第132話 海でも絡まれる
俺たちが船に乗り込んでから船員たちが慌ただしく動き出し、出発する準備を始める。それから十分程で準備が整ったのでいざ初めての海の航海への一歩を踏み出した。
「出航!!」
「ヨーソロー!!」
掛け声とともに船が港から徐々に離れていく。
おお、前世も含めて船に乗る機会なんてなかったから陸地から船が離れていく情景にはなんだか感動してしまった。
「うわぁ!!」
「すごいねぇ!!」
「海の上を走ってる!!」
「あそこに魚がいる!!」
「にゃーん(僕もお魚食べたいなぁ)」
子供たちとイナホは太陽に照らされてキラキラと輝く水面を見ながら、初めての船旅の幕開けに興奮して船べりから身を乗り出してはしゃいでいた。
あれじゃあ落ちる可能性があるな。
「落ちるんじゃないぞ~」
『はーい』
俺が注意すると、全員がこちらを向いてとてもいい返事が返ってくる。
返事はいいんだけどなぁ。
落ちないか心配だ。
俺はインフィレーネを付けて万が一落ちても問題ないように対策を施しておいた。
「俺たちはどうするか」
「そうね。特にすることないのよねモンスターが来るまでは」
「そうだな」
「私は鍛錬でもしながら子供たちを見ていることにする」
「了解。することもないし、俺も甲板を回って初めての船旅の景色でも堪能するか」
「私もすることもないしついていくわ」
「分かった。行こうぜ」
「ええ」
大人組で話し合った結果、俺とリンネは甲板を見学しながら景色を楽しみ、カエデは子供たちの近くで鍛錬をすることとなった。
こういう時は何か娯楽でもあればいいんだがなぁ。
あ、でも釣りをするのはいいかもしれない。港を出たばかりだから今は微妙だろうけど、沖に出たらやってみてもいいだろう。動いてる船の上で釣れるかどうかは知らないが。
他はトランプやリバーシなど室内でする遊びばかりだ。外でやるような物でもないから部屋に皆がいる時にでもやるとしよう。
俺とリンネはまず甲板の先へと移動した。
「こうやって海をかき分けて進んでいくのをみるのは面白いな」
「ケンゴの世界には船はなかったのかしら?」
「いや、普通にあったぞ。でも乗る機会がほとんどなかったんだ」
「ふーん、そうなの」
しばらくの間俺たちは海を眺めながら景色を楽しんでいた。
「ケンゴ」
ある程度眺めていると、ゴードが俺達を迎えに来た。
「どうした?」
「お前たちに他の護衛を紹介しようと思ってな」
「そうか。ありがとう」
そういえば俺たちが乗ってすぐに出発の準備を始めたからそういうのは後回しになっていたか。
俺たちがゴードの後について歩いていくと甲板には護衛らしき人物たちが集まっている。
二十人程度だろうか。
「おう、お前ら。こいつらが臨時の護衛だ。自己紹介を頼む」
「俺はケンゴ、こっちはリンネだ。今回はよろしくな」
ゴードに促されて軽く頭を下げて挨拶をする。
「おいおい、子連れかよ」
その中の一人の柄の悪そうな男が言葉を挟む。気づけば俺の近くに子供たちとカエデも集まっていた。
「ん?何か問題があるか?」
「はぁ!?子連れで護衛が務まると思ってんのか!?」
「思ってるから連れてきてんだよ」
「ふざんけんじゃねぇぞ!!」
俺に食って掛かる人族の男。
「やめておけ、グルース。お前じゃ勝てないぞ」
ゴードが窘めるようにグルースと呼ばれた男の前に立った。
「なんだと!?」
「ケンゴはS級ランク、リンネに至ってはSSSランクの冒険者だぞ?」
「そんな奴らがこんな所にいるわけないだろ!!」
「いるんだよ、これが」
俺はギルドカードを取り出してこれ見よがしにグルースの前にちらつかせる。
「どうせ偽物だろそんなもん」
「ギルドカードの偽造なんかするかよ。重罪だぞ」
「はっ。どうだか!!」
全くめんどくさい奴に絡まれたもんだ。
―ドゴーンッ!!
『うわぁ!?』
しかしそんな時に轟音とともに船が大きく揺れた。
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