シンガーラヴ
エリー.ファー
シンガーラヴ
流れて曲がってしまう容器が一つ見つかったので、それを捨てることにした。
あまりにも使い道がないので、どうすればいいかと悩んだのが、結局うまくいかなかった。
必要以上に、自分を使ったり、見失ったりするものだから、全部捨ててしまう以外の道がないのだ。
心の話をしている。
この容器は私の心なのだ。
ここに何を詰め込んで、自分を表現するかということなのだ。
形が悪いから、沢山入りそうな気もするし固形物だとつっかえてしまうだろう。大丈夫だと思ってはいるが、それが事実かと言われると正直首をかしげるほかない。
情報を集めてから行動に移せばよかったのだが、どうにも面倒だったのでここで諦めてしまったのだ。自分のしていることに自信を持ってはいるが、それが何かに繋がる確証がない。
でも、そこから先の世界に誰かが住んでいるような気がするのだ。
自分以外の誰かであり、自分によく似た誰かであるのだが、それもよく分からない。
分からないことばかりだ。歩き続けるということをいやおうなしに押し付けられているから、どうにもこうにも我慢ができなくなってくる。
これは独白か、ショートショートか、詩か、それともポエムか。いや、一緒か。
私には少しだけ自分のことを理解するための手がかりがある。これが何かに置き換わるものであると信じている。
いや。
信じているだけだ。何も変わってなどいないのだ。自分の信じている人の言葉しか聞こえないし、信じていない人が喋った内容を、そぎ落として純化させることに慣れてしまった。
打ち続ける音が聞こえてくるものだから、自分を呪ってしまう。甘美だ。悪くはないのだ。
常識的な発想によって自分を形作ろうとしている。
嘘か。
これも嘘か。
被害者はこのような詩というのでしょうか。
はい。
こういうものですね。
それを残して亡くなりました。
加害者が残したものではないというのがかなり肝であると言えます。事件性は低いのですが、なんともこのような長文のダイイングメッセージが残っているということになると、考える余地があるように思ってしまいますね。
事故でいいでしょう。
ただ、明らかに不自然なものがあるわけですからこの部分に関してはある程度説明を作る必要があります。
私たちの仕事ですよ。
難儀です。余りにも難儀ですよ。
いいですか、これがどのような目的で残されたものであるかなんて、本人しかわかりえないものなのに、まるでその本人であるかのように理解する必要がある訳です。
本人しか分かりえないものであると何故言い切ることができるのか、ということですか。
一度、読んでみてください。
意味が分からないんですよ、さっぱりです。
これに、意味がありますか。あると思えないのですよ。
私には、どこかただの言葉の戯れというか、散文的過ぎて言葉自体のつながりが希薄であり、余白を埋めてしまう表現の稚拙さを感じる以外にはないのです。
別に、詩であるとか、ショートショートとか、そのようなものに対して見識を持っているとかそういうことではないので、所詮は素人の考えですが。
だとしても、ですよ。その素人がそのように感じてしまうようなもの。それ以外の何があるというのですか。
結局、これだって心の揺れで生まれた何かですよ。芥とか屑とかその類ですよ。
えぇ。そう思います。
これが。
へぇ。
そうなんですか。
なるほど。
少し理解しました。
まぁ、それなら凄いんじゃないですかね。えぇ。
シンガーラヴ エリー.ファー @eri-far-
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます