第44話 こんな所にヒドラなんて




 インして既に2時間ちょっとが経過、この狩り場に陣取って約1時間程度かな? 収穫は上々、何しろ敵の数だけはやたらと多いので。

 それにしても弓矢の練習に、飛び回る敵はピッタリですな……たまに崖に停まっている奴を狙うのだが、それが比例して途端に容易な的当てに思える不思議。

 動きが加わると難易度が上がる、逆もまた真なりってか。


 それはまぁいいや、とにかく経験値もドロップ品も割と集まって来て嬉しい悲鳴。ハーピーの羽根も風の水晶の欠片も、既に30個以上が鞄の中に入っている。

 それだけの戦闘をこなしたって事だ、そして師匠は魔石(微少)もなるべく集めるようにと仰っていた。これは何もハーピーだけが落とす訳ではない、現に今まで色んな敵が落としている。

 今回も、まぁちょろっとは集まったかな?


 ハーピーは断崖の高場に巣を作っているらしく、その真下には余り近付かない様にしないと危険度が増す。ついでに虹色の果実の生る樹も発見、後で回収しなくちゃね。

 ハーピーは3種類いるらしく、まずは普通の近接タイプ。これは近寄って来るまでは射撃の的だ、宙からトリッキーな技を繰り出すので近接では多少厄介だけど。

 一番多いタイプで、体力と攻撃力はゴブリンよりやや強い程度。


 それから風魔法を使う風ハーピー、これが結構厄介ではある。近接タイプと組まれると、前衛後衛で役割分担して来るのでこっちに被害が甚大なのだ。

 風の刃的な攻撃魔法も強力で、数が少ないのが幸いか。


 最後にもっと数の少ない、通称“歌ハーピー”がかなり凶悪な仕様である。ってか、それは既にセイレーンなのでは? 同じく、半人半鳥のモンスターではあるけど。

 セイレーンは半人半魚の場合もあるっけ、まぁゲーム的にはどちらでも構わないのか? とにかくコイツ、直接攻撃はしないけど歌での支援が半端無い。

 一度戦闘中に眠らされて、危うく死に掛けると言う顛末も。


 琴音ことねもパーティに支援役がいるといないでは、戦闘なり探索で大きく違って来るとか言ってたっけな。成る程体感してみて分かる、こんな戦い方もあるんだなぁ。

 単体では割とカモだ、いや半人半鳥だけどね……とにかく前衛なり風使いと組まれると、途端にその個性が際立って。味方の強化やこちらの弱体、弱体には睡眠や暗闇やスリップダメージなんてのもある。

 特に強化された風ハーピーの魔法攻撃、洒落にならないダメージに。


 連射されなかったのがせめてもの幸い、それから敵に近接がいなかったので即座にポーション瓶で回復も出来たし。こちらも攻撃魔法でお返し、悠長に弓矢の練習なんて言ってられない事態も時にはあるのだ。

 《スパーク》で麻痺させて地面に落とし、新しく覚えた《バーストタッチ》で止めを刺すと言う手順。《スパーク》に関しては、以前は受けた敵が怯んでいるなぁと思ってたけど。

 どうやらほんの少しだが、麻痺効果があったみたい。ただし、飛んでる敵にとっては“ほんの少し”が多大な効果になってしまう。

 取って良かった、雷魔法も伸ばそうかなぁ?


