第2話

「おい、あんた。外に居たのに何も付けてないのか?」

「あー、やっぱダメ?」

「ダメに決まってるだろ。村に入るってんならこの専用のヘルメットを付けてもらう。大きい兄ちゃん、あんたもだ」

『やれやれ、だからマスクだけでもしてくれと言ったのに』

「昔さ、世界的にウィルスが流行った時あったじゃん?あの時にずっと同じマスクしてたら逆に肺炎になったから良い思い出無いのよ」

『同じマスクを使いまわししていたのか!?』


 サンの案内の元、デカイとセブンは廃墟群を抜けた先にひっそりと隠されていた地下シェルターに辿り着き、その入り口の関所でセブンが汚染された空気の中でヘルメットもマスク付けずに行動していた事を咎められていた。

 きちんと整備された街ならともかく、廃墟群の中はどんな病原体が漂っているか不明かつ、そもそも粉塵がとても多い場所なので防毒防塵の為のマスクをするのが常識だ。そんな中を何も付けずに行動していたセブンをそのままシェルターの中へ迎えるのは渋られて当然の事だろう。


「って事で、そのままじゃダメ?」

「ダメだ。エーシー・サンの恩人という事で是非ともお礼はしたいが、それとこれとは別の問題だ。中に病気を持って来られても困る」

『仕方ないだろう奈々子君。ここは我慢してヘルメットを付けるんだ』

「セ・ブ・ン! ……仕方ないか。嫌だけどそれ被るわ」


 そう言いながらセブンは関所の受付から大き目のヘルメットを受け取り、渋々と言った様子で被る。

 ヘルメットはフィルター以外にもいくつかの役割があるのか大き目で重量があり、体格の小さいセブンは重さによって カクンカクン と首を前後左右に揺らしては両手で掴んで定位置に戻している。


「………違和感あるわね。これ、息苦しくなったりしない?」

「ああ、その点は大丈夫だ。この中に居る奴はみんなそれを被っている。大きい兄ちゃんのもちゃんとサイズはあるから安心しな」


 セブンの疑問に受付の物は安心しろという様に返し、次はデカイにもヘルメットを被る様に勧める。


「あんた、私が被ったんだから分かってるわよね?」

『ちゃんと分かっているさ』


 デカイはセブンの恨みがましい口調の言葉に若干の笑みを含ませながら応え、自分が被っているヘルメットを外す。

 その下にあるのは人間の顔ではなく、固い装甲に覆われてつるりとし、いくつかの溝が彫られている卵状の頭部。


『この通り、自分は生身では無いんだが大丈夫だろうか?』

「なんだ、兄ちゃんはサイボーグか? それでも一応付けて貰えるかい? 俺も被って居るし、規則みたいなもんなんでな」

『規則ならば仕方ないな!』


 こうして少々の一悶着を済ませ、二人は専用のヘルメットを被ってシェルターへと足を踏み入れた。


「へぇ、確かに緑に囲まれているわ」

『やはり認識の違いだった様だな』


 入り口の関所を抜けた先は広めの空間となっていて、おそらく設立当時は車で出入りする為の地下駐車場だったのだろうという事が分かる。

 現在ではそこかしこに木材やら草花やらの荷物が置かれているので車を停められるようなスペースは見受けられない上、壁や柱が大量の蔦で覆われていて車用の出入り口は疎か駐車場自体も半分が使用不可能な状態だ。

 これならば確かにサンの言う通り『緑に囲まれている』と言えるだろう。


「デカイさん! セブンさん!」


 二人が暫くヘルメット越しにシェルター内の景色を眺めていると、先に中に入っていたサンが二人の元へやってきて、自分と同じヘルメットを被った二人を見て嬉しそうな挙動を見せる。


「あはは、お揃いですね!」

「そーね。火の鳥太陽編を思い出すわ」

『今の世の中でそれを分かる人間が何人居るんだい?』


 なんの事なのか全く分からないセブンの死語ジョークを流しつつ、サンは自分達と同じ頭部になった二人を引き連れ、シェルターの中に作られた村と呼ぶには小さな集落の案内を始める。


