第70話 晩ごはんはカレーライス
散々ビーチで遊び倒した僕たちは、別荘へと帰還。
各部屋で、まずは海水でべたつく体を洗い流す。
部屋にシャワールームがついている事に関しては、今更言及する必要もないだろう。
だって、松雪家の別荘なんだから。
むしろ、ついてない方が驚く。
「ホノカ。バカンスデバイスから戻ろうか? 毎晩充電しろって親父が言ってたし。画面も大きい、機能も充実なら、確かにエネルギーの消費が大きそうだ」
『ちょっと待ってくださぁーい! ホノカもシャワーを浴びています!』
こちらも今更説明する必要もないかと思われるが、ホノカは現実世界と仮想空間を可能な限りリンクさせて過ごしている。
つまり、僕たちが海に浸かれば、彼女も海水に浸かる訳であり、ならば体がべたつくのも一緒。
「もしかして、今覗いたら怒られる?」
『むっふふー。大晴くんだけなら、特別に……いい、ですよ?』
僕が合宿に来て良かったと心の底から思えるイベント発生。
こんな時に「いや、それはさすがに」とか言う選択肢をチョイスする愚か者は、イベントスチルを取り逃がす。
チャンスは一瞬。
その刹那の判断で、その後の世界は一変するのだ。
「そ、それじゃあ、お邪魔します!!」
『えへへー! 実はもう、バスタオルを巻いていましたぁ! 残念でした、大晴くん!!』
「……僕にとってはそれもご褒美なんだよ! ちゃんと日焼けしてる! こんがりホノカ、最高に尊い!!」
『ふぁ!? そ、そんな風に見られるとは、予想外でしたぁ。あ、あの、恥ずかしいので、あんまり見ないでくださぁい』
合宿って、最高だ。
その後、僕はシャワーで海水と欲望を洗い流して、着替えを済ませたらリビングへと向かう。
なお、ホノカも着替えを済ませており、リラックス仕様の彼女の洋服も大層可愛らしい旨を付言しておく。
◆◇◆◇◆◇◆◇
「来間ぁー! お腹空いたぁー!!」
「自分もっす! たくさん遊んだので、お腹はかなりペコっすよー!!」
「やれやれ。急に小学生の担任教師になった気分だ」
「なにをー! この体のどこが小学生だって言うのさ! ほれ、見ろー! 健康的な日焼けのあとを! 男はこーゆうの好きっしょ!」
「あ。それはもうホノカのを堪能したので、大丈夫」
守沢のやっすい色仕掛けを右から左に受け流す。
受け流した先には、小早川さん。
「牡丹ちゃん、日焼けの後、ちょっとエロい。牡丹ちゃんの水着、胸もとが割と開いていたから、日焼けの部分と白い肌のコントラストが絶対エロい。ね。牡丹ちゃん、ちょっとブラジャー外してくれる? 一応、確認しておきたいなって」
「美海ちゃぁぁぁん!!!」
「大晴くん。小生に手伝えることはあるかい?」
「じゃあ、これテーブルに運んでもらえますか?」
「これは?」
「腹ペコ三次元には、野菜でも食わせておきましょう」
新鮮な野菜が山ほどあるので、レタスとキャベツとトマトを適当に切って、チーズを適当に細かく切って、その上にごま油と調味料各種で作ったドレッシングと、ゴマと黒コショウぶっかけたら、お手軽サラダの完成である。
「なにこれ、うまっ! 来間、女子力たっか!! 引くくらい美味いし!」
「このピリ辛な感じと、チーズの風味がクセになるっすね!!」
「はむっ。はむっ。はむっ。おいしい。来間くん、おいしいよ」
「確かに、大晴くんの料理はクオリティ高杉内俊哉でござるなぁ。いつでもお嫁に行けるジャンカルロ・スタントンでござる」
三次元どもが野菜をむさぼっている間に、僕はカレーをとっとと仕上げる。
スパイスがあって、固形のルーがないと言うハプニングに襲われたが、ホノカが適切なスパイスの調合を調べてくれたおかげで事なきを得た。
ニンジンとジャガイモは大きめ、玉ねぎはみじん切りと大きめカットの2種類。
さらに、トマトに茄子、ピーマンを投入。
カレーに入れるにはもったいない牛肉と、牛ミンチをフライパンで炒める。
我が家のカレーではよくやる作戦なのだが、メインの肉が少ない時は、ミンチで誤魔化す。
意外と食感がよくなるし、満足感も得られるので、同士諸君にもおすすめ。
それが、今日は高級肉に高級ミンチの合わせ技。
さぞかし食べ応えがあるだろう。
そして、調理完了。
やはりカレーは作るのが楽で助かる。
◆◇◆◇◆◇◆◇
「はい。できたよ。全員、ご飯好きなだけよそったら、並んだ並んだ」
「自分、一番槍いいっすか!? おおー! 夏野菜のカレーっすね! 大盛でお願いしまっす!!」
「その冗談みたいにデカい丼、どこで見つけて来たの? まあ、たくさん作ったから良いけどね。はい、どうぞ」
守沢と高虎先輩は、普通のサイズのお皿にほどほどの量のご飯。
さすが、自分を律しているコンビ。
旅行でも浮かれて大食いはしない模様。
「来間くん。お願いします」
「うん。予想はついていたけど、小早川さんもその冗談みたいな丼できたか。いいよ、好きなだけ食べるといい。嫌いな具があったらよけるけど?」
「ピーマンと茄子とニンジンはいらないかな」
「メインじゃないか。やっぱりダメ。ちゃんと食べなさい」
「むぅ。来間くん、いじわる」
いじわるじゃない。むしろ、小早川さんの事を考えている。
「じゃあ、食べようか」
「「「「いただきまーす」」」」
「うまー! 来間、もう人間ヤメてお料理ロボットになれば?」
「はふはふっ! 超絶美味いっす!! 来間先輩は天才っす!! これならいくらでも食べられちゃいます! 自分、おかわりいいっすか!?」
「はむっ。はむっ。はむっ。はむっ。はむっ。はむっ。来間くん、おかわり」
「大晴くんは食べていていいでござるよ。小生にお任せあれ」
『えへへー! ちゃんとホノカのために甘口のカレーも作ってくれる大晴くん、本当に大好きですよぉ!!』
ホノカに褒められるのは至上の喜び。
三次元たちに褒められるのは、まあ、そこそこの喜びってことにしてやらなくもない。
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