竜騎士
《竜騎士 LEVEL49》
「……おいおいマジか」
『グラァ!!』
正直、商人という職業でこういう反応をされるとは思っていなかった。
しかも相手は竜騎士。俺でも知っている強職だ。
武器は槍。
防具は防御が高めの鎧装備。
そしてかつ、横に居るドラゴン。
パーティー枠を一人消費してしまうが、それぐらいその竜は強いって訳で。
「……君は一人か?」
「あ、ああ~そうかも」
目の前の彼はそう恍けた。
間違いない、後衛がいる。
未だ居場所が掴めないが……警戒を続けなくては。
「……あんたは?」
「はは、一人かもしれないな――」
「! 行くぞバイオレット!」
答えながら、俺は斧を構えた。
同時にドラゴンに騎乗する竜騎士。
そのまま待つ訳には行かない。
「――『パワースロー』」
「っ!? 飛べ!」
「グラ――」
俺の投げたスチールアックスは、間一髪で上昇した彼らに避けられた。
機動力も中々あるな、アレは!
「――『ドラゴンスラスト』」
俺の投擲後の隙を突いて、ドラゴンごと突進してくる竜騎士。
カウンターだ。
「『高速戦闘』――『スラッシュ』!」
「んな!? ぐあっ!!」
「グラ――」
高速戦闘により、全ての動きを高速化。
インベントリから斧を取り出し――突進攻撃を回避、武技発動まで間に合わせた。
突進中のカウンターを食らい、ドラゴンから転げ落ちる竜騎士。
ドラゴンの方はそのまま遠くの方へ。
……こんな序盤で高速戦闘を使ったのは訳がある。
後ろに居る、後衛を炙り出す為だ。
「『パワースウィング』」
「ぐうっ――『ドラゴンコール』!!」
「!」
「はあ、はあ……あっと言う間に20パー削られたな」
追い打ちが一発入る――だが直後彼と俺の元に急速で飛来するドラゴン。
堪らず避ければ、そのままドラゴンに騎乗され空中まで逃げられた。
……この状況でも後衛は出てこないか。
「接近戦は敵わない……分かってた、分かってたさ……でも悔しいもんだな」
「?」
「あ~ごめんこっちの話。ココからは――『俺達』のターンだ。行くぞバイオレット」
「グラァ!」
そう言った後、また此方へ飛んでくる。
何かが来る――そんな気配。
「食らいやがれ――『ドラゴニックファイア』!」
「グラアアア!!」
「っ――」
此方へ近付いたドラゴンは、そのスキルが発動された瞬間紫色の火炎を放射した。
ミニドラゴのブレスとは少し質が違い、広範囲にばら撒かれるそれ。
反撃の暇なんて無い、効果時間が終わるまで逃げ――
「――!?」
瞬間。
『異なる方向』からの殺気。
そしてそれに気付いた時には。
「――……『ライトニングアロー』」
「なっ――」
微かに聞こえた詠唱。
同時に、既に輝く矢が雷の様に襲ってきた。
……避けられない!
「――『ドラゴンスラスト』!」
「ぐっ……」
強い衝撃。
体勢は大きく崩れ――その隙を逃さんとばかりにやってきた彼への対応に遅れた。
直撃はしなかったものの、HPは一気に3割削れた。
火炎放射と同時に襲い掛かる遠方からの狙撃。
恐らく後衛はハルと同じ『魔弓術士』。魔法職の火力と弓職の命中率、射出速度を合わせ持つその職業。
はは、まんまとやられたよ。
だが――俺にも信頼できる『後衛』が居る。
『に、ニシキさんまだ大丈夫なんですか!?』
『ああ。まだ待機だ』
『……分かりました』
口元を斧で隠しながら彼女にメッセージ。
機会が現れるその瞬間まで――レンには我慢してもらわないといけない。
そしてその機会を作るのは俺だ。
「気のせいか……」
呟く。
分からないが――あの後衛の声、どこかで聞いたことのあるものだったような。
駄目だな、こんな迷いがあっては。
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