5月17日(月)雨時々曇り 大山亜里沙との会話その6

 梅雨入りした月曜日のテスト一週間前。これだけ近くづくと教室内の話題もテスト範囲の確認や暗記系の当て合いなどテストに関する会話も聞こえてくる。かく言う僕も休み時間はノートを見返し始めていた。


「うぶクン、まさかテスト勉強中!? マジメ~!」


 大山さんにそう絡まれたのは2時間目後の休み時間のことだ。確かに短い休み時間までやっているのは真面目に含まれるかもしれない。


「そんなに驚かなくても……もう来週にはテストだから」


「でもでも、休み時間は休む時間なんだから、休んだら良くない?」


「まぁ、そんなに根詰めて見てるわけじゃないから。流し見で何となく覚えようとしてる感じだよ」


「それでもやってるだけ偉いわ~」


「大山さんはテスト勉強してる?」


 何の気なしに僕がそう言うと、大山さんは腕を組ながら言う。


「今日からがんばる!」


「そ、そうなんだ……」


「あー! なんだその目はー! 部活停止は今日からなんだから全然セーフでしょ? それにアタシはやる時はガッツリやるタイプだから!」


「ガッツリね……」


 一番記憶に新しいのはGW最終日に宿題を終わらせていたことだ。その感じで行くとこの土日に詰め込むんだろうか。


「うぶクン。もしかしてアタシが勉強できないと思ってる?」


「いや、そんなことはないよ」


「ふーん……でも、考えてみ? この高校に入学してるんだからアタシとうぶクンの学力はそんなに差はないんだよ?」


「そう言われるとそうだけど……」


 僕がどうしても疑ってしまうのは現社を含め、大山さんが授業中に寝ていることだ。もちろん、普段の授業態度とテストの実力がイコールになるわけじゃない。でも、まるで影響がないかと言われるとそうではない気がする。


「そんなに疑うんなら、アタシと勝負しない?」


「えっ? 勝負?」


「どっちがテストの点数高いかの勝負。負けたら……なんか罰ゲーム的なことをする」


 そんなにわかりやすく顔に出ていたのかわからないけど、大山さんはそんなことを言い出した。


「いや、罰ゲームはちょっと……」


「もう! うぶクンが疑ってるからじゃん!」


「別に僕は疑ってるわけじゃ……」


「それなら罰ゲームなしでいいから勝負しよ? アタシ、勝負事あった方がやる気出るし!」


 そういうポジティブな言い方をされると、何だか断りづらくなってしまう。僕はあらゆる競走が得意じゃないけれど、何か目標を持った方がモチベーションが上がるのは確かだ。

 

 僕は少し考えた後、「わかった」と返事をした。


「それじゃ、決まり! あっ、罰ゲームはないけど、勝った方が何かお願いするのはアリにするね!」


「ええっ!? 後から言うの!?」


「うぶクンが勝てばいいんじゃん! よーし、勉強するぞー!」


 大山さんも何かのノートを見始めると思ったら、スマホを眺め始めた。この勝負に勝てるかと言われると、勝負事にやる気が出た大山さんのスペックを知らないから、全然わからない。

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