常にそばに
朝起きたら、枕元に違和感があった。
現代にいた頃と違って、何も置いてないはずだけど……と思いながら起き上がると、分かりやすくプレゼントです!というプレゼントが置かれていた。
「これは……」
外はもうしばらくの間寒くなっており、日も短くなっている。
冬だ。
冬の朝のプレゼントといえば……クリスマスというやつだろう。
そういえば、主人公たちにはサンタ衣装のDLCがあったんだっけ?
それでつまりこの世界にもクリスマスがあると断定するには早いけれど、私の心は高鳴っていた。
今の今まで、クリスマスのプレゼントをもらったことがなかったからだ。
いや、正確に言えばもらったことはあるのだがものは現金だったし、それは結局参考書に消えていったのでプレゼントだと認識していなかったというか……うん。
とにかく、こんな分かりやすいプレゼントはもらったことがなかった。だから、嬉しくて、興奮している。何が入っているのか、今すぐにでも確かめたくてしかたない。
しかし、これを置いたのは一体誰なんだろう?
やっぱりクライヴ……? だとしたら、お礼を言ってから開けるのが礼儀というやつだろう。そう思った私は、箱を持って部屋を出た。
「クライヴ!」
「どうしたの、ハイネ」
「あ、おはようございます」
「おはよう。……あぁ、サンタさんが来たのかい?」
「あ、えと、そう? なのかな?」
「そうだろう。良かったね。嬉しくて見せびらかしに来たのかい?」
「……はい」
お礼を言う雰囲気ではなくなってしまったので、私はひとまず頷いた。
なるほど。この世界にも、サンタはいるらしい。
というか、この世界だったら本物の……本物のというのもおかしいけれど、本当にプレゼントを配って回る存在がいてもおかしくはないのかもしれない。
その存在から子ども認定されたのは悔しがるべきなのか……いや、素直に嬉しかったのだから、私はまだ子どもなのだろう。
「……開けてみてもいいでしょうか?」
「もちろん。ハイネがもらったものなんだから、好きにしたらいいよ」
「はい……」
ビリビリと破っても良かったが、包み紙も綺麗で取っておきたかったから出来るだけ丁寧に開けた。白い箱から出てきたのは。
「……これは」
「マフラーだね。良かったね。これからもっと寒くなるから、外に出るときに身につけるといい」
「はい、そうします……ふふ」
「嬉しいかい?」
思わず笑みがこぼれてしまった。それを見るクライヴの顔も、どことなく穏やかな気がする。いや、最近のクライヴの顔はずっと穏やかだけど。
「……はい、嬉しいです」
本当に嬉しかった。
「ちなみに、僕からもプレゼントがあるよ」
「え、え?」
「はい、これ」
急に小さな箱を取り出されて、私は困惑する。
「わ、私はプレゼント用意してないです……」
「そんなこと気にしなくていいよ」
「気にします! 私だって、補佐官としてありえないくらいのお給金を貰えるようになったっていうのに……」
そうなのだ。名ばかりの補佐官なのに、本当にありえないくらいのお給金を貰っている。クライヴに住まわせてもらわせている分を渡そうとしても受け取ってもらえてないし……それなのにこういう機会で使えないっていうのは、心底もったいない気がする。
「じゃあ、後から買いに行こうよ。だから、受け取って?」
「わ……分かりました!」
そういうことならと、小さい箱を受け取った。
開けてみてよと促されるので、言われたとおりに開けてみる。
「これは……ブレスレットですか?」
「そうそう。常に身につけていても錆びない素材のものを選んだから、常に身につけておいてくれると嬉しいな」
「は、はい……」
クライヴのこういうところはちょっと怖いけど、私のためだと思うと嬉しくなってしまった。なんて単純な人間なんだろう。そりゃあまだまだ子どもだよねと、笑ってしまうのであった。
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