第103話 邂逅
高価な装飾品で飾られた部屋の中でムメイはソファに座りゆったり寛いでいた。
向かいの席にいるのは四大貴族の一人クラウス。
普通ならば四大貴族に招待された時点で警戒し飲み物やお菓子を勧められても疑ったりするのだが、ムメイは全く気にする事なく誰かに言う事もなくやって来てのんびりコーヒーを飲んでいる。
甘いものは苦手なのでお菓子に手を伸ばしてはいないが。
「急に呼び出して悪かったな」
「最初に会った時から何度もこっちを見ていたから何かあるとは思っていたけど……わざわざ私だけを呼ぶなんて、人には言えない事?」
「そんな事はない。こっちは私事に近いから公事と混ぜるわけにはいかなかっただけだ」
吸血鬼騒動は一応解決したのか昨日はピリピリしていたクラウスだが今は落ち着いており、丁寧な仕草でコーヒーを一気に飲み干した。
「……?」
その姿を眺めていたムメイだが、不意に背中辺りに何かが這うようなゾワッとした感覚に襲われた。
思わず左右を確認するが原因らしいものは特に見当たらず、気のせいかと再びコーヒーを口へ運ぶがどうにも落ち着かない。
「それでだ、お前を呼んだ理由は確認したい事があるからだ」
「っ、確認?」
「ああ。お前に双子の姉妹はいないか?」
クラウスの質問にムメイはピクリと眉を動かすと、コーヒーを飲む手を止め静かにソーサーへ置いた。
「……種族の違う似ていない姉ならいるけど……その聞き方だと私と同じ顔をした者がいるみたいね」
ゾワゾワとした感覚が気のせいでは済ませられない程強くなりムメイは無意識に両腕を擦った。
しかし嫌な感覚は治まるどころかどんどん強くなっていく。
「同一人物かと疑う程にな。人間でないとは言え無関係とは思えない程……ん?」
「クラウス、入るぞ」
「ようやく来たか」
話の途中にノックする音が響き、入室の許可が出ると同時に部屋に入ってきたのはクラウスと同じ顔をした男性。
恐らく昨日言っていたクラウスの弟のクライスだろう。
そしてもう一人。
クライスにエスコートされるように入ってきた女性を見た瞬間、ムメイは思わず立ち上がった。
ムメイと全く同じ顔をした女性。
以前にあった同じ名前の女性のような偶然の一致などではない。
「……フローラ……」
ムメイの元となったとも言えるフローラの生まれ変わりが目の前にいた。
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