇り 友人との日常その4

テスト最終日。今日は問題のコミュ英語があったけど、何とかできた感じはするから中間テストの良い締めになったと思う。


「結果楽しみにしてるから! あっ、お願い何か考えといてね~☆」


 大山さんにそう言われて、そういえば勝った時のことを何も考えていなかったことに気付く。勝てないと思ってたわけじゃないけど、いったい何をお願いすればいいんだ。購買でちょっとおごって貰う……ってこれでは僕も明莉と大差ない。


「う、産賀くん、お疲れ……やっと終わったね」


 大倉くんは珍しくぐったりした様子だ。今日も「めっちゃできた!」と言っていた大山さんと違って、ここ数日の大倉くんはため息が多かった気がする。


「りょーちゃん、クラさんお疲れ~ おや、クラさんは蘇生必要な感じ?」


「あ、ありがとう……そ、蘇生よりも転生したい気分かな……」


「じゃあ、何になるか考えないとねー クラさんはどのモンスターがいい?」


 モンスター限定なのかと思いながら暫く異世界トークが続いた。さすがにテスト期間中はこういう話はしなかったから久しぶりの雑談と言える。


 しかし、いつもの風景には一人足りなかった。


「松永、本田くんは?」


「あー、ぽんちゃんは部活行ったよ。午後から早速やるらしい」


「剣道部は活動的なんだな……テニス部は?」


「今日は行っても行かないでもいい日的な?」


 それで行かない方を選択するのは松永らしい。まぁ、テスト終わりとなればゆっくりしたい気持ちになるのもわかる。


「ところでりょーちゃん、大山ちゃんとのテスト勝負は勝てそうな感じ?」


「なんで知ってるんだ!?」


「いや、普通に聞こえてたから。二人ともそこそこの声で話してるし」


「そ、そうか。うーん……正直わからない。それに勝っても負けても困る」


「そこはりょーちゃんが受けちゃったんだから仕方ないでしょ」


 それを言われたらおしまい……いや、思い出してみると後から報酬付きと言われたから僕は悪くない……はず。


「どんなお願いするかりょーちゃんの紳士さが試されるな~」


「紳士さってそんな大そうなお願いをするわけじゃ……」


「じゃあ、何お願いするの?」


「うーん……」


 実際のところ、テスト勝負で勝ったお願いというのはどの程度のことならいい塩梅になるんだろう。今までもしょうもない勝負を友達としたことがあるけど、それは男子間の話であって、しかもテストみたいな真剣な場ではなかった。


「さて、りょーちゃんが妄想を巡らせてる間に……クラさんなら大山ちゃんにどういうお願いする?」


「ぼ、ボクも!?」


「ちなみに俺は髪型変えてってお願いするかな~ ほら、大山ちゃんいつも後ろで髪まとめてるから結構髪の長さあるし、他の髪型も似合いそうじゃん?」


「い、いいね、髪型変更……!」


 確かにそれはちょっと見てみたい……が、たかがテストの点が上だっただけでそういうお願いするのはどうだろうか? 気持ち悪がられないか? 僕が逆の立場になったら仲の良さにもよるだろうけど、ちょっと引いてしまいそうだ。


「それでクラさんは何か思い付いた?」


「ぼ、ボクは……一緒にゲームで遊ぶかな。も、もちろんネットでの話!」


「あー、大山ちゃん結構ゲーム好きらしいね~ りょーちゃんとクラさんみたいに通話しながらとか?」


「そ、そこまでは……で、でも、ネットでやるなら通話した方がいいかも」



 なるほど、前にも話題になったゲームに誘うのも手か。ワンチャン他の人も巻き込めるから気まずい感じにもならない……いや、そもそも大山さんはやりたそうにしてたんだから、勝利権を出汁に使う必要があるのか? 何ならその方ががっかりされないか?


「はい、時間はたっぷり与えたけど、りょーちゃん決まった?」


「……これは僕の勝負だから僕のお願いは黙秘する」


「はぁ!? ずるいぞ、りょーちゃん! クラさんも何か言ってやれ!」


「う、産賀くん! し、紳士なお願いはほどほどにね……」


 大倉くんの言う紳士は何か違う気がするけど、この流れで何か言ってもからかわれるのがオチだから僕は逃走を選んだ。肝心のお願いは……勝った時の直感にかけよう。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る