第34話 やんちゃな面々
日曜日のスケジュールだけど、暇な午前中に妹達との語らい&琴音の部屋で、1時間の『ミクブラ』ログイン。それから午後は喫茶店のバイトを5時間ほど。
夕方に解放されて、そこから恒例会が待っている。
小学校時代からのやんちゃな幼馴染たちと、集まっての夕食会である。中学校までは一緒だったのだが、高校からはそれぞれの道に進み始めて。
こんな定例行事でもないと、滅多に顔を見れなくなってしまって。そんな訳で毎週の日曜日に、こうやって夕食を一緒に食べる会が誕生した訳だ。
特に妹連合は、男たち以上に仲が良いからなぁ。
ちなみに妹連合は
それに高校生の琴音を加えて、女子連合は何故か結構結束が高い。男衆は逆に基本自由だ、高校が別々になってからその傾向も強くなっている。
それを妹連合+琴音が、上手く
この週1回のご飯会も、まさにそんな思惑から開催されるようになったのだろう。計画の立案は、やはり琴音を中心とする妹連合がメインとなっていて。
内容はだいたいがご飯会みたいなアバウトな感じで、ゲームをやっている連中からすればオフ会みたいなモノなのかも知れない。俺と妹たちは、その会話には混じれないけど。
そのせいもあって、以前からゲーム参加を何度も勧められていた訳だ。
今回の賞金付き限定イベントの参加は、ある意味その勧誘に根負けした側面もある。本当は楓恋と杏月だけが除け者になってしまうので、避けたかったパターンではあるんだけど。
琴音の機嫌をあれ以上損ねても、後が怖いとの打算も働いてしまって。ただこんな憂いも、どうやら琴音の祖父の思わぬ助け舟で解消されそうな感じだ。
今週末にも、家の方に筐体を届けるって言ってくれてたし。
本当に有り難い申し出だが、そう言えば肝心の妹たちにゲーム参加の意思を訊いて無かったな……俺と一緒にやるのなら、有無を言わさず限定イベントサーバになっちゃうし。
それだと初心者にはかなり辛いかも。何しろ初っ端からソロエリアだし、それをクリアしても過酷なPK騒ぎの街エリアが待っているとの話だし。
どうしたもんかね、まぁ本人たちの希望を聞くのが先か。
琴音の話によると、今日の恒例会のメインは何故か“ぜんざいパーティ”らしい。理由を問うたら、どうも“市川商店”に売れ残り在庫が大量にあったからとの事。
それを商店の跡取り息子である
俺たちの集まりは、大体そんな感じが多いんだよね。
俺はバイトがあるので、その集会の計画も準備すらにも参加はしていない。
完全に女子チームの主導で、日曜のこの集まりは催されている訳だけど。男衆も面倒臭いと文句を言うほどでは無い感じ、何しろ胃袋をガシッと掴まれているので。
要するに日曜の夕食会だ、美味しいモノを食べるのに文句など無い。
バイトもつつがなく終わり、俺は美樹也の家へと向かう。昨日は琴音と妹たちが迎えに来てくれたが、今日は夕食準備に既に会場入りしているみたいだ。
会場と言っても、つまりは市川商店の裏庭なんだけどね。美樹也の家はアイツの祖父母の時代から、この町の商店街で商店を営んでいて。
いわゆる老舗だ、まぁ古臭いだけだけど。
八百屋に近い生鮮食品を扱うお店だけど、スーパーみたいにその他の食品も扱っている。市川兄妹も、真面目に家の手伝いを子供の頃からこなしているし。
俺の家も古くから、食材の購入にお世話になっている。もちろん最近のご時世に漏れず、駅前に大きなスーパーは何件か建っているのだけれど。
商店街だって良いモノだ、顔見知りには値引きやオマケをしてくれるし。
安心感があるし、何より美樹也は幼馴染だからね。それから妙な使命感も、生まれ育った街の商店街を廃れさせたくは無いと言うね。
そんな市川商店のお店の裏側、お店と倉庫の細い通路を抜けた裏庭に、美樹也専用の離れプレハブ部屋がある。高校入学と共に親に譲ってもらった、物置を改築した離れ部屋である。
俺と京悟も、この部屋の改築は手伝った経緯がある。
改装はなかなか面白かったし、その分愛着もあったりして。そんな訳で俺も京悟も、ちょくちょくこのプレハブ小屋には遊びに行っている。