 それから闇魔法の《バーストタッチ》は、ドッペル君の使っていた至近距離のダメージ魔法だ。吹き飛ばし効果が付いているので、通常武器の追撃を前提にすると上手く回らないけれど。

 痺れて落ちて来たハーピーさん、落下ダメージも加わって割と体力を減らしてくれているので。しかも崖を滑り落ちる格好、そこに遠慮なく打ち込んでやるのだけど。

 ドッペル君に感謝する程度には、高ダメージを叩き出してくれる。


 新魔法の使い心地も試してはいたけど、大半は弓矢の練習台になって貰った半人半鳥のハーピーさん。女性の顔立ちのモンスターだけど、美人さんはいないのが残念な所だ。

 神話の中では、もっと薄汚い感じで伝わっているらしいけれども。このゲームでは、巣の周辺もそんなに汚れていないし生活環境も良さ気ではある。

 再ポップも早くて、変に討伐に手間取るとリンクして大変。


 ハーピーの感想はこの位かな……とにかくここでの俺の戦法は、弓矢の二連射⇒接近される⇒短槍に持ち替えて仕留める、ってな感じである。

 風ハーピー及び歌ハーピーは、やっぱり弓矢の撃ち込みから不味くなったら魔法にシフトして仕留める手順。何しろ向こうも距離を置くスタイル、殴ろうと思ったら大変なので。

 そんな感じで、過ごした1時間だったり。




 名前:ヤスケ   初心者Lv17   種族:ミックスB+


筋力 35(+6) 体力 38     HP 164(+16)

器用 36(+4) 敏捷 36(+4) MP 132

知力 26     精神 25(-4) SP 115

幸運 18(+12)魅力 8      スタミナ**


職業(2):『新米冒険者』Lv17

武器(5):《ブン回し》《落とし突き》《撃ち上げ花火》《二段突き》

      《Pハンマー》

補正(4):《投擲威力20%up》《防御力10%up》《》《》

冒険(4):『野生』『水中適正』『』『』

武器:弓矢3P

  :短剣1P

  :短槍12P《落とし突き》《捻り突き》《二段突き》

  :片手棍1P

  :両手棍12P《ブン回し》《撃ち上げ花火》《Pハンマー》

  :盾4P《防御力10%up》

  :投擲5P《投擲威力20%up》

魔法:『闇』12P《Dタッチ》《バグB》《Bタッチ》

  :『風』13P《風の茨》《風属性付与》《風疾り》

  :『光』4P《フラッシュ》

  :『水』13P《清き水》《水中呼吸》《Pヒール》

  :『炎』4P《キャノンB》

  :『雷』4P《スパーク》

種族:『ミックスB+』(職業+1、幸運+4、器用+2、魅力-2、全耐性+20%up)