「それじゃあ案内しますね! 壁はくずれやすいみたいなので触らないよう注意してください!」

「そりゃあこんだけ蔓に覆われていたらコンクリートダメになってるわよね。これ、大丈夫なの?」

『色んな意味で大丈夫では無いだろう…』


 サンから受けた注意に、それはそうだろうという様子で納得をする二人。

 前時代のシェルターという時点で既に耐久年数を超えているので今更な心配ではあるが、今すぐ崩れて生き埋めになるという事は無いだろうと希望的判断してサンに続いて蔓に覆われた通路を歩く。


 サンの案内によるとこのシェルターは全部で五層に分かれているらしく、丁度入り口から真反対の壁際にある階段から全部の階へと繋がっているとの事。

 それぞれ区分としては、

 地下一階:入口、倉庫

 地下二階:居住区

 地下三階・四階:吹き抜けになっている広場

 地下五階:学校、医療室、教会を兼ねた場所

 となっており、折角なので入り口を抜けた先の倉庫エリアから案内するという事になったのだ。






「ここは部分け部屋って呼ばれていて、取ってきた草やお花なんかを使いみち別に分ける部屋です!」

「あー、昼過ぎの花市場って感じね。売り物にならない端っことかだけ落ちてるところとかこんな感じだわ」

『よく知っているなそんな事』

「昔、やけに懐いていた後輩がバイトしてたのよ」


 倉庫エリアは一本の大きな通路に対して左右に小型の車が入れる大きさの倉庫がいくつか並んでいる場所で、全ての倉庫に用途毎に分かれた草花が仕分けして保存されているらしい。

 入り口が空いている倉庫は目の前の一つだけだが、漂う香りから他の倉庫にも物が詰まっているのだろうという事が分かり、ここも壁や床が緑に覆われている。


「そういや、その持ってるのは置いていかないの?」


 倉庫の案内を終えて次に向かおうとしたサンへ、セブンが未だ抱えている包みについて質問をする。

 サンが取って来た物も花だと言っていたのと、包みを持って歩くのがフラフラとしていて見ていて危なっかしいので心配して聞いたのだ。


「はい! これは後でシスターのところに行くので直接届けようとおもって!」

『おお、前時代の事を知っておられるという方だな。御勤めというのも気になるし、早くお会いしたい物だ』


 興味深そうに倉庫内を眺めていたデカイが、サンの言葉に反応して願望を漏らす。

 当初の目的は消失したスカベンジャーチームの聞き込みだったが、既にデカイの中ではシスターに会う事がこのシェルターに訪れた目的となっている様だ。


「そういやあんた尼さんとかシスターとか聖職者好きよね。趣味なの?」

「デカイさんはシスターがお好きなんですか?」

『それについて話すのは長くなる上に恥ずかしいので止めておこう。さ、次だ次。階段を降りるんだろう?』


 三人はデカイの好みについて揶揄しながら蔓に覆われている階段を降り、次のフロアへと向かった。







「ここが寝る場所なんですけれど、ちゃんと使えるベッドの数が少ないので、みんなで交代しながら寝ているんです」

「めっちゃ”冬眠室”って書いてあるじゃんこれ。……ってことはコールドスリープの台座をベッド代わりにしてるって事か。棺桶みたいね」

『棺桶とは…もうちょっと配慮した言い方は無いのか奈々子君……』

「あんたも棺桶に突っ込んであげましょうか?」

「あ、あの…今はみんなが寝ている時間で入れないので…その……」


 地下二階は階段を下りた先の踊り場から直ぐに大きな扉があり、今はもう失われた文字で『hibernation room』と書かれてあった。

 基本的に都市部のシェルターは一時避難用のシェルターなので冬眠室があるのはとても珍しく、こういった装置があるシェルターはだいたいが医療機関用や富裕層用のシェルターになる。