そして皆で集まる時にも、この美樹也の部屋の裏庭スペースは都合が良い程度には広々としていて。キャンプ用のコンロやらテントやらを持ち寄って、食事会によく利用している。
今日もそんな感じで、既にみんな集まっている筈。
琴音に一応、喫茶店を出る前にラインで報告しておいたけど。もう始まってるから早く来て! との返信が、ほんの数瞬で帰って来た。
もう始まっているらしい、みんな食いしん坊だから仕方が無いのかな。俺もマスターに差し入れを貰ってるし、このから揚げも確実に喜ばれるに違いない。
特に食い意地の汚い、男衆には絶大なパワーを発揮するのは確実。
一生懸命働いたので、それなりに腹は減っているけど……今日も休憩時間に賄いを出して貰ったので、そこまで性急な空腹感は無い。
日曜のバイト後は、だいたいいつもこんな感じだ。俺は急ぐでもなく、商店街方面へと歩みを向ける。いつも歩いている道なので、考え事をしていても全然平気だ。
今日も良く働いたな、明日からは普通に学業に従事する生活が始まる訳だ。
考えてみれば、俺が『ミクブラ』を始めて夕食会に出るのは、今晩が初めてなんだよな。最近の悪友とのライン会話では、何度も触れられる旬のネタではあるけど。
どうも俺のゲーム結果報告を、2人には勘違いとかネタ認定で再々スルーされてしまうのが
それについても、直接文句を言いたいよな。
市川商店の裏庭、つまりは美樹也のプレハブ小屋の前はいつもの賑やかさを保っていた。主に女性陣が楽しげに作業に勤しんでおり、あれやこれやの賑やかな会話振りが俺の耳に届いて来る。
男性陣、つまりは京悟と美樹也はプレハブ小屋の開け放した縁側部分に腰掛けて談話中の様子。夕食の準備は女性陣が仕切っているので、奴らは蚊帳の外っぽい。
向こうもこっちを見付けて、ハイテンションで話し掛けて来た。
「恭ちゃん、やっと来た! ご飯の用意出来てるよ、メインのぜんざいはちょっと待ってね!」
「お兄ちゃん、お疲れ様! お握り持ってって~」
「おうっ、これ喫茶店のマスターから差し入れな」
琴音と杏月の言葉に、俺も差し入れを手渡しながら対応。袋の中身を気にして、庭の奥から京悟がせっかちにも声を掛けて来ている。
それをまるっと無視して、京悟の妹の明日香が俺から受け取った差し入れをお皿へと盛り付けて行く。しかし夕ご飯のメインがぜんざいって……いや、文句は言うまい。
俺はそそくさと、杏月からお握りと沢庵の乗ったお皿を受け取る。
中庭はどこかの子供会の集まりのよう、長机が用意されていてそこに夕食が並んでいる。大皿に並べられたお握りは、それぞれ形が違っていて愛嬌がある。
野外用コンロでは、大鍋が火にかけられている。その隣では、何故か七輪が用意されていて、白いお餅が並べられて網の上で焼かれていた。
楽しそうに火の番をしているのは、妹の楓恋である。
「……余り物を、ほぼ無料で買い取った感じだから。文句は言わないで、お兄ちゃん」
「あら、恭輔さんはそんな狭量じゃないですよね? 私の兄は、凄いぶー垂れてましたけど。その代わり、今日の会費はたった200円ですよっ!」
「そりゃあ安くて助かるな、京悟は甘いの苦手だからな……芽衣もぶー垂れてる口か?」
「なによっ、放っといてよ! 差し入れ持ってきたからって、偉そうにしないでよねっ!?」
丁寧な物言いの明日香に較べて、美樹也の妹の芽衣はいつもこんな感じである。産まれた時から反抗期と言われる
ガラの悪さは京悟と張るが、女性陣の間では割と素直らしい。って言うか、ひたすら我を通す琴音や、品の良い明日香には強く憧れているらしく。
それからサポート体質の楓恋には、とにかく頭が上がらないみたい。
芽衣は女版京悟みたいな奴で、頭のつくりも残念な部類に入る。それを女性陣、とくに楓恋がカバーしているようで、まぁそんな弱みがストレスとなっているのか。
男性陣、特に兄の美樹也や俺に対する当たりは強い気が。それなら彼女と似た気質の京悟には、似た者同士で怨念に近い憎悪が向けられているかと思いきや。
何故か一番懐いているみたい、俺は納得いってないけど。
その京悟の妹の明日香は、兄とは大違いの品の良さも持つ可憐な少女である。白い肌にストレートの黒髪、一見したら育ちの良いどこかのお嬢様然とした容貌を持っていて。
