第133話 王都到着

 レップアース国の王都カッチャ。


 今まで訪れていた街とは比べものにならない程の大きさと賑やかさにシスは圧倒されていた。


「本来ならあと三日はかかっていた筈だが……飛ばしたな」


 ヴィルモントも無言で街を見回していたが、こちらはただいきなり王都に着いた事に驚いていたようでゼビウスの方へ責めるような視線を向けた。


「別にいいだろ。どうせ他の街は大したもんないし、それなら王都にいた方が色々あるし楽しめる。つうわけで、行こうかシス」

「えっ。でもここの王に会わなきゃいけないんじゃないのか?」

「……王への謁見は三日後だ。遅れるのは勿論、早過ぎても問題がある。この三日間は自由に過ごせ、私もそうする。宿は」

「こっちでやっとく。手続きが終わり次第ちゃんと連絡してやるよ。そういうわけだから、ムメイちゃんも自由にしたらいいよ」


 ゼビウスの言葉にトクメが目を輝かせた。


「ムメイ、王都は初めてだろう。王都は広く危険もあるから私の側にいるように。退屈はさせんぞ? 私は王都内の店は勿論、施設の場所や催し事などはほとんど把握している上に最新の店にも対応出来るから何処へでも案内出来る。さあ、何が見たい? 従魔コンテストか? それとも装飾品? 遠慮なく頼るがいい」

「じゃあ単独行動で。ついて来ないでね」


 胸に手を当て自信満々なトクメの方を見ることもなくバッサリ言い切ると、ムメイはそのまま何処かへ行ってしまった。

 その体勢のまま固まるトクメに、ゼビウスは呆れたようなため息をつきながら額に手を当てている。


「のうヴィルモント、実は妾も王都に赴き来たのは初めてなのじゃ。案内を頼めぬか? 人気のある店やヴィルモントが気になる店などを教えてたもれ。共に街を歩き一緒に楽しみたいのじゃ」

「王都ならば私よりもトクメが詳しいようだからそちらに頼めばよいのでは? 私も単独で自由に過ごさせてもらおう。では三日後にな」


 トクメにつられたのか、ダルマもヴィルモントと一緒に行動しようとしたが近づこうとした瞬間に拒絶され大きく距離を取られた。

 更に三日後まで会わないと遠回しに言い放つと、ヴィルモントもそのままダルマを置いて何処かへ消えてしまった。


「……ダルマの案内してやったら? 需要と供給は一致してんだろ」

「私が案内したいのはムメイだ。ダルマではない」

「妾もじゃ。街を一緒に歩くのはヴィルモントでないと意味がない……」


 ゼビウスの提案に不貞腐れたような態度のトクメと明らかに落ち込んでいるダルマだが、これ以上どうする事も出来ないのでゼビウスは変に巻き込まれる前にシスの手を引き街の中心へと向かった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る