タッグ
☆
「…………『アイアンボール』」
「『スラッシュ』!」
「――がぁッ!?」
「さっきから何処に――うあッ!!」
《経験値を取得しました》
《経験値を取得しました》
《勝利した為、戦闘前の状態に全て回復します》
アレから、レンとタッグを組んでデッドゾーンに足を踏み込んでいた。
そしていつの間にか白星を続け……今、五回目のパーティーを倒した所。
《――「基本的に、俺をドクだと思って立ち回ってくれ」――》
《――「……! わ、分かりました」――》
《――「隠密と君のスキルを上手く使って……狙撃手として頑張ってくれよ」――》
《――「は、はい。緊張します」――》
《――「はは、大丈夫だって。いつも通りやれば良い」――》
それはついさっき、闘う前の会話である。
少しまだ緊張が残っているが……見事な援護射撃だ。
対人戦に関してはずっとソロだったから、何というかその……
「……凄い、楽に勝てちゃいました……」
「ああ……」
そう、楽なのだ。
俺は今まで正面や横に背後までカバーしなきゃならなかったが……今は違う。
背中を任せられるというだけで、ココまで負担が軽くなるとは。
でも――駄目だな、これ。
楽だからこそ、『感覚』が鈍くなってしまう。
そしてそれはドクにも言える事。
レンがずっと彼女についていると、ドクの勘も鈍るだろう。
たまにはソロで闘う様言っておかないとな――
「これは……良い発見だ」
「……どうしました?」
「優秀な援護があると、ここまで楽になるんだと思って」
「! あはは、褒め過ぎですよ」
照れる彼女。
実際、隠密と土魔法を組み合わせた魔法の狙撃は強力だ。
スキルもあるが、何より――レンの立ち回りが上手い。
『一射一退』により位置を悟らせず敵を混乱させている。
気付いた時にはもう魔法が影から射出されているんだ。厄介な事この上ない。
「でも――まだまだこんなものじゃないぞ、君は」
「……!」
「もっと俺を『使え』。遠慮せず自分の思考を共有して、俺を手駒にするんだ」
「え……」
「レンは後ろで戦闘の全体像を眺められる。気付いた点とか次の攻撃の手を共有するのは大事だぞ」
「……わ、私にできますか?もし見当違いな事やっちゃったら――」
レンは言う。
当たり前だが、最初から百点を求める程俺は馬鹿じゃない。
場数を踏んでこそ――そういったモノは得られるんだ。
「――それをカバーするのが、俺の役割だろ?」
「!」
「大丈夫。失敗なんて幾らでもやったら良い。それじゃそろそろ『準備』を」
「は、はい……! 『アースクリエイト』――『サンドハイディング』」
彼女は頷いた後、またスキルにより姿を隠し物陰に隠れていく。
『なあ、レン』
『……はい?』
『君の声は、聴いてて落ち着くな』
『えっ、え……?」
『だから『戦闘中』でも、気兼ねなくコレで喋ってくれ』
『……ありがとうございます。そうします……!』
そしてそれを確認してから、俺は『メッセージ』を彼女に飛ばした。
……我ながら下手な鼓舞だ。
でもまあ、少しは楽になったかな。
「さてと、そろそろ次が――」
《竜騎士 LEVEL49》
「しょ、商人!?……おいおいマジか」
『グラァ!!』
次。
廃墟が並ぶエリアに現れたのは――紫色のドラゴンに騎乗したプレイヤーだった。
……どうしてか、絶望したかの様な顔をして。
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