お淑やかに見えて、実は子供の頃に兄と通った道場にガッツリ
琴音に言わせれば、頼りになる右腕的存在なのだそうで。
琴音に誘われてゲームを始めたのは、東雲兄妹も市川兄妹も同様ではあるものの。プレイスタイルには個性が出るようで、まとめ役を務めている琴音も苦労している様子。
限定イベントに俺も参加を決め込んで、現役プレイ組も盛り上がってはいるようだ。とは言っても、始めたばかりの素人の俺に、期待に添えるような活躍が出来得るものかは神のみぞ知るところ。
その辺も含めて、今夜は話し合いたいと思っている。
「お前の妹に噛み付かれたぞ、美樹也! 京悟、座る場所開けてくれ」
「……あれでも店じゃ、客受けは良いんだ」
「なははっ、思いっ切りネコ被ってんじゃん……まぁ、見た目は可愛いからな、芽衣は」
京悟の隣に座りながら、他愛ない会話をしながら俺はお握りを頬張り始める。実際、美樹也の妹の芽衣は、気は強そうだが整った顔立ちで客受けが良いのも頷ける。
市川兄妹は、兄の美樹也の方も涼やかな感じのイケメンである。浅黒い肌にやや彫りの深い顔立ち、長いまつ毛に広い肩幅……中学時代はモテていたが、本人には自覚が無いと言う。
勿体ない話ではある、しかも高校は男子校だし。
京悟の方は、見た目からしてヤンチャ感と言うかヤンキー感が凄い。金髪に染めようとしたのを押しとどめ、何とか茶髪で現在はキープしているけど。
主に俺の踏ん張りで、それ以上のヤンキー化は今の所は防げている。コイツもバイトを掛け持ちしていて、暴れるのはバーチャ世界だけとの約束は守られている様子。
見た目に反して、激情型だけど素直で良い奴だと俺は思っている。
「それより色々と話し合う必要があるな……賞金の分配方法とか、向こうでの集合方法とかアバターの成長方針とか。……琴音は、ギルマス職を恭輔に譲るつもりだと言ってたな。
お前の方が仕切るの上手いから、俺や京悟に文句は無いぞ?」
「賞金の分配方法って、気が早いと言うか獲る気満々だな……まぁいいや、ってか俺はこのゲーム初心者だって分かって言ってるのか?
ギルマスどころか、自分の事で手一杯なんだけどな……」
「琴音にキャンキャン言われるより数倍マシだろ、それより琴音が進路のことも踏まえてしっかり考えろってさ!
オレら頭悪いじゃん、恭輔が会社立ち上げてオレらを雇うってのが、一番理想的じゃん?」
凄い事考えてるな、琴音が悪知恵を吹き込んだにしても、こちらへの丸投げ感が酷い。でもまぁ、俺たちの中での役割分担は子供の頃からの時間の中で出来上がってしまってもいるし。
つまりは考えるのは成績の良い俺や琴音で、身体を動かすのは京悟や美樹也と言う。バーチャ世界でも概ね、こんな方式で成り立っているらしい。
何にせよ、ようやくゲーム仲間に引きずり込めたと2人の喜びようは半端では無い。こっちも相談があるのに、ゲームの濃い話を始めようとする始末。
まぁ、現実の会社立ち上げ話を延々とされても困るけど。
取り敢えずは、今晩の内に決めてしまいたい事が幾つかある訳で。それだけでも一応は、皆の周知として決定しておきたい。賞金の分配云々は、まぁ半分以上は冗談としてもだ。
……いや、この際だから最初の内に決めておくのも良い案なのかも知れない。せっかく議題として出たのだし、後でお金の問題で揉めるのも莫迦らしい。
例え賞金を取るのが、果てしなく低い確率だとしてでも。
おっと、その前に……俺の妹たちの参戦問題もあるよな。琴音の爺様から、今週末に配達物が到着すると連絡があったので、俺達兄妹3人分の筐体が揃うのは確定の事実。
後は妹の楓恋と杏月の意思を確認して、ベテラン勢が受け入れてくれるかの有無を問わなければ。丁度渡されたお握りを食べ終わったのを見て、楓恋がおかわりを持って来てくれたので。
杏月にも声を掛けて、我が家族集合で即席会議スタート。
「実はな、琴音の爺様にゲームの筐体を買って貰える事になって、それでお前たちもゲーム出来る環境が整っちゃうんだ。あっ、ゲームってのは俺もみんなもやってる戦闘アリのバーチャネットゲームな?
