タッグ




「…………『アイアンボール』」

「『スラッシュ』!」


「――がぁッ!?」

「さっきから何処に――うあッ!!」



《経験値を取得しました》


《経験値を取得しました》


《勝利した為、戦闘前の状態に全て回復します》



アレから、レンとタッグを組んでデッドゾーンに足を踏み込んでいた。

そしていつの間にか白星を続け……今、五回目のパーティーを倒した所。



《――「基本的に、俺をドクだと思って立ち回ってくれ」――》


《――「……! わ、分かりました」――》


《――「隠密と君のスキルを上手く使って……狙撃手として頑張ってくれよ」――》


《――「は、はい。緊張します」――》


《――「はは、大丈夫だって。いつも通りやれば良い」――》



それはついさっき、闘う前の会話である。

少しまだ緊張が残っているが……見事な援護射撃だ。


対人戦に関してはずっとソロだったから、何というかその……



「……凄い、楽に勝てちゃいました……」

「ああ……」



そう、楽なのだ。

俺は今まで正面や横に背後までカバーしなきゃならなかったが……今は違う。

背中を任せられるというだけで、ココまで負担が軽くなるとは。


でも――駄目だな、これ。

楽だからこそ、『感覚』が鈍くなってしまう。


そしてそれはドクにも言える事。

レンがずっと彼女についていると、ドクの勘も鈍るだろう。

たまにはソロで闘う様言っておかないとな――



「これは……良い発見だ」

「……どうしました?」

「優秀な援護があると、ここまで楽になるんだと思って」

「! あはは、褒め過ぎですよ」



照れる彼女。

実際、隠密と土魔法を組み合わせた魔法の狙撃は強力だ。


スキルもあるが、何より――レンの立ち回りが上手い。

『一射一退』により位置を悟らせず敵を混乱させている。

気付いた時にはもう魔法が影から射出されているんだ。厄介な事この上ない。



「でも――まだまだこんなものじゃないぞ、君は」

「……!」

「もっと俺を『使え』。遠慮せず自分の思考を共有して、俺を手駒にするんだ」

「え……」

「レンは後ろで戦闘の全体像を眺められる。気付いた点とか次の攻撃の手を共有するのは大事だぞ」

「……わ、私にできますか?もし見当違いな事やっちゃったら――」



レンは言う。

当たり前だが、最初から百点を求める程俺は馬鹿じゃない。

場数を踏んでこそ――そういったモノは得られるんだ。



「――それをカバーするのが、俺の役割だろ?」

「!」

「大丈夫。失敗なんて幾らでもやったら良い。それじゃそろそろ『準備』を」

「は、はい……! 『アースクリエイト』――『サンドハイディング』」


彼女は頷いた後、またスキルにより姿を隠し物陰に隠れていく。


『なあ、レン』

『……はい?』

『君の声は、聴いてて落ち着くな』

『えっ、え……?」

『だから『戦闘中』でも、気兼ねなくコレで喋ってくれ』

『……ありがとうございます。そうします……!』



そしてそれを確認してから、俺は『メッセージ』を彼女に飛ばした。


……我ながら下手な鼓舞だ。

でもまあ、少しは楽になったかな。



「さてと、そろそろ次が――」



《竜騎士 LEVEL49》


「しょ、商人!?……おいおいマジか」

『グラァ!!』


次。

廃墟が並ぶエリアに現れたのは――紫色のドラゴンに騎乗したプレイヤーだった。



……どうしてか、絶望したかの様な顔をして。

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