第157話 下見
宿の部屋を俺とグオンクそして孤児の男の子たちと、リンネとカエデそして孤児の女の子達の二つに分かれて使用するようにして、山のような荷物を背負ったグオンクは部屋に荷物をおいた。
「今日はどうする?ゆっくりするか?」
ひとまず荷物を置いて人心地ついた俺はグオンクに尋ねる。
一時間もかからずにやってきたから疲れてはいないとは思うが、時差ボケみたいなものや、移動による精神的な疲れってのはあったりするからな。
「いや、早速工房を見てみたい。それに奉納祭の鍛冶大会に参加する奴らはすでに現地入りしているだろう。出来るならそいつらの仕事も見てみてぇな。まさか俺が奉納祭に参加するとは思ってなかったからな。事前調査とかも全くしてねぇから俺のレベルの位置づけがサッパリだ。情報を集めねぇとな」
「おっと思ったよりもまともな答えだ。ドワーフなら黙って最高の作品を作ればいいとかいいそうだと思っていた」
俺がイメージするドワーフとは乖離した理論的な答えに俺は目を丸くする。
自分以外の作品に眼もくれない頑固一徹な職人みたいな奴ばかりだと思っていた。
「そういうやつもいるがな。情報ってのはどこの世界でも大切なもんだ。そういうのをないがしろにする奴は上にはいけねぇ」
「確かにそうだな」
確かに情報というのは非常に大切だ。現状を把握して、問題点を洗い出し、改善していくことでより上達していくというサイクルを回していくのは重要なことだろう。
「んじゃ早速いくか」
「ああ」
「それじゃあちょっと宿の前で待っててくれ。リンネ達にも確認してくるわ」
「分かった」
俺はグオンクと別れ、リンネ達の部屋に行き、俺はグオンクと一緒に用意してもらった工房を見に行くことと、他の参加者の作品を調査しにいくことを伝える。
リンネは「それじゃあ私たちは子供たちと出かけるわ」と別行動をするようなので、一人でグオンクと合流し、用意してもらった工房へと向かった。
リンネも来るかと思ったが、武器自体は好きだが、その製作や過程にはあまり興味がないのだろう。
「ここはかなりいい工房だな。よく借りられたな」
工房の中に入るなり感心するようにあちこちを確認しながらグオンクが俺に話しかける。
「まぁな。この国でも色々あってな」
「お前にリンネもいるんだ。そりゃあさもありなんって感じだな」
詳しくは話さないが、アルクィナスではギガントツヴァイトホーンの件で上層部との繋がりが出来たことをグオンクも知っており、この国でもそうなんだろうと、俺の言葉で勝手に察したようだ。
何だかこいつは騒動を起こす、というような感じで見られている気がしないでもないが、今回は断じて俺は巻き込まれただけだと言いたい。
そういえばラノベには巻き込まれ体質という主人公がいるが、どれだけの主人公が本当に巻き込まれ体質なのだろう。大半の巻き込まれ体質だと言ってる主人公は、明らかに自分から厄介事に首を突っ込んでるだけにしか見えない奴が多い。
それなのに自分はついてないだのなんだの言うのはいかがなものかと思う。自業自得じゃん。本当に巻き込まれたくないないなら厄介事には目を瞑ればいいだけだからな。
「ふむ。ある程度わかった。ここならワシも本気で武器作りが出来るだろう」
どうやら思考が脱線してる間にグオンクは工房の確認が終わったようだ。
「そうかそれは良かった」
「こんだけ良い工房を用意して貰ったんだ。大船に乗ったつもりでいろ」
「もちろん何も心配してはいないさ。頼んだぜ?」
「任せておけ。それじゃあ他の参加者の仕事を見に行くか」
「そうだな」
不敵に笑って宣言するドワーフに俺も似たような悪い笑みを浮かべて応えた。
グヘヘ、と笑う俺たちは悪役代官と越後屋みたいだな。
その後俺たちは、工房を後にして城で貰った参加者リストを元に鍛治大会参加者達の店や出店をわたり歩いた。
「他の参加者もなかなかやるじゃねええか!!望むところだ!!」
その結果、グオンクの心に火がついた。なんとも頼もしい事である。
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