5.
その後、騒ぎを聞き付けた警察がやって来て。俺と菊は、揃って事情聴取をさせられた。
その所為で、いつの間にか辺りはすっかり暗くなり。ぽつぽつと先を照らしている仄かな街灯の光を頼りに、俺達は間に距離を置けながらも肩を並べて家に向かう。
結局、一体俺は何の為に。別に俺なんていなくたって、ストーカーの一人や二人、菊一人で十分だったじゃないか。コイツを心配する必要なんて、ちっともなかった。
桜文兄さんも人が悪いと、愚痴を溢さずにはいられない。
でも、本当にストーカーがいたんだなあと。何事もなくて良かったなあと。
ほっと小さく安堵の息を漏らしながら、俺はちらりと隣を歩く菊を盗み見る。だけど、その視線に気付かれてしまい。逆にじろりと菊は鋭い瞳で俺のことを睨み付けた。
「ちょっと。なにじろじろ見てるのよ、変態」
「なっ……! だから、俺は変態じゃない!」
「なによ。昨日だって人のスカートを捲ったくせに。白々しい。アンタも一緒に逮捕されれば良かったのに」
「なんだとっ!? だから、あれは事故で、故意にやった訳じゃないって何度も言ってるだろう!」
「口で言うのは簡単よね。けど、誰が変態の言うことなんて信用できると思うのよ」
「なっ、なっ……、だからあーっ!!」
「違うって言ってるだろう!」俺の必死の抗弁も、いつものごとく、あっさりと無視され。菊は一人、すたすたと先に行ってしまう。
果たして、コイツは本当に俺の(半分だけ血の繋がった)妹なんだろうか。それに、こんな妹はこっちから願い下げだ。そう思わずにはいられない。
先を行く憎たらしい異母妹の背中を思いっ切り睨み返しながら。
本当に可愛くないやつ――!!
俺は心の中で、思い切り叫んだ。
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