79話 新たな試練

「はぁはぁはぁはぁ……」

 酸素を取り込んでも肺がそれを取り込んでくれず、息苦しいままだ。

 それでも達成感を突き抜けて感じる。

 死闘を終えて立っているのは俺だ。

 クリア条件は時間経過……

 よく考えれば当然だ。

 自分よりも強い未来の自分に勝てるはずがない。

 分身の体が崩れたあと、ようやくここから出ることができる明かりを見つけ緊張の糸が切れて体の力が抜ける。

 今までもギリギリの戦闘は何度も体験してきたと思っていた。

 しかし、今回はぶっちぎりでギリギリだった。

 ほんの少しでも諦めたり楽をしようとしたらダメだったであろう。

 その代わりにいい経験ができた。

 なんせ自分がどういう成長すればそうなるのかの、いい道標になった。


-インフォメーション-

スキル『影気』を獲得しました。

獲得スキルがスキルセット上限を超えました。

スキルセットから外すスキルを選択してください。


「器用向上を選択する」

 俺の体の中から光の粒が漏れ出て一ヵ所に集まっていく。

 光は数センチサイズの球へと形を変えた。

 器用向上のスキル玉の完成だ。

 こうしてスキル球は生まれる。

 これを売るもよし、後々必要になると思うなら保管しておくのもよしだ。

 気をつけなければいけないのはスキル球にできないスキルもあり、それを選択してしまうとただただ、スキルが消失してしまう。

 俺はスキル球を影の小窓にしまう。

 実は影の小窓の中には不意打ちのスキル球もある。

 乱刀・突と入れ替わったわけだが、このスキル選択はかなりシビアだ。

 今はまだよくても、もっと悩ませるときが必ず訪れるだろうなと思う。


-影気-

影に関するスキル、魔法を発動する際に魔力の代わりに使用することができる。

影気の量はMPに等しい。


 影気は影専用の魔力のようなものだ。

 似たスキルでオーラや聖力なんかがある。


 もう少し休憩したい気持ちはあるが、いつまでもここにいるわけにはいかない。

 いつ、出口が消えるとも分からないのだから。

 光へと体を投げ込むと景色が変わる。

 無闇回廊に入った場所と同じところに出てきたようだ。


「クロツキ様、お疲れ様でした」

 セバスとその後ろに馬車を操る執事、帰りの道中のお世話をしてくれるメイドさんたちがいた。


「いつ出てくるか知ってたんですか?」

「いえいえ、知らなかったですが、予想よりも早いお帰りでしたよ」

「えっ、じゃあずっと待ってたんですか?」

「クロツキ様はどの程度回廊にいたとおかんがえですか?」

「いや、ちょっと正確ではないですが、三日くらいはいたような気がします」

「クロツキ様が入ってから2時間程度しか経っていないですよ」

「中は時間の進みが遅いということですか?」

 だったらここで鍛えまくればすぐに強くなれそうだ。


「そうですが、中にいすぎては廃人になるのでおすすめはしませんよ」

 口に出していないことに回答してくるセバスはさすがだ。

「お疲れでしょうから、道中お休みになられてください。城に帰るとお嬢様より伝えたいことがあるそうです」

「お言葉に甘えさせていただきます」

 中にいるときは眠気も一切感じなかったが、一気に睡魔が襲ってきたな。

 ログアウトさせてもらおう。


 城に着くとジャンヌがいつものように庭でティータイムを楽しんでいた。

「初めて会ったときとはレベルも装備も見違えるほど成長したのう、出会ったのが昨日のように思えるが子の成長は早い」

 ジャンヌが目元を擦って変な小芝居をしている。

 こういう悪戯好きな一面があるのは既に承知している。

 前の宴で俺をベロベロに酔わせたのもジャンヌだと聞いた。

 まぁ、そのお詫びもあってディーと出会えたんだから文句なんてないんだけど。


「ただいま、元気にしてたか」

「キュイキュイキュイ」

「グフっ!!」

 ディーの頭突きが腹部にクリティカルヒットした。

 無闇回廊に連れていくことができず、仕方なくシュバルツ城で預かってもらったのだが、俺が旅立つときはごねて大変だった。


「よしよし、元気そうでよかった」

「キュイキュイ」

「そやつもそれなりに楽しんでおったとおもうがのう、まぁ、それはさておき、クロツキよ、お主も察しはついていると思うが、とある依頼をしたいと思っている。達成した暁には新たな職業を提示してやろう。やってくれるか?」

 新たな職業、いくら勘が鈍くても分かっている。

 ジャンヌたちは俺を導いて何かをさせようとしている。

 今のままではあまりにも弱すぎるため俺を育ててくれているのだ。

 それこそジャンヌの言うようにほぼ生まれたてのようなときからここまで面倒をみてもらっている。


「嫌なら断ってくれてもよいぞ。お主の意思を尊重しよう。断ったとて関係が悪化するわけでもない。気軽に答えてくれて構わん」

「もちろん受けるよ」

 俺は二つ返事で答えた。


 依頼の内容は殺人鬼Xの暗殺、殺人鬼Xの正体を見破り殺すというなんとも物騒なクエストだ。

「くだんの殺人は二つの顔を持つ街『チャリック』で発生している」

「二つの顔を持つ街?」

「まぁ、行ってみればその意味も分かるじゃろ。まずはチャリックの市長にでも詳しい話を聞くといい。お主が行くことは伝えておく」

 こうして俺はチャリックに足を踏み入れることになった。

 もちろんディーも影の中にいて一緒に行く。


名前:クロツキ

種族:人間

称号:暗殺者

職業:暗殺者(Lv18)

Lv:48

HP:760

MP:76

STR:67

VIT:67

INT:67

DEX:115

AGI:182

SP:0


武器:宵闇の短刀『月蝕』、小刀『刹那無常』

防具: 宵闇の外套がいとう『疑心』、宵闇の手套しゅとう繊魄せんぱく』、 宵闇の脚套きゃくとう影踏かげふみ

装飾: 睨眼髑髏げいがんどくろの仮面


スキル

隠密、迅雷、敏捷追求、虚像の振る舞いシャドームーブ、暗器術、怠惰の魔眼、恐怖のオーラ、乱刀・斬、怨恨纏い、状態異常耐性、自然体、影の小窓、乱刀・突、影気


所持称号

冒険者、同族殺し、大物喰い、不死殺し、暗殺者、村の英雄、竜殺し


経験職

隠者(Lv10max)・暗器使い(Lv20max)

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