第106話 試練の祠
扉に触れた俺たちはふわりと無重力感を味わうと、いつの間にか先ほどまでいた霊廟の扉の前ではない場所へと移動していた。そこはまるで闘技場のように誰かと戦うために用意された部屋に見える。
「おお~、ここが試練の祠の中か。なんとなく内容が読めたな」
「ふーん、確かにね」
「ほうほうこれは」
「にゃーん(僕も分かっちゃった~)」
お互いに顔を見合わせて笑いあうと、部屋の中央へと向かって歩き出した。
「よく来た挑戦者よ!!私がこの部屋の主。先に進みたくば私を倒していくがよい!!」
中央に辿り着くなり、魔法陣と共に誰かが姿を現し、胸をドーンと貼って口上を述べた。
「「「はぁ……」」」
その姿を見るなり俺たちは全く同時にため息をつく。
「にゃにゃにゃーん(ねぇねぇ、あれ食べてもいい!?ねぇねぇ!!)」
イナホ一人だけテンションが高い。
「な、なんだ!?その残念そうな眼は……!!」
現れた相手は俺たちの視線に憤慨するように叫んだ。
いやだって、それもそのはず。現れたのはどう見てもデフォルメされた鶏、つまりコッコーなんだもの。ダンジョンの1階やそこらに出てくる雑魚モンスターだ。そりゃ残念な視線を送るだろうよ。まぁ色が少しばかり違って色が赤いけどな。
イナホのテンションが上がるのも無理はない。丸々と太った鳥だしな。
「いやだってお前コッコーじゃん。弱いじゃん」
「な、なんだとー!!我はコッコー・レッド!!コッコーと一緒にするでない!!」
俺が代表してジト目で答えると、プンスカと怒る赤コッコー。
「まぁいいや。お前を倒したら次の階に進めるのか?」
「そうだ。しかし、お前たちは複数だ。その人数に合わせてこちらの数も増える」
「なるほどな。分かった」
「ふむ。それでは仲間よ、くるのだ!!」
説明を終えると、コッコーの周りに四つの魔法陣が現れ、そしてその上に赤コッコーの仲間が現れた。
「我はリーダー!!コッコーレッド!!」
「俺はコッコーブルー!!」
「僕はコッコーイエローなんだな!!」
「私はコッコーピンクよ!!」
「ウチはコッコーパープル!」
それぞれがポーズを決めて自己紹介をし、
「「「「「全員そろって!!鳥獣戦隊コケ・コッコー!!いざ尋常に勝負!!」」」」」
最後は全員でそろって戦隊ものの決めポーズを披露した後、俺たちにとびかかってくる。
うん、おっそい!!
すでにSSSランク以上の相手をしている俺たちにとってはもはや雑魚そのものであった。
「カエデさん、イナホさん、やってしまいなさい!!」
「承知!!」
「にゃーん(今日のご飯だ~!!)」
俺の合図にイナホとカエデが元気に返事をして、
「「「「「んぎゃー!!」」」」」
あっさりと蹂躙してしまうのであった。
「ぐふっ……。我らは先兵に過ぎない。これからより強大な相手が待ち受けるだろう……。ガクッ」
赤コッコーが捨て台詞を吐いた後、コッコーたちは光り輝き、溶けるように消えていく。
「にゃー……」
肉が残らないとしったイナホは悲し気に消えていくのを眺めていた。完全に消えると、奥の何もなかった壁に下へと続く階段が現れる。
その先へ進むと、
「コケコッコーがやられたか。くっくっく。我らは奴らのようにはいかぬぞ!!」
と、どう見てもコッコーと差ほど変わらない雑魚モンスターの、まん丸な体を持つ丸ウサギにしか見えない相手が偉そうに口上を述べた。
「「「「「んぎゃー!!」」」」」
俺たちは何も言わず叩きのめした。
「「「「「んぎゃー!!」」」」」
「「「「「んぎゃー!!」」」」」
「「「「「んぎゃー!!」」」」」
「「「「「んぎゃー!!」」」」」
「「「「「んぎゃー!!」」」」」
それから幾度となく、個性的なモンスターたちを蹂躙、もとい、と戦い、いつしか獣王が辿り着いた歴代最高階層である75階層へとたどり着く。
「んもー!!よく来たな!!これまでは楽に来れたようだが、ここは一筋縄ではいかぬぞもぉ!!」
そこに居たのは巨大なミノタウロスのようなモンスターであった。
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