第124話 合流

「あれ、もしかしてここが最下層?」


 レイとジンと別れてからも相変わらず瓦礫などで道は埋められて思うように進めていなかったムメイ達だが、ある程度降りて行くと今度は不自然過ぎる程順調に進む事ができ、恐らく最下層と思わしき明らかに何かが現れそうな広い場所に出た。


「あの広間の奥に更に部屋あるみたいだな。その中に何かがありそうではあるが……」


 ヴィルモントの言う通り、部屋の奥には今までとは違う白いドアが見えている。


「…………」

「……? 行かないのか?」


 シスが進もうとするも、ヴィルモントに軽く襟を摘まれ不思議そうに顔を向けた。


「まあ何だ、私の考えすぎかもしれんがこういった研究施設の最奥というのは大抵厄介な何かがあったりするものだ。一際強い魔物だったり魔導人形など」

「いるのか?」

「さあ? ただ私は嫌な予感がするので進むのを躊躇っているだけだ」

「嫌な予感って決まって的中するものね……私もビシバシ感じるもの。特に背中から」

「奇遇だな、私もだ」

「ヴィルモント!!」


 その時丁度後ろから名前を呼ばれ、振り返らずとも誰か分かりヴィルモントの眉間に深いシワが入った。


「ようやく会えた!! 妾が来たからにはもう大丈夫ぞえ! ほれ、こちらに来るがよい!」

「……シス、お前はゼビウスの所へ行け。立っているだけならば蠢くものは来ない」

「あ、ああ……ゼビウス!」

「シス!」


 ムメイとヴィルモントが降りるとシスはすぐにゼビウスの元へと駆け寄り、ゼビウスもトクメから降りシスが飛び込んできたのを受け入れわしゃわしゃと頭を撫で回した。


「シスの事はレイとジンって子供から聞いてたけど、無事みたいで良かった……」

「ゼビウスも……ん?」


 大人しく頭を撫でられていたシスだが、いつもとは違う左手である事に違和感を抱きゼビウスの右腕の異常に気づいた。


「その腕、もしかして蠢くものにやられたのか!?」

「ん? ああ、ちょっとうっかりして。でも大丈夫、毒は抜けてるからあとは時間が経てば痛みもなくなるし、今はようやくシスに会えたからあんまり気になんない。でも右腕には触んないでほしい。それよりシス、お前蠢くものの毒を舐めたりとかしてない? 試したりは?」

「し、してないっ!」


 焦ったような言い方にゼビウスは撫でる手を止めた。

 断言しているので本当に試してはいないのだろうが、今回みたいな切羽詰まった状況ではなく余裕があればいつか試しそうな気がしてならない。


 この『していない』も恐らく最初に『まだ』という言葉がつきそうである。


「……ま、とりあえず何ともないならいいか。ムメイちゃんは? ちゃんと解毒出来ていて大丈夫とは聞いた、けど……」


 ゼビウスが顔を上げて目に入ったのはいつの間にか人の姿になり両手を広げているトクメとダルマ、そしてそれらを正面から見ながら全く動く様子のないムメイとヴィルモントだった。


 どうやらトクメとダルマも再会の抱擁をしたく人の姿に変わり待ち構えているみたいだが、肝心の子供の方がそれを拒否しているらしい。


 歩けば蠢くものが来る可能性があるのでトクメ達も迂闊には動けないのだが、それでも少しでも近づこうとジリジリと距離を詰めるもムメイ達はその分離れてしまう。


 ムメイの方は多少の照れもあるだろうが、ヴィルモントの方は本気の拒否なので完全に警戒されている。


「ゼビウス……」

「放っておこう。その内ヴィルモントが何だかんだダルマを言い包めて、それにムメイちゃんも流されて有耶無耶になるだろうし」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る