 扉の作りからしてこの冬眠室はいくつもの装置が並列で並べられているタイプなので、前者の医療機関用の物だろう。

 医療機関用のシェルターならば大きな町ならば一つはある物なので、元オフィス街の遺跡の近くにあるのも不思議な事では無い。


「流石に中に入って遺物を漁るのはまずいわよね?」

『遺跡ではあるが村として管理されているのだから駄目だろう…』

「あんまり変わった物はないですよ? 広いお部屋に寝る場所がたくさんあって、奥のほうは蔓に囲まれて使えないから手前のいくつかを使ってるんです」


 今は使用中なのでという事で中には入らず、扉の外で中がどんな様子を案内するサン。

 話からするとコールドスリープの台座は最低限の機能だけを持たせた簡易版の量産品で、やはり耐久年数を超えているからか寝床としての使い道以外は無い様だ。

 通路の明かりは点いているので発電施設は生きているのだと分かるが、装置側が壊れているのならばどうにもならない。せいぜい内部のパーツをバラして他の物に再利用かするぐらいだろう。


「何も漁れないならあんまり面白く無さそうね。次行きましょ、次」

『いや本当口が悪いな君は。何しに来たのか覚えているのかい?』

「ツケをチャラにする為」

『いやまあ、確かに君はそうなんだが…』

「次の階はすごいですから!」


 流石に無理に中を案内してもらう訳にもいかないので、愚痴を吐きながらサンの後に続くセブンと、それを見て呆れるデカイ。

 遺物漁りスカベンジャーという生き物は市民になれなかった者の中で荒事しか適性の無い者が行きつく先であり、大半が俗物的であり今を生きれればそれで良いという刹那な生き物である。

 そして残りの数割は一攫千金を狙う為に特級遺物を求めていたり、まだ見ぬ景色を見る為に遺跡に挑むと言う大馬鹿者ロマンチストだ。

 その為、この様な思考のセブンの方が遺物漁りスカベンジャーとしては正しく、無償で他者を助けたり略奪を始めないデカイの方が珍しい。

 最も、セブンの本職は遺物専門買取商の店員であり、遺物漁りスカベンジは単なる趣味でしかない。趣味で命を落とす事もあるのだから常人には考えられない事だろうが、大馬鹿者ロマンチストとはそういう者だ。










「ここは二つの階がくっついていて、とても広いんです!」

「はぇー、確かにこれは凄いわ。吹き抜けになってる噴水広場とか普通シェルターに作んないわよ」

『この下は教会だと言うし、もしかすると宗教施設だったのかもしれないな』


 地下三階と地下四階はフロアの半分が吹き抜けとなって繋がっており、吹き抜けになっている部分は噴水の置かれた憩いの場となっていた。

 噴水と言っても既に水は出ておらず、周りに置かれているベンチも花壇だっただろう場所も他と同じ様に蔓が絡みついていて、まるで森の奥の朽ちた公園さながらの様子だ。


「ここの広場は神さまの像があるんですよ! ほら、この真ん中のところに!」

「どれどれ…あ、本当ね。蔓に埋まってるけどなんか置き物があるわ」


 サンの言葉を聞いて噴水に近寄ったセブンは、噴水の真ん中の水が出る柱の部分の周りに五つの石像が置かれているのを発見する。

 それぞれ蔓に埋もれてはいるが尖ったり薄い物が広がったりしているので、蔓とは違う人工物というのがはっきりと分かる。


「この五つの神さまの像は前時代に人間をお守りして下さった神さまの像ってシスターが言っていました。それで、この噴水も神さまをおつくりになられた”しそ神さま”なんだそうです!」

『ほほう、珍しいな。この時代の者が始祖神の事を知っているなんて』

「はいっ! シスターはなんでも知ってるんですよ!」


 サンはまるで自分が褒められたかの様に嬉しそうに声を挙げ、シスターを褒め称える。

 そして、ヘルメットを被っているので顔は分からないが、声からしてとても良い笑顔をしながら上機嫌で説明を続ける。





 サンがシスターから聞いた話に寄れば、この世界は二度の滅びを迎えているらしく、一度目は神が不在な事による人同士の争いによって起きた滅びで、二度目は神が消失した事による滅びとの事。