称号:『蝶舞』『猪突』

モネー:103、400

スキルP:10



 ***『新米冒険者』ヤスケ 装備一覧***


武器 :海賊の短槍(6)  攻+10

武器2:蛙のハンマー(10)  攻+12、水耐性+20%up

予備 :護衛の弓(5)  攻+5

盾  :甲殻の手甲(4)  防+4

頭  :質素な帽子(5)  防+4

上着 :丈夫なベスト(8)  防+7

鎧  :護衛の胸当て(6)  防+6、器用+2

下着 :クールな下着(5)  防+1、耐寒+20%up

アクセ:幸運の御守り(2)  防+1、幸運+2

指輪1:清水の指輪(4)  耐毒30%up、ヒール効果20%up

指輪2:契約の指輪(-)  従者+3

腕  :野生の腕輪(4)  防+3、筋力+6、敏捷+2

ベルト:革の幅広ベルト(7)  防+5、ポーチ×4

下肢 :疾風のズボン(8)  防+7、敏捷+2

靴  :蛙のブーツ(8)  防+6、水耐性+30%up

背中 :海賊のマント(8)  防+7、敵対+2、魅力-2

従者:妖精Lv1  幸運+6、魅力+4、精神-4

鞄:魔法の鞄(初心者用)+商人の鞄

アイテム:ポーション(大)×2、ポーション(中)×8、ポーション(小)×20

    :マナポ(中)×7、マナポ×16、毒消し×8、マナP×8、Sポ×7

    :ポーションP×5、万能薬×3、炎の神酒×3、蜂蜜ジュース×3

    :土の術書、潤いの蜂蜜×7、闇の秘酒×3、聖水×3、薬品箱

    :虹色の果実×5、魔石(小)×9、魔石(中)×3、経験の飴玉×2

    :料理キット、冒険者セット、蟷螂の大鎌、護衛の腕輪、枝切り鋏

    :緋色の頭巾、闇の眼帯、護りの腕輪、海賊の大斧、調味料

    :魔除けの香炉、金のメダル×7、松脂1瓶、野生の手斧、蛙の王笏

    :巨大な大腿骨、幽霊の呼び水、大猪の牙の短槍、海賊のサーベル

    :闇の契約書、探索のコンパス、飛竜の血、闇蝙蝠の牙、闇蝙蝠の皮膜

    :旅人のマント、護衛の刀、庭師のエプロン《四段突き》《秋波斬り》

    :護衛の盾『隠密』『交友』『地図形成』、野生のサーベル、大猪の毛皮

    :初心冒険者の服・帽子・杖セット、魔法の腐葉土、銀葉樹の苗木

    :壊れやすい鉢、魔水連の球根×8、淡い水瓶、水妖の呼び水

    :森狼の毛皮、風の牙、時の狭間の香木×5、骨工ギルドの推薦状

    :奇妙な頭蓋骨、野蛮な大腿骨、三色珊瑚、白い甲羅、豹柄のマスク

    :『妖精使い』『精霊下請け人』『蝶舞軽戦士』『猪突戦士』水のマント

    :蛙の歌笛×7、憩いの香木×2、翡翠の指輪、翡翠の飾り

    :頑丈な木の蔦《マナプール》投擲セット、南瓜の呼び鈴

    :水切りの剣、耐魔の指輪、霧の呼び笛、硬質な木板



 そんな訳で、なんと素材集め中にレベルが17へと上がってしまいました。いやいや、経験の飴玉を使った甲斐もあったよね……それから恐らく、経験値アップ期間の恩恵もあったのだろう。

 とにかく久々に充実した時間を過ごせたような、つまりは戦闘に関してはであるけど。連続した戦闘は、敵が枯れないこの狩り場の賜物でもあったかな。

 師匠に頼まれていた素材も割と集まったし、切りが良いからいったん休憩しよう。


 それにしても、今回も割と突っ込み所が満載だなぁ……特に職業スロットが増えたのとか、幸運値がとうとう補正込みで30の大台に乗っちゃった事とか。

 はい、どっちも『混血の書』を使用した効果だったりします。


 ドッペル君の落とした用途不明の書物は、どうやらアバターの種族を『ミックスB』から『ミックスB+』にしてくれた模様。その結果、色々と補正値に変化が起きて。

 職業スロットが増えたり、幸運度が上昇したり……後は魅力値が下がったり。他にも、耐性値の上昇は素直に有り難いかな。全体的には大きなパワーアップな筈。

 分身のドロップは、それ程に凄まじかった訳ですね、ハイ。


 他にも奴の落とした両手棍スキルの《Pハンマー》と闇魔法の《Bタッチ》も相当な破壊力を秘めていた。思わずスキルを注ぎ込んで、両方とも取得する程度には。

 《Pハンマー》はSP20と重いが、その分攻撃力も通常の倍近く跳ね上がる凄まじさ。止めの一撃に持って来いだ、そして《撃ち上げ花火》との相性も良い筈。

 未だに試せてないけど、この連続技が決まるとかなり凄いに違いない。


 《Bタッチ》もMP24も使うので、ホイホイ連続しては使えない大技の部類に入ってしまう。ただし威力は折り紙つき、しかも吹き飛ばし効果まで付いている。

 射程は《Dタッチ》と同じく、かなり短いんだけどね? これがこの魔法の唯一の弱点かなぁ、MPコストに見合ったダメージ魔法だけに、残念でならない。

 まぁ使うけどね、詠唱時間も短いし使い勝手は抜群だし。


 他に報告と言えば、弓矢スキルがまたまた1P生えて来た事かな? 今日も1時間練習したし、この南の崖路でもたっぷり修練したし、そう思えば順調です。

 あと1P上がれば、自然にスキル技を覚えてしまうと言うこのお得感。何だろう、ここまで来たらそれに期待してしまう自分がいる。

 うん、明日も特訓を頑張ろう!


