第294話 おかしなモンスター
「今の所、動物の姿を見ていないけど、いないのかしら?」
「うーん、この辺りに居ないだけじゃないか」
「確かに辺りに動物やモンスターらしき気配はなかったな」
これだけ大きな大陸なら何らか昆虫や動物がいてもおかしくないはずだが、今の所遭遇していない。たまたまこの辺りに居なかっただけなのか。それとも他の理由があるのか。今のところは分からない。
植物がお菓子だなんて不可思議な生態をしているから、動物がいないなんてこともあり得る。
「ちょっとこの森を探索して調査してみるか」
「それは面白そうね」
「うむ。もっと美味しい何かがあるかもしれないからな」
『さがす~!!』
『ぼくも~』
俺の提案によって俺達はこの森に住む動物やモンスターを探ることにした。
俺とリンネとカエデがそれぞれ分かれて、子供たちが一人か二人一緒についていく形をとる。子供たちは俺の所だけ二人だ。
なぜなら俺の近くが一番安全だから。他の二人も、もうかなり強くなっているのでそんじょそこらの相手なら子供を守りながらでも負けることはないだろうが、俺にはインフィレーネがあるので常に子供たちを守っておくことが出来るからだ。
『僕もあるじといっしょ~』
さらに俺の頭の上にはイナホがだらーんと乗っかっている。インフィレーネで守るのに二人と一匹くらいなら何も問題ない。
「とりあえず、俺達が西、リンネ達が北、カエデたちが東。それでいいか?」
「ええ、いいわよ」
「うむ、問題ない」
「それじゃあ、今から二時間後にまたここに集合にしよう。何かあったら念話でもしてくれ」
「わかったわ」「了解した」
俺たちは行く方向と、待ち合わせ時間を決めて各々の方向に進み始めた。
「おじちゃん、なんか要るよ?」
「いっぱい、いるね」
二十分ほど西にすすむと子供たちが何かを見つけたようだ。インフィレーネでも動生命体を確認していた。
「そっちの方に行ってみよう、案内してくれるか?」
「うん!!」「案内するね!!」
俺は二人の自主性に任せて先を歩かせる。何かあったら周囲に展開しているインフィレーネの衝撃を展開すればいいだけなので、問題ないと思う。
「うーん、あれは犬?」
「あれも美味しそうな匂いする~」
「そうだね、甘い匂い」
子供たちは犬を見るなり鼻をヒクヒクさせて匂いを嗅いでいた。
どう見ても遠目からはトイプードルと言う種類のモコモコした犬にしか見えない。
しかしインフィレーネで近くで見てみると、目や鼻がクッキーや果物をゼリーで
コーティングしたお菓子みたいなもので作られていて、よくみるとそのもこもこも毛ではない何かフワフワした素材で出来ている。
「お菓子の犬?」
「そうかも~」
「きっとそうだよ!!」
俺の呟きに二人がイメージにピッタリだと同意した。
「どうする?ちょっと近くに行ってみるか?」
「うん、気になる」
「私も~」
二人に尋ねると、近づいてみたいと言うので俺たちはこそこそと犬の傍に近づいていく。
インフィレーネで遮断すれば気づかれることもないけど、大した脅威じゃなさそうなので俺を先頭にして犬に堂々と近づいていく。
「グルルルルルルルルッ」
俺達に気付いたお菓子犬が普通の犬っぽく俺たちに威嚇し始めた。
「見た目はアレだけど一応生物なのか?」
「うーん、わかんない」
「わかんなーい」
一応インフィレーネで探知すると生命反応があるので多分生物だ。それにしても不可思議な生き物だな。
「ウオオオオオオンッ」
さらに近づくとこちらに走ってきて俺達に遅いかかる。問答無用で襲い掛かってくるってことは動物ってよりモンスターに近いか。
「ちょっと下がってろ」
「え~、戦ってみたーい」
「私も~」
俺が二人の前に立ちふさがると、二人が俺の足元から顔を出してそんなことを言う。確かに二人は小さいながらも武装していて、いつでも戦える準備はしていた。だから戦っても問題はない。
ただ……。
「カエデはなんて言ってるんだ?」
「おじさんが一緒ならいいってぇ」
「そうそう」
カエデの奴子供の戦闘訓練を俺に押し付けやがった。
敵は強くはなさそうだし、自分の子供の教育の練習みたいなもんだと思ってやるか。
「はぁ、しょうがない。危なくなったら助けるからやってみろ」
「やった!!」
「ね!!」
―ガンッ
俺は一度軽く犬を吹き飛ばして仕切り直させた。
「いくよ!!」
「うん!!」
子供たちが犬に向かって駆けていく。
その動きはカエデの動きに似ていてどうやら忍術の基本的な動きは教えているらしいことが分かった。彼女たちの武器は短刀でそれもカエデが教えたんだろう。
「えい!!」
「やぁ!!」
―ザクザクッ
見事な連携で犬を切り裂く。
「ウオオオオオオッ」
犬は結構あっさりと断末魔を上げて横たわって動かなくなった。探知をして確認するが、先程まであった命の気配を感じない。問題なくお菓子モンスターは死んだ。
一応分析したところ、こいつはコットンドッキーというモンスターらしい。
この辺りは天空大陸の中でもかなり弱い敵なのかもしれないな。地上に住んでいる人達を見下すような奴らだし、それ相応の力はあるはずだ。
でも子供たちの相手にはちょうどいい。
俺はしばらく後ろから様子を見ながら、子供たちにお菓子モンスター狩りの経験を積ませつつ、他の動植物がないか調べて回った。
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