第12話〈ダウジングパワー〉
海沿いの近く、開聞白黒の両手にはストローの様に曲がった針金の様な士柄武物が握られていた。
「確かこの辺りの筈……」
針金の先端に向けて歩き出す。
その動きを楽しそうに見ている開聞白黒。
「これぇ面白いねぇ~終わったら貰えないかなぁ?」
微々に動く士柄武物を気に入った様子だった。
にこやかな笑みを浮かべる道具小路薊は別に良いと言った表情だ。
「欲しいのならあげるけど……すぐ壊れちゃうよ?」
彼女の術式は所詮は劣化品である為に、神胤を放出して循環させ続ければ壊れてしまう。
「士柄武物、この道具が示す場所は、この森林の中、か……」
駒啼涙は、人気のない薄暗い森の先を見ながら言った。
夏場ではないが、それでも虫が多く居そうで、虫に刺されるかも知れないと思っている。
「虫よけの士柄武物でも作ろうか?」
「いいよ、士柄武物、あと一回しか作れないんでしょ?」
道具小路薊の術式は一日に数回しか発動出来ない。
調子が良ければ五つ程作れるが、本日の彼女は最大で三つしか作れない。
移動用の士柄武物、そして今、開聞白黒が持つダウジング型の士柄武物。
彼女が新しい士柄武物を作るのには、あと一回しか出来ないのだ。
「なにかあったら、私と、白黒くんがなんとかするから、薊は最後の手段」
「分かった。じゃあ、高みの見物、しちゃうね」
「じゃ~、そろそろいこっかぁ」
開聞白黒は森の中へと向かい出す。
その後ろを歩く様に、二人も一緒に行った。
森の中を歩いていると、ふと駒啼涙の傍に居た道具小路薊が彼女に声を掛ける。
「ねぇ、涙」
「うん?どうしたかの?」
「涙の人探しって、結局誰なのかな?」
彼女は、駒啼涙が誰を探しているのか、気になる様子でそう聞く。
「……先輩」
駒啼涙は、か細くそういった。
その言葉で、道具小路薊はそれが誰であるのか即座に理解した。
「ふぅん……」
つまらなさそうな表情を浮かべて、その話を終わらせる。
(長峡仁衛、さん、か)
そう心の内で呟いて、道具小路薊の内側から嫉妬が溢れ出していた。
(ずるいなぁ……想われるって、一人占めで……)
長峡仁衛に対して恨めしい感情を抱く。
ふと、開聞白黒は足を止めた。
二人は彼の止まる背中を見て、何があったのか不思議そうな顔を浮かべる。
「どうかしたの?」
「ん~?えっとねぇ~、人の気配がするんだぁ~」
呑気な声で言うと、ダウジングから手を零す。
直後、上空から、木の幹を下りながら地面に降下する。
ずどん、と音を立てながら地面に足を踏む、上半身が半裸な男が居た。
「よォ、……ん?あぁ?んだよ、小綿たちじゃねぇのか」
その男は、面識の無い三人ですら噂を聞いている。
「
遠賀蝶。
三年の中で最も強い祓ヰ師だった。
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