第346話 契約

 馬を手に入れた俺たちは、各々が希望している動物を探し求めて各地を渡り歩いた。


 まず捕まえたのはウサギっぽい動物。ネザーランドドワーフ、ホーランドロップ、ロップイヤー、アンゴラウサギなどに近いものを沢山捕まえて、ハムスターやカピバラ、リスに近いネズミっぽい動物も沢山捕まえた。


「可愛い!!」

「可愛いね!!」


 リリとルーンは動物に囲まれてご満悦の様子になった。


「待てぇ~!!ははははっ」

「メェ~(仕方ないな~)」「メェ~(子供だからね)」「メェ~(構ってあげなきゃ)」「メェ~(ほらほらこっちだよ~)」「メェ~(はしゃいじゃって可愛い)」


 ヘインズは、羊を追い掛け回してはしゃいでいる。羊たちは特に怖がってはおらず、羊がヘインズに付き合ってくれている、という感じだ。


 その中にまだホクホク顔になっていない人物がいた。


 そう、お肉大好きキースだ。


「それじゃあ、次はドラゴンを捕まえにいくぞぉ」

「へへへ、待ってました!!」


 やっと自分の番が来たと喜ぶキースだが、こいつはペットのドラゴンには興味がなくて、肉になるドラゴンに興味があるだけだ。


 まぁそれでも喜んでは欲しいので食用ドラゴンとペット用ドラゴンを捕まえに行く。


「食用ドラゴンとして飼育するのに一番適したドラゴンってなんだ?」

『そうですね。魔族の国の秘境に生息しているフォアドラゴンが飼育に向いていますね。知能もそれほど高くなくて、同種族が殺されたからと言って、それほど執着することもない、非常にのんびり屋で変わったドラゴンです。それなのに、非常に脂がのっていて高位のドラゴンと変わらないくらい美味で有名でした。私たちの時代のころは普通に畜産している酪農家もいましたから。尻尾のお肉が一番うまいと評判ですよ』

「へぇ~、それは美味そうだな!!」


 バレッタからの情報に俺は満足げに頷く。


 そんなドラゴンがいるのなら是が非でも畜産したい。


「おっちゃん!!ドラゴン肉はそのフォアドラゴンで決まりだぜ!!俺が世話するから!!」

「はいはい、分かった分かった」


 キースもバレッタの声によって我慢できなくなって、俺の袖引っ張ってせがむ。


 俺達は早速の秘境へと向かった。


「なんだこれ……」


 船を降りて、いざフォアドラゴンが生息するという場所に赴くと、目の前に繰り広げられている光景に愕然とした。


「グギャア……(痛い痛い。助けてぇ)」

『フゴゴゴッ(肉、肉、肉!!)』

『グギャギャギャッ(肉、肉、肉!!)』


 その光景とは、巨大なドラゴンに、様々なモンスターが襲いかかっていて、今にも殺されそうになっていたからだ。


『言い忘れていましたが、肉がそれだけ美味いということは、外敵が多いということです。そして、フォアドラゴンが繁殖力は高いですが、ドラゴンの中では最弱。それなりの力を持つ他種のモンスターがその肉を求めて群がってくるんですよね』


 そしてこのタイミングでバレッタから追加情報がもたらされた。


 絶対わざとだろ!!


「やめろぉおおおおおおおお!!」


 そんないじめられているドラゴンを見てキースが駆け出していく。


 おお、キースってば熱血漢じゃねぇか!!


 俺はドラゴンを助けにいくキースに感心する。


「それは俺の肉だぁああああ!!」


 いや前言撤回。ただの肉をこよなく愛する食い意地の張った狼少年だった。


 全くキースって奴は。


「よーし、子供たち、皆で戦ってみろ。俺達がサポートするからな」

『はぁーい!!』


 キースに呆れながらも流石にモンスターの数が多いので、子供たち全員で掛かっていき、ドラゴンに纏わりついているモンスター達を蹴散らしていく。


 強いと言っても所詮Cランク程度のモンスター。すでにAランク級の戦闘力がある今の子供たちにとってはそれ程強い敵ではない。


 あっという間にドラゴンを襲っていたモンスターを殲滅した。


 するとなぜかドラゴンが俺達に近寄ってきた。モンスター達と同じように自分の肉を狙ってきた相手に近づくなんて不用意が過ぎる。


「ギュオオオオンッ(助けてくれてありがとう。僕の尻尾をお食べよ)」


 そして、俺達に背を向けたと思ったら、ちょうど尻の少し離れた場所から尻尾が勝手に俺達の前に落っこちてきた。


 尻尾を差し出してくるなんてこのドラゴンは、どこのパンマンなんだ!?


「おい!!この尻尾は貰ってもいいのか!?」

「ギャオッ(構わないよ~)」


 念のため確認を取ると、別に気にした風もなくのんびりとなくフォアドラゴン。


「尻尾はどうなるんだ?」

「ギャオンッ(何日かで生えてくるよ~)」


 そんなに簡単に渡してくるのならもしやと思い尋ねると、案の定予想通りの答えが返ってきた。


 これな屠畜とちくしなくても肉が食べられる。


「そうか、俺達一緒にこないか?ここみたいに外敵はいないぞ?勿論ただとは言わない。尻尾が生え変わる度に提供してくれればそれでいい。どうだ?」

「ギュオッ(それなら行こうかなぁ)」

「分かった。契約成立だ」


 それから俺達は十匹くらいのフォアドラゴンと尻尾契約を結んで転送した。そして、その後で冬の区画で飼う氷系のドラゴンも何匹か連れて帰った。


『グオオオンッ?(私たちの扱い雑すぎませんか?)』


 何か聞こえた気がするけど、気のせいだろう。 

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