【書籍化】おっさんと超古代文明〜巻き込まれて召喚され、スキルが言語理解しかなくて追放されるも、超古代遺跡の暗号を解読して力を手にいれ、楽しく生きていく〜

第102話 あっけない終わり

「ギョエ！！ギョエ！！ギョエ！！」

　雷鳥は痛みをこらえるように鳴き声をあげ、翼の切断面からドバドバ血を流しながらも、災厄モンスターとしての意地か、器用に足だけで立ち上がった。

　すでにコロシアム内に俺たち以外の人物はいない。

「ガハハハッ。落ちてきたなら俺の出番だ！！」

「私もいるわよ！！」

　獣王とリンネが我先にと駆け出していく。

　協調性がないな……全く。

「カエデは休んでいろ。イナホはカエデといろ」

「すまない主君……」

「にゃーん（カエデは無理は駄目だよ～）」

　カエデはさっきの忍術で体に負荷がかかったらしく、へたり込んでいる。癒しとしてイナホを付けて休ませ、俺もリンネと獣王の後を追った。

「オラオラオラオラァ！！」

「グラヴァ―ル流、光刃乱舞！！」

　俺が近づいた時、二人は巨大な足に向かって攻撃を加えていた。

「ギョエェエエエエエエエエエ！！」

　足がずたずたに切り裂かれ、骨を砕かれていく。

　羽という圧倒的な機動力を失った雷鳥は、ほとんどの戦闘力を失ったといっていいほどに弱体化していた。しかし、足さえも失った雷鳥だが、戦意を失うことなく、後から来た俺に対し、その鋭い嘴を俺に何度も連続で振り下ろす。

「おっと、その程度の攻撃はもう見える」

　俺は特に気負うこともなく、攻撃を避けながらインフィレーネを足場にして近づき、技を繰り出した。

「獣王百裂拳！！」

　魔力のこもった拳を弾幕のように頭にたたきつける。

「ギョエェエエエエエエエエエ！！」

「うわっ！？あいつ俺の技まで覚えやがった！！」

「ふふーん、ケンゴだから当然よ！！」

　俺の攻撃を見て獣王は驚愕を、リンネはふふんと誇らしげに語りながら、体を切りつけていた。

　なんでリンネが誇らしげなんだ……。

　雷鳥は体を揺り動かして避けようとするが、その巨体と、四肢を失った人間と同じように殆ど動けない身となっては躱せる道理もない。どんどん傷が増えていき、動きも徐々に鈍っていく。

　こりゃあ、勝負ありだな。

　目は死んじゃいないが、流石にここまでなす術がなくなると、挽回は難しいだろう。後は最後まで油断せずに詰めていくだけだ。

「ギョエ！！」

「ギョエ！！」

「ギョエ！！」

　俺達三人にダメージを与えるたびに声を上げ、その声もどんどん小さくなっていく。

「リンネ止めだ！！」

「ええ！！」

　もうほとんど動かなくなったところで指示を出した。

「グラヴァール流奥義！！真煌剣」

　リンネは俺の指示に頷くと飛び上がる。

　上段に構えた剣に光が纏い、巨大な大剣となって、雷鳥の首を捉えた。

―キンッ

　そしてそのままスッと体に潜りこむように体を通り抜けると、リンネは剣を鞘におさめる。

　鞘に納めた途端、ブシューっと首から血を流しながら、雷鳥の頭は地面に落ちて、辺りを揺らし、その後、胴体もズシーンと地面に横倒しになった。

「なんだよ、災害モンスターだったのに大したことなかったな」

　獣王が物足りなさそうにぶつくさと呟きながら俺の方に近づいてくる。リンネも同様だ。

「そりゃあ、あいつの武器を一番に奪ったからな。当然そういう結果になるだろ」

「そうね。サンダーボルテックスバードが最も厄介なのはあの空を自由に飛び回れる羽。それがなくなってしまえば私たちでも倒せる」

「あのスピードに攻撃を当てるのはかなり難しいからな。今回はカエデのおかげで助かったな。あれがなかったら苦戦した」

「そうね、後でご褒美にたっぷり可愛がってあげなくちゃ！！ふふふ」

　リンネが物凄く良い笑顔で笑っている。

　リンネは新しい何か目覚めたのか？

　なんだか背筋に寒気のような物を感じるが、見なかったことにしよう。

「んじゃ、大会も鳥退治も終わったし、宴でもひらくかぁ！！お前らはもちろん参加だ」

　獣王が突然そんなことを言いだした。

「いや、決勝戦の勝敗はまだ出ていなったはずだが……おれが審判をぶっ飛ばしてしまったからな」

「はぁ……あんなの俺の負けに決まってんだろ。それに脅威が去ったことを大々的に喧伝しなきゃならなぇし、こういう一大事が終わった後の宴は大事だ」

　そりゃそうか。俺としては実力で勝った気がしないから納得いかないんだがなぁ。

　宴に集まる奴らに寝首をかかれたくないからできれば部屋で大人しくしていたかったが、そうもいかんようだ。

「はぁ……分かったよ。参加しよう」

　俺はため息をはいて了承した。

「そうこなくっちゃな！！」

　獣王は宴の開催を決めると、さっさとコロシアムから出て行ってしまった。