 一度目の滅びについては昔の事すぎてシスターも知らないそうだが、二度目については”お勤め”の時に毎日の様に語ってくれるので暗記をする程に覚えている。


 まず、一度目の滅びの後、海の向こうの神の国から始祖神が現れ、争いによって荒れてしまったこの地の事を嘆かれたそうだ。

 地は荒れ、空気は汚染され、水は濁り、とても人が暮らせる様な状態では無かったという。

 そして、始祖神はこの地に生き残った人間が居ないかを探して周り、山の奥に僅かではあるが生き残った人々を発見された。

 その後、始祖神はその僅かな人々をお救いになられる為に五人の神様を産み、この五人の神様に人類の繁栄の手助けをする様にと仰られた。

 五人の神様は始祖神に言われた通りに人々の生活を助け、人々は数年で一度目の滅びの時よりも豊かな暮らしを手に入れる事になる。

 始祖神はこの事に大変満足されたそうで、もう自分が見守らなくても大丈夫だと判断され、始まりの地である山の奥に小さな社を立てて静かに暮らす様になった。

 しかしある日、始祖神は心を許していた一人の人間の女性によって力を奪われてしまい、五人の神様も始祖神が力を奪われると同時に女性が引き連れていた悪魔によって封印されてしまう事になる。

 この時の事は”封印戦争”と呼ばれ、始祖神が力を奪われてから終結まで100年はかかったという。

 そして、五人の神様が封印された事により人々は豊かな暮らしを送る事が不可能となってしまい、そのまま徐々に滅びを迎えたのが二度目の滅びなのだ。

 その後、女性と悪魔がどうなったのかは分からないが、五人の神様達は今もどこかに封印されたまま眠っておられ、始祖神は最後の力を振り絞って体を土に変えてこの地と一体化され、二度の滅びを迎えても生き続ける人々を見守る事となった。




 というのが、サンがシスターから聞いた始祖神と五人の神様の話だ。


『おお、二度目の繁栄から滅びまでを知っているとはな。という事はシスターから始祖神のお姿も聞いているのかい?』

「はい! ”しそ神さま”は色んな姿になれるらしくて、手がたくさんあったり、首がながかったり、羽がはえていたりしたらしいです! それで、五人の神さまをお産みになられてからはこの地の真ん中ですべての人々を見守っていたのだとシスターが言ってました!」

「あー、成る程? だからこの噴水の周りのがその五人の神様で、噴水自体が始祖神って訳なのね」


 サンの説明にセブンは納得した様に頷き、蔓に覆われている噴水の柱に手を置く。


ベチョ


「うわっ!?」


 そして、想定していたのとは違う柔らかく湿った触感に驚き、思わず悲鳴を上げて飛びのいた。


「セブンさんっ!?」

『奈々子君、どうした!?』


 急に飛びのいたセブンに驚き、声をかける二人。

 だが、当のセブンはもう落ち着いており、柱を触った手を握ったり開いたりしては眺めている。


「いや、ちょっと柱がヌメってしてバランスを崩したんだけど、もしかしてこの蔓って蓴菜みたいな物なのかも」

『怪我は無いのかい?』

「大丈夫大丈夫、ちょっと思ってたのと違う触り心地だから驚いただけよ」


 セブンはそう言いながら噴水の中央から離れ、サンとデカイの元へと戻る。

 丈夫そうに見える蔓がヌメッとしていたのには驚いたが、そもそもこんな形をしている蔓は他に見た事が無いのでと納得して深くは考えない事にする。


「だ、大丈夫ですか…その、神さまの像が壊れたりとかは……」


 サンはそのセブンの様子を見て、セブンの事と同時に噴水の周りの像の事も心配をする。


「像には触ってないから多分大丈夫よ。柱も直接は触って無いし。それより、その神様の話の続きを聞きたいわ。五人の神様はそれぞれどんな神様なの?」

「あ、はい。ええと、シスターは”しそ神さま”がお産みになられた神さま達はそれぞれ人間のくらしを便利にしてくれる神さまって言ってました。怪我や病気を治してくれる神さま、エネルギーを作ってくれる神さま、土を綺麗にしてくれる神さま、水を綺麗にしてくれる神さま、空気を綺麗にしてくれる神様の、五人です。」