んで、どうせなら一緒に懸賞付きサーバやってみないかって話なんだけど……」
「ほあぉ~~!? 凄い、これで置いてけぼり感を味わなくて済むねっ、楓恋ちゃん!?」
「まぁそうだけど……それって、年齢制限とか無かったんだっけ? ゲーム始めるとしたら、みんなでグループ組んで遊ぶの?
私たち思いっ切り初心者だし、足手纏いにならないかな?」
「おおっ、2人も『ミクブラ』始めるんだ……俺らも妹たちも大歓迎だぜ! なっ、明日香……!?」
もちろんですとも返答は、京悟の妹の明日香から。それを訊いて、琴音がダッシュでこちらに突っ込んで来た。焼いてたお餅を放置とは、これはハイパーモード突入かっ!?
しまった、先に琴音に話を通しておくべきだったか。案の定ウチのお爺が何したのよと、要約すると俺が琴音の部屋からログインをしなくなる事への不満らしい。
とは言え、連日ゲームのために女性の部屋に参るのは色々と不味いし。
イン時間も限られてくるし、何より世間体も宜しくない。聞く所によると、京悟も美樹也も夜の遅い時間に兄妹でインするのが習慣らしいので。
時間を合わせようと思ったら、夜更け過ぎに琴音の部屋に行く破目になってしまう。さすがにそれは無理だろうと、何とか理性を取り戻すように琴音を説得に尽力するも。
いつもの如く、幼馴染の我儘理論は暴走気味で納得して貰えず。
それからは周囲の加勢も手伝って、何か訳の分からない条件でようやく集約に。つまりは俺が悪いのだから、今後琴音の我が儘条件も絶対に従うように的な。
ちょっと待て、どうして俺が全面敗訴な流れになってる……? 琴音の暴虐の人身御供に差し出されるのは、確かにこれが初めてではないけれど。
納得は行かないが、まぁ致し方ないと思う他無いみたい。
結局は次の休みに2人切りでお出掛けする事で、どうやら手打ちとなったっぽい。釈然としないけど、こちらも筐体の入手とログイン先の変更を黙っていた引け目もあるし。
まぁ、確かに琴音がゴネるかなぁと一抹の不安があって、避けていた話題だったんだけど。この程度の刑で済んで良かったと思おう、特に実害も無かったし。
それよりその後の、様々な取り決めの決定のはやい事!
分配は取り敢えず、順当に頭割りで決定した。リーダー手当てどうすると振られたけど、こちらは初心者兄妹3人での参加だし、受け取る程の活躍が出来るとも思わない。
そもそも賞金に手が届くとも思わないが、それは口には出さない事にして。妹たちに関しては、最初の合流の関係で『人間』族か『妖精』族で始めるのが条件らしい。
他の種族でも良いが、それだと俺との合流が遅れるっぽい。
京悟や美樹也とその妹たちも、初心者の楓恋と杏月の面倒は見てくれると請負ってくれたものの。イン時間が違ってくれば、それも不可能となってしまうので。
なるべくなら、俺と一緒の時間に調整してインからの冒険が望ましいとの事。そういう微妙な時間調整は、家族での方がやり易いだろうとのアドバイスである。
それから後は、パーティ人数的な問題もあるらしい。
つまりは京悟と美樹也と明日香と芽衣で、4人パーティが出来上がっていて。俺と琴音を合わせると、綺麗に上限の6人で行動に支障は無い筈だったんだけど。
プラス2人となると、4人パーティ2組の方が今後動き易いとの判断である。こちらの方が初心者3人と大変だけど、妹たちも俺と一緒の方が安心出来るだろうとの判断である。
こちらもそれに否は無いし、妹たちもその案で了承してくれた。
市川兄妹と東雲兄妹は、普段のイン時間は10時前後と割と遅い時間らしい。美樹也と芽衣は店の手伝いもあるし、京悟もバイトをしている手前。
放課後は予定も合わないのは当然かも、今後は俺達がそちらに合わせる工夫もしないと駄目かも。他にも色々、細かい計画を煮詰めて行って。
2つのパーティが合流するまで、各々で頑張って行く事に。
お互いのゲームの近況も報告し合って、その後の行動の指針も述べ合って。向こうは京悟と美樹也が『魔』族で始めて、『獣人』族の明日香と芽衣を迎えに行っている最中らしい。