 冒険スキルの『水中適正』は、水の中でも移動力低下などのバッドステータスを受けないと言う、場所を選びまくるスキルである。要するに、水の中でしか効果は発揮されない。

 それでも水魔法の《水中呼吸》と合わせると、水の中では敵無しだな……いやいや、そんな事は無いか。他の冒険者とは差が開くだろうけど。

 水棲モンスターとは、普通にガチバトルになっちゃう筈。


 それも面白そうだが、敢えてこの崖を降りて海に入ろうとか思わないな。崖が急過ぎて、上がって来れるかが不安だし。道の途中で崖崩れが数か所起きてて、そこを無理すれば登れそうだけど。

 それより、『野生』の効果で筋力と敏捷値の伸びが半端無い。最初は体力ばかり、称号『猪突』のお陰で目立っていたステだったけど。今ではそれに並ぶ勢い、モロ前衛風味な感じ。

 それはそれで良いと思う、魔法は主力にならなくても困らないし。


 宝珠のお陰で、念願の回復魔法《パワーヒール》も取得出来たしね。MP消費は21と重いし、詠唱も割と長いので使い勝手に関してはあまり良くないけど。

 戦闘中にも条件付きで使える回復魔法は、恐らく重宝する事だろう。




 今は道端の広場に陣取っていて、ファーと一緒に休憩中だ。昨日の残りのスイーツを一緒に分け合って、スタミナ回復とのんびり寛ぎタイム。

 休憩前に、ファーに海側の崖をちょっとだけ探索して貰ったけれど。残念ながら、秘密の洞窟とかその類いの隠しダンジョンは全く無かったとの報告。

 まぁ、そんなにホイホイと見付かるとも思ってなかったけど。


 それにNMなら、既に発見している……何と虹色の果実の樹の下で、悠々自適に周囲を睥睨へいげいしていたのだ。初めて見たけど大きいな、ヒドラって。

 師匠の言っていた湖では結局出遭わなかったけど、こんな所でどくろを巻いているなんてね。しかも4本首だ、NMだけあって大物だなぁ。

 実は果実もNMも、割と最初に発見には至ってたんだけど。


 師匠のクエと、ついでにレベル上げを優先した次第。放置プレイで、相手もさぞや苛ついているとは思うけど。そうでも無いかな、どちらにせよ果実取りは決行させて貰う予定。

 もう既に目標の5個は集まってるんだけどね、物のついでだから頂いて行くつもり。色々とスキルを取得したから、スキルPも補充したいし。

 本音はそんな所だ、つまりは大人しく倒されろ。


 そんな訳で休憩も終わって、この辺で唯一緩やかな斜面にてアタック開始だ。緩やかと言っても途中まで、果実の樹の灌木地帯の先はちょっと登れそうもない急斜面。

 灌木地帯も足場が悪そうで、闘うには不利な気もするけど。幸いヒドラNMを恐れてか、その地帯にはハーピーは近寄ろうとはしていない。

 つまりはサシだ、燃えるシチュエーション。


 相手は俺の接近に気付いている様子、活きの良い獲物を見付けてテンションアップの臨戦態勢。4本の鎌首が、自在に動いてこちらを待ち構えている。

 こちらは両手棍の蛙のハンマーを手に、範囲攻撃をする気満々である。相手は4本の首が、それぞれ別の動きで攻撃をして来る感じっぽいので。

 こっちはそれを、片っ端から叩き返してやる所存。それにしてもデカいな、近付くとそれがハッキリと分かる。体力も高そうだし、攻撃手段が4個もある強敵には間違いない。

