twenty five bullets キツネの巣
俺達は狩人側の控室に戻った。
「やりましたよ臼井さーん!」
児島がここぞとばかりに臼井に成果をアピールする。
「おめでとうー!!」
臼井は犬をあやすように大げさに褒める。
「少し上手くなったんじゃねぇか」
梁間も児島を褒める。
「そうかなぁ」
児島はみんなにチヤホヤされて照れている。
「それにしても一条。お前陰険だったな」
梁間はニヤニヤとしながら言う。
「あの方法なら隊列を乱すことができますから。その後の対策を練り直さないといけませんね」
「でもいい方法だったな。どこに隠れてたんだ?」
北原も興味深そうに問う。
「フォークリフトに隠れてました」
そうだったのか。
「でも見つかったら終わりですけどね」
新内は余裕げに欠点を言う。
「そうですね。結構ギャンブル的な部分は
「1と複数なら仕方ないですよ」
滝本さんは苦笑する。
「じゃ、今度は僕か。みなさん、僕を狩れるものなら狩ってみてください。返り討ちしてあげますよ!」
変な捨て台詞を残し、児島は控室を出て行った。
試合は開始5分で狩人側の勝利となった。
「ううっ……みんなで一斉に乱射なんて酷い」
児島は控室の隅で打ちひしがれる。
「すみません。児島さん」
滝本さんが申し訳なさそうな表情で素直に謝る。
「手も足も出なかったですね」
新内はほくそ笑む。
「さ、次は椎堂君ね」
臼井が俺に期待の眼差しを向けてくる。
「遂にボス戦か……」
梁間が変なことを言ってくる。
「椎堂が相手ならちょっと本気出すかな」
北原がやる気になったようで、指をポキポキ鳴らしている。
「椎堂さんなら楽しませてくれそうですね」
新内も何気に闘志を燃やしている。
「みんな期待し過ぎだろ」
俺はみんなの満ち満ちたやる気の様子にげんなりする。
「本気出せよ」
北原が釘を差してくる。
「はいはい」
俺は控室を出て、左に歩いていく。その先にキツネ役の控室がある。
キツネ役側の控室に入り、俺は椅子に腰を下ろす。
さて、どう出るかな……。
一条と同じ方法もいいが、俺の身長じゃ気づかれる可能性が高いし、隠れられる場所もあまりなかった。俺はハンドガンだから、ある程度近づく必要がある。気づかれず近づくことはできるだろうが、何度もその方法が通用するとも思えない。
ギャンブル的な方法か。一条の言った言葉に惹かれる。
そういえば、1人の状況になった時の対処法を汐織に教えてもらったことがあるな。
なんだっけな……。そう、翔ける閃光と書いて
翔閃光の方がカッコいいって俺が言ったら、汐織と言い争いになった。俺は零すように思い出し笑いをする。
「やってみるか……」
俺はフィールドに入った。俺は銃に弾倉をつける。足のホルスターに入れていた予備の銃にも弾倉を装着する。
今回は2つの銃を使う。2丁拳銃でやるのだ。これが翔閃の正体ではないが、手数は多い方がいい。
俺は息を吐いて、心の準備をする。スタッフのカウントダウンが始まった。俺は目を瞑って開始の合図を待つ。
試合が開始された。俺は走り出す。翔閃を出す場所は決めている。一番いいのはローラーコンベアのある場所。あそこなら一番走れる。だが、相手の出方次第では場所が変更になることも頭に入れておかなければならない。
収納棚の並んだ場所でも翔閃を出せないことはないが、挟まれたりしたら終わりと思っていい。
ローラーコンベアの辺りに来た。まだ狩人側のプレイヤーは来ていないようだ。俺はローラーコンベアの側に積み上げられた折り畳み式の青いカゴと柱の陰に身を屈める。
俺は息を潜め、狩人達を待つ。声と足音が徐々に聞こえてくる。
緊張するな。
左側にどれくらいの人数を割いているかは分からないが、おそらく左側に全人員を割くことはないだろう。開けた場所なだけに、接近戦の4人の弾を避ける必要がある。
4人の弾を避けた後、収納棚の並んだエリアに入る時、どのレーンに入るかが重要だ。待ち構えている新内と北原に鉢合わせたらかなり危機的な状況になる。
まさにギャンブルだな。
声と足音はだいぶ近くなってきた。よし……もうすぐ出よう。
俺は心の中で秒を刻む。3、2、1……。
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