第292話 空へ
二日後。
「よし、準備は整ったか?」
「ええ、何も問題ないわ」
「うむ、こっちもいいぞ」
大人勢は全員準備万端。
『いつでもいけるよ~』
「おじちゃん、いけるよ」
「おじさん、問題なし」
「おっさん、準備オッケー」
「おっちゃん、肉のおやつがないぞ?」
ペットと子供たちも問題ないようだ。若干一名が何か言っているが、後で肉を渡しておけば問題ないだろう。
俺達は家の庭に停めてあった船に乗り込むと、プシューという空気の抜ける音と共に扉が閉まる。
「ゆっくり飛んでくからそれまで自由に過ごしていてくれ」
『了解!!』
俺の言葉に全員が頷いた後、各々やりたいことをやるために散っていった。
俺とリンネとカエデはブリッジに向かって定位置に座る。
「それじゃあバレッタ、ゆったり天空島に向かってくれ」
「わかりました」
急ぐ旅でもなし、ゆっくり航行で天空島に向かう。
空からの景色をのんびり眺めながら遊覧飛行するのも悪くないだろう。
船はゆっくりと浮かび上がり景色が下がっていく。つまり船が浮かんでいっているということだ。この船には揺れなんてものは存在しないので、俺達は特にシートベルトを閉めたりすることも無く、ただ座っている。
「ようやく天空島か……」
「大分空いたものね」
「そうだな」
あれからドワーフの国を回り、その後で行くつもりが、ヒュマルス王国で戦争が起こってそれを回避させるために参加したり、結婚して新婚旅行に行ったりして結構時間が空いてしまった。
ちょびっとだけもうちょっとのんびり暮らすのも悪くないかなってのも思ったけど、リンネが我慢できなくなりそうだったからな。
彼女は基本的にじっとして、平和に生活に長い期間耐えられるような大人しい性格をしていない。常に新しい刺激を求めているのだ。
今は店舗経営や家を建てたりして毎日刺激的な事が起こっていたから問題なかったけど、店舗経営もパンツちゃんと祥子に任せてひと段落したし、新婚旅行も終わった。
これからただ平和な日々が続いたのではリンネも退屈だろう。そういう意味で旅の再開時期としては今がちょうどいい頃合いだった。
ブリッジの床が透けて離れていく地上が見えるようになる。バレッタの仕業だろう。
徐々に我が家が小さくなっていくのが見えた。
船は上空六千メートル辺りに到達すると、水平飛行を開始する。
「リンネとカエデ着くまでの間どうしてる?」
ひとまず指示を出して船は出発したので、着くまでの時間は暇となるので、二人に予定を尋ねた。
「私は神作品探しよ!!」
「私は鍛錬だな」
二人は相変わらずだった。
リンネは第二、第三、第四のポスト『魔法少女マジマジこのは』の作品を求めて、今日もせっせとアニメ鑑賞に勤しむらしい。
カエデも相変わらず鍛錬が好きだな。トレーニングルームで鍛えたり、プールで泳いだりするつもりのようだ。
二人とも平常運転で何よりだ。
「俺はやることもないし、リンネに付き合うか」
「ふふん、今日こそは良作と出会ってみせるわ!!」
リンネは俺の参戦に俄然やる気を出して握り拳を作る。
超古代のアニメはジャンルも量もかなり豊富で、普通の人間では全部は見切れない程にあるので中々大変な作業なのである。
勿論バレッタに頼めば一瞬でピックアップしてくれるんだろうが、リンネが楽しみながらスコップしているのを見ると、それをしてしまうのは無粋だろう。
俺とリンネは天空島に近づくまでアニメを堪能したのであった。
「どれどれ、天空島が見えてきたって?」
「はい、間も無く到着です。ここからはどうされますか?現在ステルスで航行してますが、姿を現して堂々と行きますか?」
バレッタに呼ばれて戻ってきた俺達。
「いや、リンネの話だと、天翼族ってのは、地上の人間を見下すような輩なんだろ?ひっそりと何処かに着陸するのが無難だろうな」
「分かりました。その方針で進めます」
俺の指示を聞いたバレッタは船を操作して島に近づいていく。
ただ、島に近づくにつれて明らかに違うことが分かった。
「あれのどこが島なんだがさっぱりわからない」
ブリッジから見えてきたのはどう考えても島と言うサイズではなく、一つの大陸と言っても過言ではないほどに大きな島だった。
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能無し陰陽師は魔術で無双する〜霊力ゼロの落ちこぼれ、実は元異世界最強の大賢者〜
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