第25話・ルーグ、思い切りやっちゃって
「公爵。一つ、教えておいてあげましょう。私の趣味は狩りなの。この帝国の女性達は深窓育ちが持て囃されているようだけど、私は真逆でね、そこをあなたのお兄さまには気に入られたみたいなの」
「こ、皇妃殿下……」
「ただ首を刎ねるのでは面白くないわね。どうせなら目をついてあげましょうか? それとも鼻? 心臓? いや、それともだらしない部分を落とした方がいいかしらね?」
「頼む。助けてくれ。殺さないでくれっ」
そう言いながらカルロスは慌てて扉の前まで逃げた。そのカルロスを足止めするために槍を投げる。ぶるんと空気を震わせて槍は彼の顔の横に突き当たった。すると彼は大人しくなった。
「リーゼロ公爵?」
いつまでも動く様子のない彼をルーグと見に行くと、器用にも彼は立ったまま気を失っていた。
「よっぽど堪えたみたいだな」
「これでもう二度とこんな事しでかさないと良いけど」
「大丈夫だろうよ」
気を失ったカルロスは、ルーグの指示で近衛兵数名の手で担架に乗せられて牢屋へと運ばれて行った。
それを見届けたら急に腰が抜けた。ずっと気が張っていたようだ。その場に立っていられなくて沈み込んだ私をルーグが抱き上げ寝台まで運んでくれた。
「アリーダ?」
「怖かった。ルーグ」
「もう大丈夫だ。おまえの側にいてやれなくて悪かった」
「ルーグは何していたの?」
「門前で喧嘩している男達がいてその仲介にあたっていた。もしかしたらそれを利用されたのかも知れない」
「皆の目をそちらに引き止めておいて、その間にあのカルロスが私の寝室に忍び込んだってことね?」
「あのカルロスの発言が気になる。しきりに誰かの部屋と間違えたように言っていたが、もしかすると使用人のなかに手引きした者がいるのかもしれない」
「ルーグもそう思う?」
「この宮殿は皇妃殿下所有のもの。元は後宮でもあった場所だから基本、男性は立ち入り禁止だ」
「あら。でもあなたは部屋まで賜っているけど?」
「この宮殿の主人を日夜守る為、皇帝より俺の立ち入りは許可されている。あと、プラタ宮殿に配属された近衛兵達もな」
「じゃあ、それ以外の男性の立ち入りは許可されていないと? 勿論それにはあのカルロスも含まれているのよね?」
「ああ。当然だ」
「そう。なんだか疲れた……」
「寝れそうか?」
「ルーグが側にいてくれるなら」
「じゃあ、着替えてくる。それぐらいは待てるか?」
「勤務中じゃないの?」
「仕事なら終わっている。あの馬鹿は牢屋送りにしたし後は皇妃様の添い寝だけだ」
寝台で横になった私の頭を撫でて彼は隣の部屋に向かうとすぐに着替えて戻って来た。寝台の中に入りこんでくるとさっそく聞かれた。
「あの馬鹿に何された?」
「胸を掴まれた」
「なにぃ」
「あと、大声出されると困るとか言って口元を手で押さえられた」
「あいつぶっ殺す」
「ルーグ。思いきりやっちゃって。許せない」
「分かった。任せろ」
明日、きっとカルロスは容赦のない尋問を受けることだろう。気持ちよく寝ていたのを不快にさせ、しかも私を襲おうとしたのだ。そう簡単に許せる気はしない。
「今日は嫌な思いをさせて悪かった。もう二度とこのような目に合わせないからな」
「うん。あのままあの男に犯されてしまうかと思ったら怖かった。ルーグがすぐ来てくれて良かった。ノギオンさまさまだね」
この魔法の銀の腕輪があって良かった。このおかげでルーグを呼び出すことが出来て助かった。
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