nine bullets 現地集合

 まだ肌寒さの残る初春。俺は東京のイベント会場にいた。

 太陽光を浴び、鮮やかな緑に輝く芝生が広がっている土地の至るところに、様々なブースが設営されている。

 迷彩服の人や戦争映画の主人公のような服を着た人、ゲームに出てきそうなキャラクターが銃を持っていたりと、たくさんの人で賑わっていた。

「くぅーーー! 来たね来ましたねぇ!!」

 梁間は大勢の人の賑わいにテンションが高まっているようだ。

「面白そうなのがやってるぞ。児島」

 梁間は児島に話しかけるが、

「プレゼンより緊張する……」

 児島はもう縮こまっていた。


「何びくついてんだよ」

「こんな大きな大会って聞いてないんですけど……」

「大会自体は大きくない」

 俺は児島に言葉を返す。

「いや、これ全員観客になるんでしょ!? 僕の姿があの大画面に映る可能性だってあるんですから」

 屋外ビジョンモニター。特設ステージが設けられた場所には、特大のモニターが堂々と見えていた。

「アレにお前が映ったらモテるかもしれないぞ」

「本当にそう思ってます?」

 児島は疑うような視線を投げかけてくる。

「お前は試合前になると卑屈になるよな」

「はあ~、これだからリア充は……」

 児島は憎たらしく愚痴を零す。

「俺は試合に出ないから緊張する必要がないだけだ。それに、あの特設ステージに映るのはベスト8から。他の試合は専用のブースだ」

 俺は児島を軽くあしらい、他のメンバーを探す。まだ児島と梁間としか合流できてない。俺達は会場の中を散策していく。


 早速見つけた。モデルガンが展示されているブースで鑑賞に夢中のようだ。俺は2人に近づいていく。

「このフォルムは素晴らしいですね」

「はい。グリップの質感もたまらないです」

 一条と石砂さんはそれぞれモデルガンを手に取って眺めている。

「重厚感の再現性もありますねぇ」

「ただバレルに刻まれるエンブレムは結構荒いようです。そこはちょっと残念です」

「あ~、そうですね。石砂さんは火薬入れて撃ったことありますか?」

「はい、ありますよ」

「ペイントシューターじゃ味わえないあの反動、いいですよね~」

「あの反動を何度も味わい過ぎて脱臼してる人いましたよ」

「え、そんな人いるんですか!?」

「うん。僕の兄が」

「お兄さんですか……」


 この通り、一条と石砂さんは俺が知らない間に仲良くなっていた。仕事の都合でいけない日が最近あり、その間に一条と石砂さんの銃マニア魂が共鳴したようだ。

「あ、椎堂さん」

 一条が俺に気づいた。

「おはようございます」

 石砂さんは礼儀正しく挨拶する。

「おはよう。臼井達はどこだ?」

「あ、そうでした」

 どうやら臼井達を探す途中で夢中になったらしい。

「探しましょうか」

「そうですね」

 一条と石砂さんは苦笑いを浮かべながらモデルガンを展示場所に置いて探し出す。

 人混みの多い場所で落ち合う一番簡単な方法はメールや電話で知らせる。そんなことは分かっている。だが返信がない。

 意味が分からない。この大事な大会の日に、合流するだけで手間取っていたらそれだけで体力を消耗する。それを分かっているのだろうか。特にリーダーである臼井。あいつに言いたい。

 そして、さっきまでいたはずの児嶋と梁間がいない。こんなに団体行動できない連中だったのか、このチームは。俺は先が思いやられる連中共の捜索を再開する。

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