【書籍化・本編完結】おっさんと超古代文明〜巻き込まれて召喚され、スキルが言語理解しかなくて追放されるも、超古代遺跡の暗号を解読して力を手にいれ、楽しく生きていく〜
第121話 船が出ない?そうだ、海に行こう
第121話 船が出ない?そうだ、海に行こう
「何あれ、凄ーい!!」
「でっかーい!!」
「ずっと向こうまで続いてる!!」
「食べ物はどこ?」
港にくると、海が目に飛び込んでくる。
ああ、久しぶりに見たけど、やっぱりでけぇなぁ。
それに地球の海も異世界の海もあまり変わらないな。
太陽の光が水面に反射してすげぇ綺麗だ。
海を初めて見る子供たちは―一名を除き、目の前に広がる海に目を輝かせて飛び跳ねていた。イナホも何が楽しいのか一緒になってピョンピョンと飛んでいた。
しかし何かおかしいな。
「なんだか港に活気がないな」
「そうね」
「何かあったのかもしれないな主君」
「そうだな」
何やら雰囲気がどんよりして閑散としている。船員らしき人達がせわしなく働いてるわけでもなく、商人のような姿の人もあまり見かけない。
一体どうしたって言うんだろうか。
「ちょっと聞きたいんだが、いいか?」
俺は手持ち無沙汰に歩いている船員っぽい服装の男のドワーフに声を掛けた。
「なんだ?」
男は不機嫌そう顔をしている。
「なんか港の雰囲気が暗いんだが、何かあったのか?」
「ああ、やってらんねぇよ!!」
俺の話を聞くなり、男は吐き捨てるように叫んだ。
どうやらかなり鬱憤が溜まっているらしい。
「どうしたんだ?」
「クラーゲンがやってきたのさ」
男の話によると、ここ数日の間に近くに海の魔獣がやってきているそうだ。この辺りには来るはずの無い魔獣で、半透明の体と半月のような頭と体、そして沢山の触手をもった生物らしい。
イメージ的にはクラゲかな。名前はクラゲなのかイカなのか紛らわしい事この上ないけどな。
しかもこのクラーゲンはかなり巨大で、その上船を襲うそうだ。しかもかなりランクの高いモンスターのため非常に危険らしい。それで多くの冒険者達が討伐のために集められていて、そのうち討伐作戦が始まるようだ。だから退治されるまで船が出せないということだった。
OH、ここにきてさらに足止めとはな……。
うーん、どうするか……。
「どうするの?」
リンネが窺うように俺を見つめる。
俺たちが倒してもいいんだが、すでに作戦が動いているならおまかせしよう。
駄目そうならその時に考えればいいさ。異世界初の海を満喫していないしな。
ひとまず海で遊ぶことにしよう!!
「船が出ないんじゃ仕方ないな!!海で遊ぼうぜ!!」
「暑いし、それも悪くないわね」
「ふむ、水中訓練か?それは楽しみだな」
海で遊ぶと聞いて二人ともワクワクして俺の提案に乗り気だ。
んじゃ、それでいきましょう。
「おーい、お前ら浜辺に行くぞ。こっちへこい」
『はーい』
「にゃーん」
海に行くことにした俺は船や海を眺めていた子供たちを呼び戻す。すると、すぐさま子供たちが走って近づいてくる。
「浜辺にはどう行ったらいいんだ?」
「それなら……」
子供たちが駆け寄ってくるのを見ながら男に確認すると、道順を教えてくれた。説明を聞き終えると、駆け寄ってきた子供たちを引き連れて歩き出す。
その時、俺はふと思いついて立ち止まった。
男に少しは役得があってもいいだろう。
「んじゃ、色々ありがとな。これで同僚と酒でも飲めや」
振り返って金貨をピンっと指で弾いて男の元へと飛ばす。
「う、うわ!?き、金貨!?」
「世話になったな。独り占めせず皆で憂さ晴らししろよ?」
驚いて目をむく男を尻目に、俺はそのまま手を振りながら海へと向かった。
「お、おう、ありがとな!!」
俺の背に男の嬉し気な声が届いた。
少しいいことをした気分になった。
■■■■■
「あ、浜辺にモンスターがいるっていうの忘れてた!!あいつら大丈夫かな?……まぁ大丈夫か!!ガハハハッ!!」
男がそのことを思い出したのは、同僚たちと深酒してすっかりべろんべろんになった後のことだった。
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