第103話 祝勝会

 今俺たちはコロシアムに居る。それも獣王が座るであろう観客席にだ。

 ちなみにサンダーボルテックスバードは俺の倉庫内にいれてある。

 素材がもったいないからな。功労者だからある程度貰えるだろうし。


「皆の者良く集まってくれた!!今日は良き日だ。災害の内の一体であるサンダーボルテックスバードが倒された!!宴だ!!」

『ウォオオオオオオオオオオオオオオオオ!!』


 獣王の言葉に続いて集まった民衆たちが雄たけびを上げた。


「そして、その最大の功労者達は、お前たちはもちろん知っているだろうが、ケンゴとリンネ、そしてその仲間たちだ。こいつらがいなければ獣人国は、サンダーボルテックスバードを殺すこともできず、さらには多大な損害を受けていただろう。その功績を持って俺はこいつらを国の『英雄』とすることとする!!」

『ウォオオオオオオオオオオオオオオオオ!!』


 再び獣王の言葉に民衆は熱狂した。


 はぁ!?英雄だぁ!?


「おい、聞いてないぞ!!」


 俺は後ろから獣王に文句を垂れた。


「おっと、国の英雄がおまえらに話したいことがあるそうだ!!心して聞くように!!」


 獣王はニヤリと笑ってそんなことを言いやがった。


 うわ、こいつ俺にボコボコにされたことを根に持ってるんじゃないのか!?

 くそ、全く……俺はこういうのは苦手なんだよ……。


 俺は獣王の代わりに前に出た。


「あ~ゴホンッ!!改めて俺はケンゴだ!!お前たちは知っているだろう。なにせほとんどの奴と一度は戦っているだろうからな!!そのことで一度謝っておく。すまなかった。お前たちが俺を美味そうに見えるのは俺のスキルのせいだ。そのせいで夜は衝動を抑えることができず暴走してしまう。俺に一度気絶されられれば問題は解決する。もしそういう症状が出てきたら遠慮なく、俺に挑んでこい。俺が暇している時間なら、相手になってやる!!」

『ウォオオオオオオオオオオオオオオオオ!!』


 謝罪なのにコロシアム内は盛り上がる。


「この話はこの辺にして、災害モンスターサンダーボルテックスバードは死んだ!!お前たちはもうあの理不尽な暴力に怯える必要はない!!今日は無礼講だ!!獣王様がいくらでも出してくれる!!浴びるほど酒を飲んで、死ぬほどご馳走を楽しめ!!以上だ!!」

『ウォオオオオオオオオオオオオオオオオ!!ケンゴ!!ケンゴ!!ケンゴ!!ケンゴ!!ケンゴ!!ケンゴ!!ケンゴ!!ケンゴ!!ケンゴ!!ケンゴ!!ケンゴ!!ケンゴ!!ケンゴ!!ケンゴ!!ケンゴ!!ケンゴ!!ケンゴ!!ケンゴ!!』


 俺が挨拶をして元の位置に戻ると、観客は俺の名前でコールを始めた。


 恥ずかしいけど、気持ちいい!!


「お前言ってくれたじゃねぇか……」

「なんのことだ?」


 忌々し気に俺を睨む獣王に、俺は悪びれもせず、とぼけてやった。


「お前この人数の食事と酒がどれだけになるか分かってんのか?」

「さぁてな。分からん」


 ははは、俺を勝手に英雄にしやがったし返しだ。

 お互い様だろう?


 数万人が際限なく飲み食いするんだ。どれだけになるんだろうな?

 俺しーらない。


 まぁ泣きついてきたら食料が不足したら倉庫から出してやるさ。


「はぁ……しょうがねぇ……。シン!!部下を使って食料と酒をありったけ集めろ!!請求は城に回せと言っておけ!!」

「よ、よろしいので!?」

「構わん!!どっちにしろ一度口にしたことを撤回することはできん。すぐにいけ!!もちろん無理やり集めるんじゃねぇぞ!!」

「はっ!!」


 ニコニコとした笑みを浮かべる俺に、諦めた表情になった獣王は、シンに指示をだしてすぐに物資を集めに行かせた。


 それが賢明だろうな。最悪近場の街や村からも集める必要があるかもしれない。


 再び獣王が前に出る。


「よーし、お前ら!!ケンゴの言った通り、今日は飲み放題、食い放題だ!!おもいっきり飲んで騒げ!!」

『ウォオオオオオオオオオオオオオオオオ!!』


 こうしてサンダーボルテックスバードを倒した祝勝会が開催された。


 その日はほとんどの獣人がぶっ倒れるまで飲み明かしたのであった。

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