第85話 トクメの同族
「ベヒモスにレヴィアタン渡すだけの簡単な用事だった筈が、何でややこしそうなもんが幾つもくっついてくんの」
「一つは解決しているぞ。レヴィアタンとベルゼブブは逃亡していなくなったからな」
トクメの言葉にシスが隣を見ると、さっきまで近くにいたレヴィアタンとベルゼブブがいなくなっていた。
何処かに隠れたわけではなく魔界へと帰ったらしい。
「あいつ首輪つけたままなのに大丈夫なのか?」
「そんな複雑な物じゃなかったし、ベルゼブブかベルフェゴールがいれば解除自体は可能だと思うけど……」
勝手に首輪を外した事でゼビウスがどうするかまではムメイ達も知らない。
「ベルゼブブは後で俺が追撃かけるからいい。それよりまずはベヒモスだ。あいつが死んでたのは分かったけど生きてるみたいに動き回ってたけど? ゾンビ特有の呻き声じゃなくて普通に雄叫びも上げてたし」
「この者が原因だ」
そう言ってトクメが手を置いたのは先程落ちてきた同族という淡い黄色の球体。
トクメの同族ということは世界最古の怪物だということだが、どう見てもただの物体にしか見えない。
「ベヒモスの死体に入ったのか取り込まれたのか、そこまでは分からぬがとにかく体内に入ったのが原因で身体が適応してしまい傷などが治り、生きていた頃のようになってしまったのだろう。その為蘇生したように見えるが、この者がいなくなったのなら遅かれ早かれベヒモスはただの死体に戻る」
「分からないって、そいつに能力使えば一発じゃん」
「同族には効かん」
「ああそっか、自分自身みたいなもんだもんな。……で、コレどうすんの?」
トクメの同族と言えど警戒しているのか直接触るのは嫌なのか、多分後者なのだろう、ゼビウスは杖で確認するように軽くつついているが球形はコツコツと軽い音を立てるだけで動く気配は全くない。
「……お前が言うから世界最古の怪物で間違いはないんだろうけど……とりあえずこの黄色いの何。お前がやるような魔力の具現化とは違うよな」
「ある意味では具現化とも言える。長い時間をかけて魔力を放出し続け固形化させたものだ」
「貝が真珠作るみたいなもんか」
「どちらかというと虫などが作る繭の方が近い。死ぬ事はない故反応がないのは眠っているからだろう、ならば……」
置かれたままのトクメの手から魔力が球体へ流れ始め、そのまま数秒も経たない内に今まで何の反応もなかった球形が動き出した。
最初は小さく揺れただけだったが段々左右に激しく揺れ、ピシッと上部にヒビが入りどんどん広がっていくが中にいるらしい怪物が出てくる様子はない。
「遅いな。叩き割ろうか?」
「やめてやれ。もうすぐ出てくるだろう」
ゼビウスは決して短気でもせっかちなわけでもない。
恐らくすぐに済む筈だった用件が予想以上に長引いて嫌気がさしているか、普通に飽き始めているか。
そうこうしている内にとうとう球体が大きな音を立てて割れた。
「この気配……! 妾と同じ同族、がっ!?」
それと同時に中から女性が現れ勢いよくトクメに向かったが、何かにぶつかったのかゴツッと鈍い音を立てて派手に後ろに倒れ動かなくなった。
どうやらトクメが先程の対策に壁を作っていたが相手はそれに気づけずそのまま突撃、気絶したらしい。
「……こいつどうすんの? まさか起きるまでここで待つ気か?」
「色々話を聞きたいが……仕方ない、街まで運ぶか」
「そうか、頑張れよ」
トクメはようやく出会えた同族に興味津々みたいたが、ゼビウスの方は完全に飽きたようで微塵も興味がないのか投げやりに答えた。
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