第一章20 『『首席』』
ガチャ、という音を立たせると共に、コウは部屋の扉を開けて中に入る。扉を閉めて鍵をするのを確認してから、速やかにベットまで歩いた。
ベットの間近まで来たコウは、ベットに腰掛け、「ふぅー」と息をつく。そして、封筒を目の先に固定し、凝視しながら固唾を呑み込む。
ゴクリ――と、コウの緊張感を表す音が聞こえた。
「…………よし、開けるか」
しかし、いつまでもこうしてるわけにはいかないので、コウは決心を固める。
ついに、試験の結果をこの目で見るのだ。
緊張する反面、不思議な高揚感に包まれる。
コウは封筒のシールを剥がし、封筒の中に手を突っ込んだ。そして、いつでも書類を全て抜き出せるように身構える。
「せーの!」
合図の声を上げながら、コウは書類を掴む手をズバッと動かした。
中には折りたたまれた五枚の書類。コウは折り目を開いてみる。
すると、まず一番上の書類には『合格祝い』という文字が書かれていた。
装飾も何も無いただの文字。でも、その合格という文字をいざ目に写すと、なんとも言えない感慨を抱く。
達成感、喜び、安堵、高揚感。全ての感情が入り混じり、それらは胸の鼓動を速くした。
コウはすぐさまに一枚目の紙を近くに置き、二枚目の紙に視線を落とす。するとそこには、
――首席祝いという文字が書かれていた。
「はっ⁉︎」
コウは思わず声を上げて、その場で体勢を崩す。
「――って、おっと……!」
コウは紙を掴む右手を離し、ベットに手を突いて体勢を持ち直した。そして、まじまじと紙に書かれてる内容を見つめる。
紙に書かれている内容は、こうだった。
* *
『今回のアストレア剣術学院への入学試験において、合格おめでとうございます。今回の試験において、貴方はとても優秀な成績を修めた為、貴方は首席と認められました。
また、それに伴って、首席と次席の生徒は毎年、入学式で技の披露を行うこととなっているので、そのつもりで入学式に挑むように宜しくお願いします。』
* *
「俺が、首席……? 本当なのか……⁉︎」
紙を近くに置いていた俺は、いつの間にか立ち上がっていた。そんなコウの心を、『何か』が包み込んでいる。
ドクン、ドクンと、胸の鼓動がやけにうるさい。
コウは服の上から胸の部分を握り締め、
視界が真っ暗に変わる中、コウは思いを馳せていた。
もう何年過ごしたかも分からない、長い、永い《時の狭間》での日々。
コウはどれほどの時間を剣の修練に割いたのだろう。もう検討もつかない。
コウ自身でも分からなくなるくらいに、コウは剣に夢中になっていた。
……あぁ、いつだって忘れない、この気持ちを――。
……今、俺が感じてるこの『気持ち』を、絶対に忘れてやるもんか。
コウは一から剣術を極めた。だが、これで終わりではない。寧ろここからが、本当の意味での始まりなのだ。
コウは、『首席』という自身に与えられた称号を胸の内に秘める。
すると瞬間、コウの胸の中で暖かい何かが湧き上がるような感覚を覚えた。
「――――」
コウは、閉ざしていた目を開ける。
突如コウの視界に入り込んできた世界の光は、とても眩しく、そして愛おしく思えた。
「絶対に、強くなってみせる……‼︎」
胸を掴む手を離し、今度は胸の前で拳を作る。
窓から入り込む光に照らされるその拳は、夢や希望さえも掴んでいるように見えた。
――コウの学院生活は、ここから始まる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます