第3話〈戦闘終了〉
瓦礫の合間を縫って長峡仁衛は匣を複数出現させると、それを足場にして宙に浮く。
駒啼涙と、夜臼ぴょんの為に匣の足場を作り出して、長峡仁衛は周囲を探る。
探しているのは無論、ナースの厭穢だ。この技で負傷はしただろうが、それでも完全に核を破壊出来たワケじゃない。
はじけ飛んだ瓦礫が空に上がるが、限界に達すると共に地面に向けて落下する。
瓦礫に注意しながら長峡仁衛は匣を構えた。
「其処に居るな」
ナースの厭穢から発生する瘴気を長峡仁衛は感じ取った。
これ程に強力な厭穢ならば、長峡仁衛はそれを肌で感じる取る事が出来る。
匣を開き、士柄武物の刃物、その先端を向ける。
瓦礫が視界を遮っていて、その先に居るナースの姿が確認できないが、確実にそこに居るだろうと言う事だけは分かった。
「先輩ッ、後ろですッ」
そう叫ぶと同時に、瓦礫が全て落ちて、視界がクリアになったと同時に、其処に居た筈の厭穢が居なかったのを理解する。
長峡仁衛が感じ取ったのは、ナースの頭部だった。
その頭部から瘴気を感じ取ったが、しかし、厭穢の核は頭部には無かった。
「ッ」
駒啼涙の言葉を信じて後ろを振り向く。
まだ落ちている瓦礫の中から、ナースの厭穢が出ていた。
頭部のないナースの厭穢は、しかし長峡仁衛に腕を向けて伸ばしている。
そしてその腕が長峡仁衛の胸へと突っ込んだ。
心臓を鷲掴みにされるとそう思った長峡仁衛は人差し指と中指を突っ立てて、その先端をナースの厭穢に指さす。
(くれてやるッ!心臓一つ!)
長峡仁衛は相打ち覚悟でナースを確実に祓おうとした。
長峡仁衛の中に食い込むナースの腕。心臓に手を掛けられる寸前。
「先輩ッ、大丈夫です」
駒啼涙の能力が発動される。
「先程、先輩の心音を確認した時、心臓の隣に腫瘍の様なものを感じ取りました、その腫瘍は心臓と変わらない大きさで丁度ナースの厭穢が握っている部分にありますッ」
長峡仁衛はその言葉を信じた。
それによって駒啼涙の言葉、虚構は現実へと裏返る。
ナースは長峡仁衛の心臓を引き抜いた、そう思ったが、それは心臓じゃなかった。
大き目な腫瘍であり、長峡仁衛に痛みは走るものの、命に別状はない。
「装填、射出ッ」
そして、ナースの厭穢に向けて士柄武物を放出。
一つ、二つ、士柄武物がナースの体に突き刺さるが、更に第二射。第三射と、士柄武物を間髪入れずに射出し続けた。
そして、ナースの厭穢に刺さる士柄武物の何れかが、ナースの厭穢の核を傷つけたのだろう。
不規則に躯を蠢かすナースの厭穢は、瓦礫と共に落下して、地面に叩き付けられると、ぼふん、と激しい爆破の音を鳴らして、その肉体を四散した。
それで、終わりだった。
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