 その読みは大当たり、とにかくタフな相手だった。


 それに加えて、変幻自在な左右上下からの噛み付き攻撃。ブレスこそ無いけど、あってもおかしくは無いと一応警戒はしている。

 こっちは《ブン回し》の範囲攻撃を主軸に、とにかく惑わされずにするので精いっぱい。ヒドラの一撃は強力で、ダメージの蓄積は侮れない勢いだけど。

 幸い《Dタッチ》のHP吸収で、何とかやれてる感じである。


 ポーションパウダーも1度使ったけどね、回復魔法の《パワーヒール》は、詠唱が長くて簡単に潰されてしまった。何しろ相手は4連撃、詠唱の長さは致命的である。

 そして4首ヒドラのHPは、まだ3割程度しか減っていないと言う……コイツは驚異の回復能力持ちみたいである、攻撃の手を休めたらあっという間に回復してしまう卑怯なスキル。

 俺も欲しいな、体力は文字通りに生命線だもの。


 こちらの攻撃力が相手より完全に上回っていて、一度の先制攻撃で終わりってのなら話は別だけど。攻撃の遣り取りをしてしまうと、先に生命力の尽きた方が負けになるのは当然の摂理。

 つまりは体力の差だ、それに回復力が加われば尚良い感じになるのは間違いない。そう思うと、回復魔法はもっと初級の《ヒール》程度でも良かったのかも?

 あれだと恐らく、そんな詠唱が長いって事は無い筈である。


 回復力の少なさは当然だけど、そもそも現状の俺のHPも絶大にあるって訳じゃ無いし。大は小を兼ねるって言うけど、魔法の呪文的には当てまらなかった様子。

 戦闘中に使うのが前提だと、MP消費や詠唱時間も大きな問題になって来る。


 そしてなかなか体力の減らないヒドラ君、ついでに首の数も減ってないので攻撃数も4のまま。これは範囲でちまちまやるより、1本に攻撃を集中させた方が良いのだろうか?

 物は試しだ、急きょの作戦変更も両手棍はまかなってくれる頼もしさ! そして《撃ち上げ花火》からの《Pハンマー》で、左端のヒドラの首を追い落としに掛かってみるけど。

 これでいいのかな、首1本ずつ単体扱いされてるのか?


 されていたみたいだ、トドメにと《バーストタッチ》を撃ち込んだ左端の鎌首が、吹っ飛んだまま動かなくなってくれた。右端の奴は未だ盲目状態だが、熱感知か何かで攻撃はして来ている。

 ただし狙いは割とあやふやなので、凌げてはいる感じ。巨体だけにどいつも攻撃速度は速くない、一度何とかやり過ごせばこちらのターンではあるものの。

 4つの首がフル活動だと、その弱点が見事に緩和されるのだ。


 とにかくこちらの目論見は一部だけ成功、攻撃の数を4⇒3に減らしたけど、残りの首が激高する事態に。そしてやっぱりあった《毒のブレス》や《テールウィップ》の特殊技。

 たちまちこちらも被害甚大、慌ててファーが樹の下に置いててくれたポーション瓶へと飛び込んで行く。その巨体ゆえ、余り迅速には動けない4本首ヒドラ。

 ついでに毒消し薬もイケるかな、よっし回復オッケー♪


 こちらの体力はほぼ満タンに回復、対するヒドラは首1本が戦闘不能で現在“暴虐ぼうぎゃく”状態。凄まじい暴れっぷりだが、それを受ける俺が範囲外と言うね。

 ってか、急に突進して来た! 移動力を侮って、いきなり手痛いダメージを受けてしまった。お返しの打撃と《フラッシュ》の目潰し魔法、ヤバいな強化魔法がそろそろ切れてしまう。

