49話・消極的な彼女
私が隣の席を勧めると、彼女は遠慮がちにソファーに腰を下ろした。母付きの女官がペーラ嬢から受け取ったものを教えてくれた。
「妃殿下。ペーラ嬢からハーブ入りのクッキーとお茶を頂きました」
「ありがとう。ペーラ。さっそく頂いても良いかしら?」
「どうぞ」
「アリー。ペーラはね、よくオリティエの下にも足を運んで気分を落ち着かせるハーブティーを入れてくれていたのよ」
母がペーラを持ち上げる。彼女はそんな母にはにかむような笑顔を向けた。性格はあまり活動的では無いように感じる。
「ペーラ嬢は確か、お母さまが彼女の父親と遠縁だとか?」
「ええ。そのビーサス叔父さまからオリティエさまの事を頼まれていましてご機嫌伺いに訪れておりました」
「オリティエもペーラの入れてくれるハーブティーが好きだったようで彼女の訪れを楽しみにしていたわ」
「仲良くされていたのですね?」
私の言葉に一瞬、目を見張ったような彼女はぎこちなくええと頷いた。
「オリティエは気難しがり屋な部分もあったから相手をするのも大変だったでしょう?」
「ええ。まあ……」
母の問いにペーラは答えにくいようだ。彼女も好き好んで彼女の下へ足を運んでいたのではないと言う事かも知れない。
それから彼女が持ってきてくれたハーブクッキーやハーブティーをご馳走になりながらしばらく雑談していたら、母が思い出したように言った。
「そう言えばあの子が使用していた部屋に残されているものがあるのだけど彼女のお父さまがいらしているのなら渡しておいた方が良いわよね? アリーダ」
「その方がいいと思うわ。でも彼女の遺品は全てビーサス伯爵の下へ送られているのではないの?」
「いいえ。まだ残っているのよ。キランが残しておいて欲しいと言って……」
「じゃあ、キランのことだから形見として手元に残しておきたいんじゃない? 彼に聞いたの?」
彼に聞いてみたの?と、聞けば母は首を横に振った。
「まだよ。キランとは話す機会がなくて」
「キランもいくら忙しくても時間を作ろうと思えば作れるものだと思うけどね」
キランは恐らく、母とオリティエの仲が悪かったことを知っているからまだそれを気にしているのかも知れない。
「いいわ。私から聞いておいてあげる」
母からだとオリティエとの事もあって気まずいのだろう。
「その前にオリティエさんの部屋を見てきても良いかしら?」
母が頷いたのでソファーから立ち上がると、ペーラがご案内致しますとソファーを立ち上がった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます