47話・ビーサス伯爵には気を許さないほうがいい
フォドラの名前を出すとルーグは虚を突かれたような顔をした。彼女は皇帝アダルハートの公妾であり、ルーグの書類上の妻。彼女が勧めたと聞き、意外に思ったようだ。
「俺はおまえのことが心配なんだ。今のおまえはおまえが思っているよりも国内外に影響力がある。そのおまえを誰かが己の利益の為、利用し害さないとも限らない」
ルーグに抱きしめられる。俺はおまえを危険な目に晒したくなかったと言われる。ルーグはオリティエの死の真相を探り、私の両親の身を守ると言う皇帝の命がある。そこで相手が私へと狙いを定めたらと不安なのだろう。
「大丈夫よ。ルーグ。私はそんなに弱くない。そんなに心配ならあなたが私の側を離れるときにはビーサス伯爵を置いていけばいいわ」
ビーサス伯爵はフォドラが頼んだのか、私がルーグの後を追う支度をしていたら同行を申し出てくれた。皇帝も許可して私の護衛のような立場でついてきてくれたのだ。
でもルーグは浮かない顔をした。
「ビーサス伯爵には気を許さないほうがいい」
「伯爵が将軍の妻と縁戚だから?」
「それだけじゃない。伯爵は実子のオリティエとはあまり仲が良くなかったと聞いている。継子であるフォドラに目をかけていたような節がある」
「それって……? もしかしたら彼がオリティエの死を画策した?」
「その可能性も否定しきれない」
「でも伯爵はオリティエの死に疑問を持っていたのではないの? 彼女の死を願っていたとしたらわざわざ皇帝にその事を伝える?」
今回、オリティエの死に疑問を持った伯爵はそれを皇帝に打ち明け、その真相を調べる為にルーグ達を派遣すると聞いていた。それなのに彼が娘を殺害したとしたら矛盾してないだろうか?
「とにかく、伯爵を全面的に信用しない方がいい。腕は確かだが何を考えているか分からないところがあるからな。俺がおまえの側を離れるときには副官を置く」
「分かった」
「ここにはオリティエの死を謀った者がいるんだ。その危険がおまえに及ばないとも知れない。気を付けろ」
お互いに見つめ合って唇が近づいた時だった。ドアのノック音がした。
「誰だ?」
「明日のことについてお話しを。宜しいか?」
ルーグの誰何の声に応えたのは声からしてビーサス伯爵のようだった。
「私戻るね」
小声で囁いて私は銀の腕輪を擦った。
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