twenty six bullets 翔閃

 俺は物陰から飛び出した。瞬時に2人が前にいることを認識。俺は走りながら右に視線を振り、中央付近に梁間がいるのを捉えた。俺は視線を前に戻し、銃口を梁間に向けて3発撃った。

 その間も動きを止めることなく、前にいる滝本さんと一条が向ける銃口の先から弾が飛ぶ方向をすぐさま計算する。左手の銃も一条と滝本さんに吼えた。

 この間わずか3秒。俺はいくつか弾に当たったが、梁間、滝本さん、一条の胸のプレートが光っていることから、俺が当たった弾は狩人がやられた後に当たった弾だと判断し、滝本さんと一条の横を通り抜けた。


 俺は左方向から来る児島から逃げる。狩人側陣地に近い収納棚エリアに入っていく。

 新内と北原の姿を探す。すると、かなり奥の方で新内と北原が出てきた。新内と北原は銃を構えている。新内と北原のいる位置はハンドガンじゃ届かない。

 俺は走る位置を変えたり、体をぶらしたりして照準を合わせられないようにする。前と後ろからどんどん弾が飛び、俺の近くで弾が交わっていく。その間を縫うように右に入る道を目指して走る。俺は横道に飛び込むように体を投げ出した。


 両腕をクロスさせて手の甲で床をついて前転し、すぐさま立ち上がって走る。俺は右に移動していく。右側の壁に突き当たると、一番壁際の道で引き返す。児島は収納棚を挟んで隣の道から追ってきている。児島は撃ってきているようだが、俺には当たらない。

 背後から正確性のある弾道を描いた弾が飛んできた。後ろを見ると、新内が追ってきている。走りながら銃身の長い銃で照準を合わせてきていた。

 重いはずのスナイパーライフルを走りながら撃ってくるとは……。意外とタフだな。

 俺は横移動をしながら前に走る。荒ぶる呼吸をしながら両腕を大きく振り、ローラーコンベアのエリアも通り抜けていく。

 背後から弾が飛んでこなくなった。新内との距離を離してきているようだ。銃身がある分重くなるから、新内と北原は銃の重量を背負って走ることになる。機動性に関しては俺の方に分があるのは計算済みだ。


 俺はキツネ側陣地近くの収納棚のエリアに入る。収納棚の切れ目。あそこなら身を隠せる。俺はスピードを上げた。

 曲がった瞬間、不意に人影が視界に入ってくる。俺が銃を向けようとした瞬間、俺の胸にハンドガンの銃口が押し込まれた。

「フリーズ」

 北原が威嚇するような目で声をかける。

「……」

 北原に銃を突きつけようとしていた手を下ろし、引き金から指を離す。両手の銃のグリップを北原に向けて差し出した。

「第3試合終了。狩人側の勝利です」


 インカムから流れたスタッフの声と共に、高まった鼓動が鎮まり返っていくのを感じた。

 北原は微笑を零すと、自分のハンドガンをホルスターに差し込み、俺の2つの銃を取る。俺の銃の安全装置をオンにして弾倉を抜いた。

「上出来だな」

 北原はそう言いながら俺に2つの銃と弾倉を差し出す。俺は銃と弾倉を受け取る。

「さすがと言ったところですね」

 近づいてきた新内も緊張が解けたような笑みを向けてくる。

「上からだな。新内君」

 児島は不満げに言う。

「そんなことはありませんよ」

「ふう……。もうキツネにはなりたくないな」

 俺はどっと押し寄せる疲れをため息と共に吐き出した。


 俺達は控室に戻る。

「お疲れ様です」

 滝本さんがペットボトルのジュースを持ってねぎらってくる。

「ありがとう」

「やっぱり椎堂さんは凄いです! あんな機敏な動きで3人を瞬殺しちゃうなんて凄過ぎます!」

 一条が眩しいくらいの輝かせた瞳で褒めてくる。

「大げさだ」

 俺はゴーグルを額に上げる。

「私も見ててワクワクしたよー」

 臼井は興奮しているようで、テンションがさっきより上がっているみたいだった。

「ですが、かなりの無茶では? あんなやり方をすれば、さっきのように回り込まれてしまいますし、疲労の蓄積もかなりのもの。関東大会は連戦ですから、あのやり方おススメしませんね」

「さっきから文句ばっかだなぁ」

「僕は事実を言っているだけです」

 新内は児島の不満を空かす。


「新内の言う通りだ。あれは無理筋の方法。かなりの体力と瞬発力がないとできない」

「未生と似てたな」

「は?」

 俺は北原にいぶかしげに問う。

「あのやり方を好んでるんだよ。未生は」

 北原は呆れ気味に言って、臼井に視線を振る。

「えへへへ、もう~夏希ちゃんやめてよ~」

「褒めてないからな」

 北原は少し苛立った様子で否定した。

「お前が暴走したせいで何回作戦を台無しにされたか」

「そんな試合したことないよ。楽しかった試合ばっかだよ」

「私は疲れた試合が多かったよ」

「えぇー」

 臼井は不満そうに眉尻を下げる。

「少し休憩を挟んだら続きをしようか」

 俺は微笑ましい凸凹でこぼこコンビの言い合いを差しおいて、みんなにそう促した。

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