第096話 決勝
「はぁ……あんたかよ」
「そりゃそうだ」
「普通あんたは優勝者とのエキシビションマッチとかじゃないのか?」
「それじゃあ俺がつまらんだろう」
「全くどこまでも戦闘狂か、上等だ」
「はははは、楽しみにしていたんだ!!全力を見せてみろ!!」
俺は決勝の闘技場である男と相対していた。
そう獣王その人である。
この獣王と来たら普通に大会に参加してやがった。
全く楽勝かと思ったらとんでもない化け物が最後に舞ってやがるとは……。
シンと比べてもその力量は計り知れない。
致し方ない。ひとまず頑張ってみるか。
「両者位置について!!」
引き続きヴェルが審判を務めている。
流石に休む時間もなかったからな。
すぐに回復はしなかったのだろう。
俺と獣王は開始位置について構える。
「ほう……構えが様になったな」
「ああ、しっかり観させてもらったからな」
「そうか、じっくり試させてもらおう。それでは始めるとしよう」
「そうだな」
俺が構えると、興味深そうに見つめる獣王。コロシアムは緊迫の静けさに包まれた。
「それでは…………始め!!」
ヴェルの合図で、決勝戦の幕が切って落とされた。
「獣王百裂拳!!」
「チッ!!」
その瞬間、獣王が目の前に現れ、拳の弾幕を体現する。
速すぎんだろ!!
これじゃあバレッタアイのコピーも間に合わねぇ!!
俺は舌打ちをして応戦するように襲い掛かる拳に拳をぶつけた。
「うぉおおおおおおおおおおおおおおお」
迫りくる拳に拳を合せて撃ち落とす。
―バシバシバシバシッ
お互いの拳がぶつかり合う音が闘技場に広がっていく。
「ほう、よくこれをしのいだじゃねぇの。それじゃあ、ギアを上げていくぞ!!オラぁ」
「全くこれ以上があるのかよ!!」
楽しそうに蹴りを放つ獣王に、俺は悪態を放ちながらその蹴りをさばいた。
「おらおらおらおらぁ!!」
獣王の猛攻を俺も負けじと捌いて反撃を行う。それを獣王もなんなく防いで反撃する。
その繰り返しだ。
お互いきりが無いと感じたのか一旦距離を取った。
「オラァ!!」
「せい!!」
「うらぁ!!」
「ふっ!!」
「せやぁ!!」
「こんちくしょー!!」
それから幾度となく一撃離脱でぶつかり合うが、一向に決定打になる事はない。
「ふぅ……。楽しくなってきたなぁ!!どんどんいくぜぇ!!闘気活性!!」
一旦距離を取ると、獣王が気合を高め、体の周りをオーラのようなものが覆っていく。
それに応じて獣王の圧力も増した。
「しぬんじゃねぇぞ!!」
「くそが!!」
さらにスピードを上げて俺に迫る獣王。
「ぐはっ。ふごっ。ふげっ」
「ほらほらどうした!!こんなものか!!」
スピードも力も増した獣王に、俺は防戦一方になり、いくつか攻撃をもらうようになってしまう。
このままじゃダメだ!!
俺は攻撃を受けながらも相手を観察し、一つの結論を得た。
あの纏っている物はおそらく闘気と呼ばれるものだ。
それなら……!!
「そっちがそう来るならこっちはこうだ!!うぉおおおおおおおお!!」
「なるほど!!魔力か!!面白れぇ!!」
「闘気はありで、魔力は無しとは言わねぇよなぁ!!」
「当然だ!!オラぁ!!」
そう。俺は魔力を全身に纏って応戦した。
俺のスピードとパワーも飛躍的に向上する。
―ドンッ
―ドンッ
―ドンッ
―ドンッ
―ドンッ
お互いがぶつかり合うたびに腹に響くような衝撃波と鈍い音が響き渡った。
なんちゅう化け物だ。
こいつリンネに匹敵するんじゃないか?
リンネと模擬戦をしている俺は獣王にリンネと同じくらいの力を感じた。
「ははははははは!!ここまで俺についてくるとはなぁ!!とっておきをみせてやる!!いくぞぉ!!闘気鎧装!!」
獣王の言葉に呼応するように、奴の体がまばゆい光を放った。
「くそっ!?眩しい!!目くらましかよ」
俺は一旦距離を取る。
「はははは!!これは闘気の到達点!!闘気鎧装!!攻撃力や防御力は今までの比じゃないぞ!!なんたってギガントツヴァイトホーンに傷をつけるくらいだからなぁ!!」
現れたのは金色のフルアーマー。
圧倒的な威圧感と力を放射していた。
「マジかよ!!ということはあんたはSSSランク冒険者を超えるってことかよ」
「何言ってんだよ、俺は現役のSSSランク冒険者だっつーの!!」
衝撃の事実。
こいつは現王にしてSSSランク冒険者なのかよ!!
ははは、そりゃあ他国も迂闊なことはできないわけだぜ。
そんなことより今までとは別次元で速いし、あの攻撃はやべぇ!!
受けたら一発KOだ。
「うぉ!?」
「あぶねっ!!」
「やばっ!!」
俺は迫りくる攻撃を必死に躱して躱して躱しまくる!!
「躱してばかりじゃ俺は倒せねぇ、ぞ!!」
「うるせぇ!!今とっておきを準備してんだよ!!」
「強がりじゃないことを祈るぜ!!」
ふむ、今のままじゃ手づまりだ。
やっぱり俺も同じ事をするしかねぇな!!
「目ん玉かっぽじってみておけよ!!魔装顕現!!」
「何ぃ!?」
俺が叫ぶと俺を覆っていた魔力が物理的に現世に干渉するほどに圧縮され、全身を覆う鎧として顕現した。
その様子に獣王も驚愕している。
だって闘気とか魔力で鎧作るのってロマンじゃねぇか!!
うらやましいから観察して出来るようになってやったぜ!!
「深淵をのぞく時、深淵もまたこちらをのぞいているのだってなぁ!!」
「どういう意味だ!?」
「お前が俺を見てるのと同様に、俺もまたお前を見てるってことだよ!!」
「バカな!?この場で覚えたっていうのか!?」
「そういうこった!!今度はこっちからもいかせてもらうぜ!!おらおらおらおら!!」
「チッ!!」
驚きで攻撃の手を緩めた獣王に、俺は猛攻をしかけた。
いきなり自分と同じような切り札を覚えたとしてみれば相手にとって脅威でしかないよな。
―ドンッ
―ドンッ
―ドンッ
―ドンッ
―ドンッ
お互いがぶつかり合うたびに先ほど以上の衝撃波と鈍い音がコロシアム内に響き渡った。
観客もいつしか叫ぶのも忘れているようだった。
俺たちの戦いは激化の一途をたどっていた。
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