第325話 目には目を、ロボにはロボを

 城から離れた俺達はその威容を見上げる。


「かなりデカいな」


 目の前に聳え立つのは元々城だった物。今はその見る影もないが、城そのものが人型兵器に変形したような、所々に城の面影を残す形になっている。


 まさかイッキーリにあんなロボットを作る技術があったとは思わなかった。


 まだ変形中だが、中々イカしている。


「いえ、あれはあの天翼族が造ったものではないでしょう。あの機械型のアンドロイドよりも前の時代、それも私たちの時代にそれなりに近い遺物かと」

「そっか。カッコいいなと思ったけど、やっぱりイッキーリーじゃあんな立派なロボットは作れないよな」


 そうだよなぁ。さっきまでバレッタ達と対峙しただけでちびってしまうような雑魚があんなカッコいいロボットを作ることなんてできるわけなかった。


「それで?どうしますか?まだ私達の力は必要ですか?」

「いや、ここからは俺達で戦おう」


 流石に過剰戦力だと分かった今手伝ってもらうのは可哀そうだ。


「分かりました。私たちは帰ってますね」

「了解。皆ありがとな」


 俺の言葉に軽く頭を下げてカーテシーをするバレッタ。俺はわざわざ来てもらったので礼を言う。


「いえいえ、ご主人様の願いをかなえるのが私達ですから。それにたまにはこうやって外に出るのもいいものです」

「ホントですわ。本は素晴らしいのですが、ずっと読んでいると体がこってしまいますからね。たまに運動するのも悪くなかったですよ」

「そうだぜ。やっぱり実戦というのは悪かねぇ。ただ、今回は弱すぎたけどな。今度はもっと歯ごたえのある敵の時に読んでくれよな」

「至高の我が君にそう言ってもらえるとは何たる僥倖か。次回はさらに驚く錬金術の秘奥をお見せしようではないか」

「あはは、気にしないでいいよ。僕も久しぶりに外に出たけど、インスピレーションがキュピピピピーンっと湧いてきたよ。たまには呼んでよね」

「うふふ、主上のお役に立てたなら何よりですわ。それではまたお会いましょう」


 パーフェクトメイドな彼女たちは、各々が俺に返答しながら姿を消していった。


「ふぅ。それじゃあ、いっちょやりますか」

「それで?あんなバカでかいのとどうやって戦うのよ」

「そうだぞ主君」


 バレッタを返した所で気合を入れた俺にリンネとカエデが尋ねる。


「おいおい、忘れてしまったのか?俺達にはアレがあるだろ?」

「あれ?」


 はぁ……どうやら二人は完全に忘れてしまっているらしいな。


「こっちも人型機動兵器で戦うんだよ」

「ああ!!そういえば私達も持っていたわね、ロボット」

「そうだった。特別仕様のロボットを作ってもらっていたな」


 俺が助け舟を出してようやく思い出す二人。

 全く最高のロマン兵器を忘れるなんてどうかしている。


「よし、それじゃあ、俺達も戦うぞ!!っとその前に!!」


 俺はとある人物を強制連行してきた。


「どわぁ!?ここはどこだ!?」

「よう!!グオンク!!急に悪いな!!」


 それはグオンク。専用機を持っている最後の一人だ。


 やっぱりロボットは全部揃っていないとだめだからな。


「お前ケンゴか!?いきなり連れてくるとは酷い野郎だ!!一体どういうことなんだ!?」

「まぁまぁ。あれを見てくれ!!」


 急に連れてこられて何が何だか分かっていないグオンクに、俺は城ボットを見るように言う。


「うぉおおおおお!?なんだあれは!!ああ、そういうことか!!分かったぜ、ブラザー!!あれで戦うんだな?」


 城ボットを見た瞬間、状況を理解したグオンク。

 理解が早くて助かる。


「さっすが、グオンク分かってるなぁ。それじゃあ皆、やるぞ!!」

『了解!!』


 全員がこれからやることを理解したところで俺達は懐からカードを取り出した。


「龍功騎士イクスヴェルトォオオオオオオオ!!」

「煌光剣士マジマジコノハァアアアアアア!!」

「漆黒忍者クロネコマルゥウウウウウウウウウ!!」

「爆裂戦士ガンテツゥウウウウウウウウウ!!」


 各々がカードを空に掲げると、眩い光とそれぞれのエフェクトと供にロボットが自身の後ろに現れる。


 そして全員が光に包まれ、胸の部分にある球体の登場席に吸い込まれた。


「全員問題ないか?」

『ええ、何も問題ないわ』

『私もだ』

『俺も問題ない』


 全員に確認を取ると、どうやら準備万端のようだ。


『くっくっく。そんな小さなゴーレムでこのスーパーアルティメットグレイテストゴーレムに勝てるわけが無かろう』


 相手もちょうど変形が終わったらしく、俺達を挑発し、先生攻撃を仕掛けてきた。


 ミサイルのようなモノが多数俺達に飛んでくる。


「ちぃ!!」


 あんなものが爆発すれば、俺達だけではなく街の天翼族たちも消し飛んでしまうだろう。


 天翼族はいけ好かないし、地上人を奴隷にしていたのは許すことはできないが、精神魔法を使われていた形跡があるし、死んでほしいとまでは思っていない。


『龍功拳 奥義 光龍拳』


 俺は竜気をイクスヴェルトの手に集め、ミサイル軍に向かって放った。


―ドドォオオオオオオオオオンッ


 ミサイル群が連鎖的に爆発を引き起こす。


 その余波地上にまで及び、爆風で辺りの建築物を削った。


「このままじゃ、街にも被害が出る。天翼族はいけ好かないが、死なれるのは目覚めが悪い。まずはあのデカブツを街から引き離すぞ!!」


 攻撃を凌いだ俺は全員を指示を出した。


『分かったわ!!』

『承知!!』

『任せろ!!』


 俺の指示に全員が画面の向こうで頷いた。

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