twelve bullets 気を揉む狩人
俺達は難なく2回戦、3回戦と続けて勝利した。3連勝する勢いがチームの雰囲気を盛り上げていく。
俺は児島や梁間などの盛り上げ上手な2人を中心とする輪に入らず、端の机でチームのオーダーを考える。次の試合のことを考えなければならないのもあったが、心臓の血管が細くなっていく感覚が純粋に勝利の喜びに浸ることを拒んでいた。
大会は一時休憩を挟む。なんでもペイントシューター普及を狙った紹介を特設ステージでやるためらしい。
そのステージには現在大会に勝ち残っている8つのチームの代表がいる。エヴァンスチームの代表は臼井が立っていた。他のメンバーはそれを見守るため、お客さんに紛れて見ている。
俺はノートを取りに更衣室に向かってから、特設ステージにある客席まで遅れてやってきた。
特設ステージの客席はかなり埋まっており、上々の盛況ぶり。俺は客席から離れて見ることにした。俺は座りやすそうな高さの
臼井は他のチームの人とステージの端に固まって椅子に座っているようだ。プレイヤー達は司会者やアシスタントから話を振られ、解説やら意見を述べていく。
「観客席で観ないんですか?」
声をかけてきたのは新内だった。
「お前こそ」
「僕はトイレのために席を立っていただけです」
新内は俺の隣に座る。俺は観客席に戻らない新内の行動に困惑しながら口にしなかった。
「腑抜けてますね」
「は?」
「時々ボーっとしてますよ。椎堂さん」
新内は呆れた様子で細めた目を向けてくる。少し驚きはしたが、まだ新内の言及に対応できる冷静さは残っていた。
「考えることが多いんだよ」
「チームのこと、じゃない方ですか?」
「どっちもだ」
まさか新内はあの話を北原から聞いてるのかと勘ぐってしまう。
「しっかりしてください。あなたが腑抜けていたら、他のメンバーにも移ります。あなたはこのチームの精神的支柱でもあるんですから」
「年下に注意されるのは初めてだ」
「堪えているのなら結構です」
新内は落胆する俺を見て嘲笑し、観客席に戻っていく。
「臼井選手はペイントシューターのどういうところが楽しいと思われますか?」
司会者の質問がマイクを通して響く。気がかりなワードは俺の注意を惹いた。
「他のプレイヤーと協力するところですかね。それぞれの長所を生かしてゲームを攻略していく。私はトップアタッカーなんで、走りながら敵プレイヤーを倒す爽快感が凄く気持ちいいんですよ。チームのみんなには、たまに迷惑かけることもあるんですけど、そういうところもさりげなくフォローしてくれたりして、一体感みたいなものも感じられるんです。だからいつも楽しいと思えるんですよね」
臼井はあどけなく堂々と語っていた。
もし、汐織が生きていたら、あんな風にキラキラした生き方をしていたのかもしれない。臼井と汐織が重なるたびに
俺は追憶に浸りながら、イベントの様子を半分の意識くらいで観ていた。
トーナメント戦は後半に入り、エヴァンスチームは準々決勝で勝利を収め、準決勝が始まろうとしていた。控室の中は
「おっしゃ! 次も勝とうぜ!!」
「児島さん、弾はありますか?」
「ありがとう。滝本さん」
準決勝の出場者は臼井、新内、児島、桶紙さん、梁間、一条だ。
「しかし、やっぱり勝ち進んでくると、簡単に勝たせてもらえねぇな」
梁間は疲弊感を漂わせて肩を揉んでいる。
「当たり前でしょ。僕達と同じように勝って来てるんですから」
新内は呆れた様子で答える。
「みんなインカム確認しといてね」
臼井は注意を促す。
「おいっす」
「椎堂君。この作戦はサイドからじゃなくてもいいのよね?」
今回の試合のリーダーになった桶紙さんが聞いてくる。
「はい。応用は可能ですが、練習してない応用戦術は使わない方がいいですね」
「あ、そうね。ふふ、つい昔の癖が出てしまうわね」
桶紙さんは恥ずかしそうにする。
「具体的な戦術について、今度お聞かせください」
「ええ、もちろん」
大人の女性らしい落ち着いた微笑は、桶紙さんの気品の良さを醸し出していた。
「エヴァンスチームのみなさん。そろそろフィールドへ」
イベントスタッフが促す。
「了解しました」
「じゃあ行ってくるね~」
「応援してます」
臼井を含めた6人は控室から出て行った。俺達はモニターのソファの前に座ろうとする。
「椎堂」
サブに回っていた北原が俺を呼び止める。
「なんだ?」
「ちょっとこっち来い」
北原はそれだけ言うと、控室を出た。
俺は
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