今後の主要な活動は、今いる中間の街“ベルベス”でするらしいのだが。PKやら何やらで不穏な状況、後衛ベースの妹たちの安全は最大限に考慮するとの事。
なるほど、紳士として俺も見習わなくては。
「それじゃあ俺も、早目に琴音と合流しなくちゃなぁ……ってか、俺も強力なレア種に遭遇したりで死にそうな目に遭ってるんだけど。
あんまり人の心配してる暇は無いけど、スキルPとか報酬の入りは良いんだよなぁ。出来ればもう少し、始まりの森で冒険したいよな」
「恭ちゃんはそれでいいんじゃないかな……こっちは元サーバの知り合いの女の子いたから、暫くは一緒に行動しようって事になってるから。
3人パーティだからちょっと不安だけど、危ない場所に近付かなければ何とでもなるし」
「明日香と芽衣も、始まりの街で2人パーティだけど不便は無いって言ってたぞ。もっとも、街ごとにPKや裏街の勢力の強弱はあるだろうけどな。
俺ら魔族の街の裏の住人は、割と大人しかったよな、ミッキー?」
そうだなと答えたミッキー、もとい美樹也は何となく渋い顔。アバター名を呼ばれて照れているのかも知れないが、元々口数の少ない奴なので敢えてスルー。
向こうはもうすぐ、4人が合流して安泰のパーティ編成になるらしい。そこからレベル上げなり冒険者ランク? なるモノを上げるなり、とにかく活動に打って出るとの事で。
それで余裕が出来れば、こちらを迎えに来てくれるそうな。
なかなかに面倒臭いが、街間の移動が危険な上に時間も程々に掛かるそうなので。万全を期して臨まなければ、危うい目に遭う確率も高いそうなのだ。
お前の心配はお前がしろと、つれない返事の京悟はともかくとして。互いの通信の手筈だけは整えようと、建設的な美樹也の意見に。
琴音もそうだねと、フレ申請を互いに出そうと提案する。
今までそれが出来なかったのは、ひとえにイン時間のちぐはぐさによるものが原因らしい。つまり同一時間内に相手がいなければ、フレ申請は出来ないみたいで。
本当は同一場所の方が望ましいのだが、この限定サーバは初っ端がソロエリアと言う極悪仕様なので。イン時間が同じなら、名前を調べてフレ申請を飛ばせるらしい。
琴音もそうやって、俺とフレ登録を初日に結んだ模様。
今の所フレ登録から出来る事は、メールの遣り取りのみだけらしくって。それだとやはり、イン時間が一緒じゃないとあまり有効活用は出来ないみたい。
とにかくチームとしての方針は、各々が力をつけて中間の街以降の街で合流する事に決まった。それから今週内にイン時間を合わせて、フレ登録作業を行うと。
琴音の仕切りで、ポンポンとそんな流れが決まって行く。
俺たち男性陣は、差し出されたぜんざいを食べながらそれを聞いているだけ。俺がリーダーと言う話だが、事前ミーティングでは用無しらしい。
文句は全然無いのだが、ついでにゲーム内でも琴音が仕切った方が話は早い気が。サブリーダーの明日香は、ノートを取り出して律儀に内容を書き記している様子。
しっかり統制が取れてるな、俺が出る幕も無いと思うんだけど。
まぁ、向こうが必要とするのなら、俺も力を貸すのに
俺は琴音の手腕を疑っていないし、仲間達のチーム力も信頼している。バーチャ世界では新参者の俺などが、出る幕も無いんじゃないかと考えているだけだ。
それでも俺が必要になれば、勿論その時は精一杯力を貸す所存。
そんな事を考えていたら、隣で餠に
これは周囲の冒険者に較べても割と高い方らしく、移動に時間を割かれているにしては上々の出来との本人談。ただし装備に関しては、金も無いし酷い有り様との事。
あちら立てればこちらは立たずの、まぁ良い見本ではあるらしい。
「そっちはNMを相当倒してるって話だし、出遅れを差し引いても順調なんじゃね?」
「そうでも無いぞ、今日なんか精霊の祠造って半分終わったし」
――本当に、冒険者稼業って侭ならないモノである。
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