第101話 派手に行くか
ひとまずインフィレーネで様子を窺ってみよう。
『貫け!!』
インフィレーネに指示を出して、障壁に使用していない数をサンダーボルテックスバードに向けて解き放つ。
―ドドドドドドドドッ
サンダーボルテックスバードに殺到するインフィレーネ。
全てが刺さるわけもなく、ひらりひらりと躱される個体も多い。
「ギョエェエエエエエエエエエ!!」
それでもいくつかは巨体が故に躱しきれずに体表に突き刺さって貫通し、サンダーボルテックスバードが身を捩って苦悶の鳴き声を上げる。
なるほど。防御力はそれほどじゃないな。しかし、あの機動力は脅威だ。インフィレーネでも完全にはとらえきれない。致命傷は裂けてるみたいだしな。
サンダーボルテックスバード……いや面倒だな、雷鳥と呼ぼう。
防御力という点で雷鳥はギガントツヴァイトホーンに及ばないが、機動力は圧倒的に雷鳥の方が上だろう。空を飛んでいるというのはこちらが圧倒的に不利だ。
なんとか下に落とさないと。
「誰か遠距離攻撃とかあいつに届きそうな攻撃が出来るやついないか!?」
「私は無理!!」
「私もあの距離は流石に届かない!!」
「にゃーん(早くあの鳥食べたいよぉ)」
「俺も無理だ。ガハハハッ!!」
俺の仲間には近接戦闘系しかいなかった……。
俺も今は魔力がないし、空も飛べない。困ったな……。
イナホはもう少し食べること以外に興味を持ってくれ!!
「って、なんでシレっと獣王がここにいんだよ!!避難はどうした!!」
「ん?避難ならシンにおしつ……ゴホンッ……シンが買って出てくれたから大丈夫だ。それにこんな心躍る相手と戦えるんだ。見逃せるわけないだろ!!」
明らかにワクワクしているのを隠しきれていない獣王の回答。
今完全に押し付けたって言おうとしてたじゃん。
もうちょっとちゃんとしろよ獣王。
「はぁ……まぁいいか。防御力はギガントツヴァイトホーンには及んでいない。下に落としさえすれば、このメンツならなんとか倒せるはずだ。しかし……あいつを地面に落とす攻撃手段が今俺たちにないんだよな。機動力が高くてなかなか攻撃もあたらん。何か少しでも隙を作れればいいんだが……」
「確かに。しかもあいつにダメージを与えられる魔法使いなんてそうそういないわね」
「獣人も基本的に近距離戦闘型ばかりだしなぁ」
俺の状況説明に、リンネも獣王も渋い顔で答えた。
ふむどうにかならないものか……。
ん?……カエデが大人しいな。
カエデを見ると、顎に手を当てて考え込んでいる。
「どうしたカエデ?」
「ふむ……足止めはどの程度できればいいのだ?」
「数秒でもあれば十分だ」
「それならなんとかなるかもしれん」
「マジか!?」
カエデに話しかけると、思ってもみない答えが返ってきた。
なんとカエデが何とかできるらしい。
上空を雷鳥の影が通る。
影……。ああ!!影か!!
「まさか影か?」
「主君は分かったようだな。そうだ私の忍術『影縛』ならレベル差がありすぎるため、長くは止められないが、ほんの数秒程度ならなんとかなるだろう」
なるほどな。現状雷鳥は逃げる様子はない。
ならば、インフィレーネで誘導して次に上空を通った時に影を縛ってもらい、その隙をついて下に叩き落としてやろう。
「ほほう。我が獣人国にお前のような使い手がいたとはな」
「ふっ。今の私があるのは主君が居たからこそ。以前の私は圧倒的な弱者だった。知らなくて当然だろう」
「やっぱりいいわぁ!!忍者カエデそのものじゃない!!」
獣王が興味深そうにカエデを見つめ、リンネはカエデの立ち振る舞いに興奮していた。
「ほら!!そういうのはいいから、ちゃっちゃとやるぞ!!」
『おう(ええ)!!』
俺はインフィレーネで雷鳥の誘導を始めた。しかし、雷鳥はインフィレーネをのらりくらりと躱して中々うまく誘導できない。
流石災害モンスター一筋縄じゃいかないな。
しかし、根気強く、追い込むことでそのチャンスはきた。
場所はコロシアム中央上空。
「今!!」
「承知!!黒猫忍術『影縛』!!」
カエデは自身の影を伸ばして、雷鳥の影に接続させた。
「ギョエェエエエエエエエエエ!!」
雷鳥の悲鳴と共に石化でもしているかのように動きが空中で止まった。
「ぐっ」
「大丈夫か!?」
「大丈夫だ!!2、3秒しか持たん。すぐに攻撃を!!」
「了解!!」
苦しみを口から漏らすカエデが心配だが、時間がないので彼女の言葉通り攻撃を実行に移す。
俺はインフィレーネを複数ドッキングさせて巨大な剣を二振り形どらせた。
「インフィレーネ双光刃!!」
インフィレーネで形どられ、眩い輝きを放つ光の双剣を翼の付け根にたたきつけた。
「ギョエェエエエエエエエエエ!!」
あまりの痛みに悶絶の悲鳴をあげる雷鳥。
それもそのはず。ものの見事に両翼が切り離されている。
雷鳥は身動きを取ることが出来ずにコロシアムの中央にたたきつけられ、まさになす術の無いまな板の上の鯉となった。
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