第1話〈合同任務〉



一年生と二年生の合同任務が行われる。

二年生一名と二年生二名の合計三名による任務だ。

これは、一年生に任務を経験させて、より早く実戦に慣れさせる為であり、二年生は一年生を指揮する事で、状況判断や命令能力を上げる為の訓練でもある。


「あ、水流迫」


長峡仁衛は同期の水流迫洸と出会う。


「あぁ、長峡か、お前も任務か?記憶喪失なのに?」


「ん、うん……一応は術式使えるようになったけど、普通、任務に参加させるかねぇ?」


「十中八九、嫌がらせだろうな。お前、昔から目を付けられていたしな」


「えぇ……俺、そんな悪い事したか?」


「術式が、な……それと、性格が悪いから早々に消してしまえと、そう聞いている」


「性格?俺、記憶を失う前はそんなに悪かったのか?」


「あー……まあ、俺から見ればお前は優等生エリートだ……多分」



長峡仁衛と水流迫洸は校門前で後輩たちを待っている。


「お前は夜臼と駒啼の面倒を見るんだな」


「ん?あー、そうだね。あの二人、駒啼とは知り合いだけど、もう片方は……」


よく知らない。と長峡仁衛が言おうとして水流迫洸は頷く。


「深い仲だから問題ないだろうな」


「え?それって………」


「……あー、いや。なんでもない。ところでお前は知ってるか?」


「何を?」


「俺が担当する後輩の事だ」


「後輩?……いや、知らないな」


それもそのはずだ。

長峡仁衛は記憶喪失であるのだから。

水流迫洸は頷いて、そうだろうな、と首を縦に振った。


「一人は、まあ俺たちに良く懐いてる後輩でな。名前は開聞かいもん白黒はくろ


「この男はいわゆる期待の新人と言う奴でな。駒啼、夜臼、開聞の三人を以て三叉槍さんさそうなどと呼ばれている」


「なんだか物騒な名前だな……強いのか?」


「その三人の中で断トツだろうな。中々の優等生だが」


「ふぅん」


長峡仁衛は何故こんな話をしてきたのか分からなかった。

しかし、それほどの後輩ならば、もう一人の後輩もすごい存在なのだろうと長峡仁衛は伺う。


「もう一人の方―――「よくぞ聞いた」


声を遮られた。

長峡仁衛は口を閉ざして水流迫洸の方を見つめる。


「もう一人は俺と言う存在を築いたお方でな、なんと俺の姉さんだ」


「姉さん?……後輩なんだろ?」


「ふっ、そういうだろう。姉さんは恐らく世界で唯一とも言える冷凍保存コールドスリープから目覚めた歴史的快挙を成し遂げた人でもある」


「へぇ……」


「肉体は五歳の時で止まり、俺が十二の時に姉さんは目覚めた。現在では成長し、九歳となっているが、法律上の年齢は十九歳。しかし能力的に俺たちと同等の力を持つ為に飛び級を行っており、現在はこの学園の後輩としての立ち位置を持っていてだな。肉体も精神も幼いがしかしお姉さんぶるのが特徴的で、言葉遣いや人を見下す態度は矯正するべき点ではあるが、それがまた姉さんの魅力となっていて」


「要約すると?」


「合法ロリの誕生だぁ……」


(この場合は合法と言うのだろうか?……明らかな違法じゃないのか?)


長峡仁衛はそう思うのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る