第299話 情報収集
ひとまずこの森の管理者らしき天翼族たちはふん縛って転がしておく。
「どうやら少なくとも俺達みたいな地上の人間に友好的な種族じゃないってのは分かったな」
「そうね。羽がないだけで奴隷にしようとするような奴らだものね。前はここまでひどい感じじゃなかったんだけど」
「どんな感じだったんだ?」
リンネが少し違和感覚えてるような表情をしているので過去の天翼族について尋ねる。
「自分たちより劣っている者だと考えているのは変わらないんだけど、虐げてもいいとまでは思っていなかったはず。もちろん天翼族全てを知っているわけじゃないから。元々そういう考えの奴らがいたのかもしれないけど」
「そうだな。ここ数十年の間に、その過激派が力を増してきているのかもしれないな」
「ありえるわね」
数十年という期間があれば勢力が変わっていてもおかしくはない。天翼族の寿命が長いとしても十分考えられる。
「とりあえずこいつらを起こして情報を聞き出そう」
「そうね」
俺達は気を失ってる天翼族をたたき起こした。
「お前ら!!羽無しの分際で俺達こんな目に合わせてただで済むと思ってんか!!」
『そうだそうだ!!』
リーダーが目を覚ますなり、俺たちに罵声を上げ、子分たちが合わせるように声を上げる。
「へぇ、一体どうなるんだ?」
「そりゃあ、イッキーリ様にメッタメタのバッキバキにされるに決まってんだろ!?」
『そうだそうだ!!』
ふむ、イッキーリとかってのがこの島で一番偉いのか?
「そのイッキーリ様ってのはどこにいるんだ?」
「そりゃあこことは正反対の北にある皇都の皇城におられるに決まってんだろ?」
『そうだそうだ!!』
なるほど。やはりイッキーリってのがこの大陸のボスらしい。こいつら結構情報喋ってくれるし、良い奴らだな。どんどん質問していこう。
「こっからどのくらいかかるんだ?途中に街はあるのか?」
「飛んで三日だ。ずっとは飛んでられないからな。大きな町が二つある」
『そうだそうだ』
全くべらべらと聞いてない情報まで喋ってくれる。敗北者の鏡だな。
こいつら自身は気づいていないようだけど。
「おお、色々情報助かったわ」
「しまった!!」
『そうだそうだ』
俺がにこやかな顔で自分たちがしていることを教えてやると敵リーダーは思いきりやってしまったという顔をした。
「おまえらはもう黙ってろ」
『ふげ!?』
俺はそろそろうるさいので子分たちを黙らせる。何かしゃべるならいいけど、「そうだそうだ」しか言わないなら起こしている意味がないからな。
「でも、お前らが何も伝えなければ、イッキーリとかってのに知られることはないわけだ」
「無理だぞ!!ここにはスイーツの回収部隊がやってくる。そこで納品がなければいずれバレるぞ!!」
俺がニヤリと笑って見下ろしと、冷や汗のようなものを流して焦りながらさらに情報をくれる敵リーダー。こいつ情報源としてマジで有能だな。
「それでその部隊はいつやってくるんだ?」
「分からん。いつも不定期にやってきて勝手に回収してもっていくんだ」
ほう。不定期に来ることで怠慢を防ぐシステムになっているのかな?
俺も本社のお偉いさんがいつも気まぐれにやってくるもんだから気が抜けなくて色々大変だった覚えがある。こいつらもそういう緊張に晒されていると思うとなんだか親近感が湧くな。
「ほう。前に来たのはいつだ?」
「一日前だ。おそらく次に来るのは二日か三日後だろう」
一週間に二回か三回くらい来るのは分かってるのか。
それならひとまず一日くらいはバレなさそうだな。
「いやぁ。色々助かったわ。ありがとな」
「うわ、しまった!!また喋ってしまった!!この卑怯者!!」
再びいい笑顔で感謝を告げると、またこれはマズいという表情になった後、俺に罵声を浴びせる。
ははははっ。負け犬の遠吠えなど痛くもかゆくもないわ。
「そんじゃあ、その回収部隊ってのがいつ来るか分からないが、それまで眠っててくれ」
「や、止めてくれ!!ふげっ!?」
敵リーダーを気絶させて話は終わりにした。
大体の情報は得た。
後は街に行ってみるのが良いだろう。できればカモフラージュで羽を生やすのが良いかもしれないな。お、そうだ。この際だから皆羽型の魔道具を作ってやるか。
「よし、こっからは羽無しと言うたびに絡まれるのも面倒だから天翼族に変装していこうぜ」
「どういうこと?」
俺の言葉が理解できなかったリンネが俺にその真意を問う。
「羽型の飛行魔道具を全員に作ってやるって言ってんだよ」
「なにそれ面白そうじゃない!!」
「空が飛べるのか?楽しみだな!!」
『僕も羽もらえるの?やったぁああああああ!!』
「空飛べるんだって!!」
「おもしそうだね!!」
「楽しみだなぁ」
「これで雲の肉が食べられるぜ!!」
皆俺の話を聞いて一気に乗り気になった。
「そんじゃあ、一旦船に帰ってしこしこ作りますか!!」
『はぁーい』
俺達は天翼族を転がしたまま、船へと帰投した。
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