【書籍化・本編完結】おっさんと超古代文明〜巻き込まれて召喚され、スキルが言語理解しかなくて追放されるも、超古代遺跡の暗号を解読して力を手にいれ、楽しく生きていく〜
第116話 使うかどうかじゃない。使えるかどうかだ
第116話 使うかどうかじゃない。使えるかどうかだ
あれからどれくらいの月日が流れただろうか。もはや覚えていない。
しかし、その時はついに訪れた。
「うむ。よかろう。これにて修行を終了とする。まだまだ未熟じゃが、これにてお主も一端のシンラ流古武術『龍功拳』の使い手じゃ。ここからは自分で研鑽を積み、たまに成果を見せに来ればよかろう」
「ありがとうございました」
俺は深く頭を下げる。
ふふふ、これで俺も古武術の使い手。これで敵をバッタバッタとなぎ倒し……ってあれ?今までグラヴァ―ル流やインフィレーネを使ってる時とあまり変わらないような?
いやいやそんなまさか。
そうそう実際に戦いで使うかどうかは問題じゃないんだ。古武術を使えるという特別感が大事なんだ。
古代魔法然り!!気にしたら負けだな!!
そして、やっと終わった、という感慨も束の間、次の瞬間に闘技場を覆っていた結界が解除された。
「ケンゴ!!」
結界が解かれてすぐにリンネが飛びかかるようにして俺を抱きしめる。
「ふぅ。久しぶりの感触と匂いだ」
俺はリンネのあちこちを触りながら、鼻からスゥーっと大きく息を吸い込んでリンネの存在を確認した。
うむ、久しぶりだが、素晴らしい感触、そして甘くてそそられるスメルだ!!
「ケンゴのエッチ、変態……。まぁ仕方ないわね」
リンネも俺の胸に顔を埋めながらスンスンと鼻を鳴らしているのでお互いさまだろう。
どれほど禁欲生活をしていたか分からないが、これでも魔導ナノマシンによって最高の状態を維持されている健康男子。溜まる物は溜まるのだから仕方がない。
「主君!!」
「にゃーん(あるじぃ!!)」
リンネとイチャイチャしていると、カエデとイナホも駆け寄ってきた。
イナホは俺とリンネの間にダイビングボディプレスをかましてきて、俺とリンネは慌てて受け止める。相変わらずモフモフでお日様のような匂いが非常に心地がいいし、癒される。
「カエデも結界ごしじゃないのは久しぶりだな」
「ああ。そうだな。それよりもちょっといいか?」
「なんだ?」
カエデは俺達との再会?―結界越しでは各々と会話したりしていた―も嬉しいが、それよりも気になることがあるらしく、そわそわ心配そうな表情を浮かべていた。
これはすぐに聞かないといけないだろう。
「あっと、修行に夢中になってうっかりしてたんだが、子供たちの事が心配なんだ。ここに来ていきなり修行が始まったからな。一体どれだけの日にちが経ったかもわからない。みんな元気にしているだろうか……」
確かに!!
子供たちはここに来る前に船に連れて行った。おそらく安全面は何も問題ないだろう。しかし、親代わりであったカエデといきなり何年も会えなかったというのはかなり辛いし、帰ってこないことに対しても心配になっていることだろう。
めちゃくちゃマズいじゃねぇか!!
「それはマズいな。すぐに地上に戻るぞ!!」
「そうね、そうした方がいいわ!!」
「うむ、そうしてくれると、ありがたい」
「にゃーん(バレッタのご飯食べるぞ~!!)」
俺たちはすぐに帰ることにして、リンネから離れると、すぐにインフィラグメの帰投機能を使用した。
しかし、転送されることはなかった。
ちっ。ここも無限の迷宮と同じって事か!!
「おい、テスタロッサ!!どこだ!!」
「どうしたんだ、主」
「すぐに俺たちをここから帰せ!!」
俺は急いでテスタロッサを呼び出すと、どこからともなくやってきたテスタロッサの肩を掴んでガクガクと揺らす。
「主落ち着け」
「これが落ち着いて居られるかぁ!!気づいたら数年も経ってるんだぞ!!外がどうなってるか分からん!!」
顔色を変えることなく、淡々とした態度に俺はついついイライラして声を荒げてしまう。
なんでお前はそんなに落ち着いてるんだ?
こっちは一大事なんだよ!!
「いいから落ち着けっての。焦らなくても大丈夫だ」
「なんだってんだよ!!」
はぁっとため息を吐いて呆れるように言うテスタロッサ。
こいつは俺の気持ちを逆なでしないと気が済まないのかぁ!?
「いいか。あの結界の中は時間の流れが違う。結界内での1440日が外の世界での1日に相当する。つまり主たちがここにきてまだ1日も経っていないってこった」
『はっ!?』
テスタロッサの答えに、俺達は間抜け面を晒してしまった。
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