第071話 あわや……

 世界樹の上で盛り上がった俺たちは、部屋に戻って激闘を繰り広げてしまい、疲れ果てるまで戦った後、泥のように眠った。


 それからしばらくの間、昼は図書館で読書、船に戻って食事や睡眠という生活を続け、『魔法少女マジマジこのは』の最終巻までのリンネへの読み聞かせが終わってちょうどいいので、俺たちは城に顔を出すことに。


 俺もまだまだ序盤だが、古代魔法を少しずつ使えるようになってきたので、これからは旅をしながら、度々図書館に戻ってきて続きを読んでいけばいいだろう。


 それに俺もこのはを読みたい!!


 俺たちは準備を整えて世界樹の根元の模様の上へと転移した。


「皆の者、リンネ様と剣神様をお助けするぞ!!」

「「「「「「「「はっ」」」」」」」」


 外から何やら大勢の声が聞こえる。


 俺たちは顔を見合わせて外に出た。


「あれはリンネ様と剣神様!!」

「なんと!?ご無事で!!」 

「やはり無事だったな」

「ははは、リンネ様がどうにかなるはずないよな」

「そうだそうだ、剣神様は災害モンスターを倒すお方。あんな遺跡くらいどうってことないさ」


 俺たちが遺跡を出て姿を見せると、整列しているエルフたちが俺たちの無事を喜びあっている。


「おい、一体どうしたってんだ?」


 俺は一番近くにいた少し偉そうなエルフに声を掛けた。


「はっ!!見張りよりリンネ様と剣神様が1週間も戻られないという報告がありまして、これから捜索に向かうところでした。ご無事で何よりです!!」

「いや、こっちこそ何の報告もしなくて悪かったな」


 エルフの答えを聞くと納得。


 確かに戻ってきた後も、そのまま図書館に行ったから特に連絡もしてなかったもんなぁ。アレナ達からすれば俺たちは恩人。そんな相手が遺跡に行って連絡も一切ないとなれば心配して当然か。


 あと少し遅かったら、遺跡の特性を考えれば俺たちが探しにいくことになったかもしれん。間に合ってよかったな!!


「いえ、とんでもありません!!」

「これから城に行くつもりだったんだが、問題ないか?」

「ええ、アレリアーナ様も心配なさっておりましたから、さぞお喜びになられるでしょう」


 俺が尋ねると、にこやかに笑って答えるエルフさん。


 それならすぐに行って安心させてやろう。


「そうか、なら行こう」

「はっ」


 俺たちは兵士に連れられて城へと向かった。


「あらあら、リンネちゃん、無事でよかったです」


 アレナが玉座から駆け寄ってきてリンネに抱き着く。その瞳には涙が浮かんでいた。


 まるで母子や姉妹の感動の再会のような場面だ。

 ただし、見た目的に母親、もしくは姉はリンネだが。


「全く私が死ぬわけないでしょ。ケンゴもいるんだし」

「まぁまぁ、そうね、その通りですね」

「でも心配してくれてありがとね」

「ふふふ、これでもリンネちゃんのお友達ですからね。心配するのは当然です」


 リンネはアレナを撫でながら嬉し気な表情を浮かべていた。


 美しきかな友情。てぇてぇ。


 しばらく抱き合った後、お互い気を取り直して、アレナは玉座に座り、俺たちはアレナの玉座の前に立っている。


「それでは罠の迷宮は攻略されたのですか?」

「ああ」

「ということは無限の叡智は手に入れられたのでしょうか?」

「いや、あの迷宮の奥何もなかったぞ」


 俺が含みを持たせて答える。

 嘘は言っていない。

 

「そうでしたか。やはりただの言い伝えでしたのね」

「みたいだな」


 アレナも俺の意思をくみ取ったのか、納得顔をしつつも残念そうに返事をした。


 アレナだけならまだしも、それ以外もともなると流石に信用しきれない。それにアレナは為政者だ。伝えてしまえば何かあった時、アレナにその意思がなくても、利用されることもあるかもしれない。


 あのアンリがそれを許すとは思えないけどな。


 今のところはアレナからアクションがなければ教えないってことでいいだろう。


「それは残念でしたが、お二人も帰ってこられましたし、罠の迷宮も攻略されたとのこと、今日は祝宴と参りましょう!!」

「それはいいな」

「楽しみね!!」


 パンっとアレナが手を叩いて、これからまた祝宴を開いてくれるという。


 世界樹を治療した時と同じような飲み会なら大歓迎だ。


「よっしゃ、今日は飲むぞぉ!!」

「ぶっ倒れるまでいけるぜ!」

「今日こそは勝たせていただきますよ!!」

「あん?生意気言ってんじゃねぇぞ!!まだ若造に負けるかよ」


 それを聞いたエルフの連中も沸き立っている。


「にゃーん(どうしたの?)」

「大宴会だってさ」

「にゃおーん(やった!!楽しみ!!)」


 みんなの喜びようを見て俺に尋ねるイナホに答えてやると、その答えにイナホは歓喜して飛び跳ねた。


 うぉー!!可愛すぎてギュッとしたくなるぜ!!


 それから俺たちは一度個室に案内され、祝宴の準備が整うまでのんびりと過ごした。

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