『医療を管理する生命神、発電を管理する雷光神、土壌改善を管理する大地神、水質改善を管理する浄水神、大気浄化を管理する天空神だね?』

「それです! デカイさんも知ってるんですね!」


 自分の説明の拙さを補足してくれたデカイに対して、嬉しそうな声を出すサン。

 だが、デカイはサンの言葉に対して少しトーンを落とした声で返す。


『知っているとも。だけど、私が知っている内容とは若干違っているね』

「違っている……ですか?」

『ああ、そもそも最初の始祖神の部分から少し違うんだよ』


 デカイは噴水の柱に顔を向け、まるで遠い場所を見つめるかの様にして自分の知っている創造神の話を始める。


『まず、創造神が五人の神様を作ったのはそうだけど、その前に始祖神には奥さんが居たんだ。ずっと眠ったまま起きない奥さんがね』

「あれ、”しそ神さま”はおとこの人なんですか?」

『どちらかと言うと男…なんだろうね。二人とも性別はあって無い様な物だったんだけど、とても愛し合っていた二人だったそうだよ。その奥さんを起こす為に色んな物を作られて、その途中で五人の神様も作られたんだ』

「じゃあ、神さま達は五人だけじゃないんですか?」


 デカイが話している内容がシスターから聞いていた話と違う為、色々と気になる部分を質問するサン。

 デカイは神様の話が出来るのが嬉しいのか、優しい口調でサンに自分の知っている神様についての事を説明する。


『いや、人間達から神様と呼ばれていたのはその五人の神様で合っているんだ。始祖神は神様を作っただけで直接人間の事を助けてはいないし、始祖神の奥さんも色んな事を教えはしたけど神と呼ばれる様な事はしていなかった』

「”しそ神さま”なのに神さまじゃないんですか?」

『ああ、始祖神は五人の神様以外にも沢山お作りになられたけど、人間に対して神として君臨する能力と目的を与えられたのは五人だけなんだよ。後は神様のお手伝いをする為の存在で、最後の女性に力を奪われたというのも始祖神は人間の為には何もしていないから奪う物自体が無い筈なんだ』

「???」

「ちょっと色々と端折りすぎよデカイ。サンちゃんにちゃんと伝わってないわ」

『おっとすまない。そもそもの話がシスターからの又聞きだったね。すまないすまない」


 頭にいくつものはてなマークを浮かべたサンを見て、それ以上は混乱が深まるだけだとデカイの話を止めるセブン。

 案の定、サンは自分がシスターから聞いた話とデカイがした話との内容の齟齬により考えが纏まっておらず、何度か首を捻ったり斜め上を見上げたりしている。


「はいはい、こいつの言う事はあんまり気にしなくていいわよサンちゃん。それより次に行きましょ。そのシスターさんぐらいしかまともに放せそうな人は居なさそうだし」


 頭の上にハテナマークを多数浮かべるサンに対し、昔の事など考えるだけ無駄なので先の事を行おうと話すセブン。

 ここまでに出会ったのは受付の者とサンの二人のみで、先程の説明の通りなら他の住人は全員冬眠室で寝ているのだろう。となれば村の事や蒸発した遺物漁りスカベンジャーの事を尋ねる相手は必然的にシスター相手という事になる。

 セブンとしては遺物漁りスカベンジャーチームの事などどうでもよく、なるべくなら早く調査を済ませて家に帰りたいという気持ちでいっぱいなのだ。


『次の階が最後なのだろう? 色々とお聞きしたい事もあるし、お会いするのが楽しみだな!』

「はい! シスターは優しい方ですから、きっとデカイさんセブンさんも好きになりますよ!」


 セブンとデカイに急かされる事で神さまの事についての考えは一旦止め、サンは更に下へ続く階段へと向かう。

 階段や壁にまとわりついている蔓は階を下る毎に濃くなっていて、もはや五階への段差や壁は一面の緑に覆われてコンクリートの地肌が見えないほどになっていた。

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