さくら
勝利だギューちゃん
第1話
さくらが好きだ。
でも、人混みは嫌いだ。
お花見をするのはいい。
でも、ゴミをまき散らすのは、許せない。
コロナの影響で、お花見を自粛する人は多い。
でも、常識の知らない人が多い。
なかには、ゴミを持ち帰る人もいるが、殆どは持ち帰らない。
そういう人の相手が面倒だ。
「よく、さくらも我慢しているな。」
そう思う。
今日も、さくらの下にはゴミが散乱している。
下手に文句を言っても、逆切れされる。
なので、僕は夜にゴミをかたずけている。
ゴミ袋をたくさん用意して、分別する。
人がいなくなる真夜中。
もう、何年になるだろう・・・
偽善かもしれない。
でも、やらない善よりはました。
せっせと・・・
もう少しの辛抱だからね、今年もありがとう。
そう言いながら、僕はゴミをかたずける。
「いつもありがとう」
どこからか、声がする。
「えっ?よんだ」
「うん。あなたの周りにいるよ」
ピンクの花が、風になびく。
「あなたのおかげで、私たちは我慢できてるわ」
「僕は何も・・・」
「あなたのような人がいる限り、私たちは咲き続けるわ」
さくらの木のひとつから、ひとりの女の子が出てきた。
「私は、さくらの精霊。」
「女の子なんだね」
「あなたの希望が具現化したんだ。その辺は男の子だね」
ほっといて。
「今日は、わたしたちが、あなたを楽しませてあげる」
「僕だけに」
「うん。他の人は入れない。私たちとあなただけの、お花見よ」
ピンクの色が、鮮やかになった気がする。
「何か食べる?飲む?」
さくらの精霊に訊かれる。
僕は首を横に振る」
「何もいらない。静かにお花見したい」
「そういうと、思った。じゃあ・・・」
女の子が、僕の腕を組んでくる。
「えっ?」
「じゃあ、今夜だけは、私があなたの恋人ね」
「贅沢な時間だね」
立ったまま、ふたりでさくらを見上げる。
次の日・・・
さくらは、葉桜と化していた。
地面にあるさくらの花びらが、「ありがとう」と読めた。
「また、来年来るから、それまで元気でね」
昨晩の女の子の声が、心に届いた。
さくら 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu
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