 《風の茨》で、果たして時間稼ぎは可能だろうか。


 無理でした、ってか大暴れで自己ダメージお構いなしの各首の対処ってナニ? それならもう1本、連続スキル技で首を落としてしまおうか。

 こちらの対処も至極当然、そして再びトドメの《Bタッチ》が凄く良い調子である。何気にダメージの高い魔法だ、これでもう少しでも射程が長ければなぁ。

 そんな訳で、2本目の首も項垂うなだれて作動不能に。


 どうやら本体のHPも、それに伴って半減以下に突入した模様。ハイパー化は凄まじい勢い、残った首の同時の《毒のブレス》はかわす事も不可能な広範囲振り。

 だったらこちらも退かず媚びず省みず、とにかく突き進んで『猪突』込みの打撃を振るうのみ! ってか《毒の沼地》って特殊技で、いつの間にか足元に酷い泥濘ぬかるみが出来ているっ!?

 いや、こちらは『水中適正』持ちなので関係ないけどね?


 ヒドラ君の首の本数が減ったのと、大振りが目立つようになったお陰で隙も大いに増えて来た。その分、毒の沼地の継続ダメージは割と酷いけど。

 この沼地を抜け出しても敵は追って来るだろうし、敢えてここは近接維持で。逆に取り出した氷の水晶玉で、嫌がらせの範囲ダメージを与えてやる。

 意外に効いているどころか、動きも鈍くなって来た?


 その隙を逃さず、改めて自己強化魔法の掛け直し……ついでに未使用だった、炎の神酒しんしゅも試してみようか。強化魔法と重複出来るか、前から疑問だったんだよね。

 本邦初の3段強化、つまりは《風属性付与》と《炎テンション》+炎の神酒の攻撃力アップ効果での打撃を喰らえ! うおっ、なかなかに凄いじゃないか、スキル技並みの一撃とか。

 これは良いかも、ストックが少なくて使うの躊躇ちゅうちょしてたけど。


 もっとあれば強敵相手の戦闘が楽になる筈、これでスキル技をつかうと果たしてどうなるやら……やってみよう、そしてその結果は物凄いダメージだった!!

 ナニコレ、ちょっと凄過ぎなんですけど? さっきまでヒドラの再生能力に文句を言ってたけど、今はこのドーピング薬に脅威を感じている始末である。

 ちょっと自粛じしゅくしたいけど、残る首は既にあと1本。


 そしてソイツのブレスを物ともせず、物凄く勢いのついた《撃ち上げ花火》で最後の鎌首はご臨終の憂き目に。いや凄かった……用途としては、本当に奥の手級だなぁ。

 音を立てて崩れ落ちるヒドラを見上げつつ、ドロップ報告が淡々と続いて行く。まずはスキル4Pと、魔石(中)のセット。大物だけに、魔石も普段より大きくなってますな。

 スキルPも、いつもより多く頂いて戦った甲斐もあったと言うモノ。


 それから今回は、素材系が割と充実している感じ。『ヒドラの鱗』と『ヒドラの牙』は、どうも骨素材らしい。そう言えば、骨素材は鞄の中にゴロゴロしてるなぁ。

 そっちを目指すべきなのかな、でも木工の魅力は捨てがたい。ってか、師匠に教えて貰う約束を取り付けてるし、今更辞めるなんて絶対に言えないし。

 掛け持ちとかも可能なのかな、それなら考えるけど。


 ついでに残りのドロップ報告、『宝飾の片手剣』は、文字通り飾り多寡の装飾品みたいだ。つまりは戦闘用ってより、売ってお金にしろって事なのかな。

 一応攻撃力のデータはあるけど、耐久値は1とか酷過ぎる。使用に耐えないって、まさにこの武器の事だろう。まぁ売れば、とってもお金にはなりそうなので良いけど。

 そして最後の1個が酷かった、って言うか罠だった!





 ――死肉喰らいの呼び水(入手不可能)って、一体どうすれば??






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