twenty four bullets 実質的勝利

 5分後。ローラーコンベアからまた収納棚が並ぶ場所に入っていた。同じ場所ではなく、キツネ側の陣営に近い場所だ。

 俺達は一度合流することにした。

「どうなっているんでしょうか」

 新内は辺りに警戒をしながら呟く。

「いないな」

 北原も怪訝けげんな様子で呟く。一条はまだ見つかっていない。

「こりゃあもしかして、かくれんぼで時間切れを狙ってんじゃねぇの?」

 梁間は肩を竦める。

「時間切れなら引き分けですよね?」

 児島はみんなに聞く。

「そうですが、内容的には実質キツネ側の勝ちと言ってもいいと思います」

 新内も興醒めした様子で答える。

「ま、でも一番無難な勝ち方だよな」

 梁間は乾いた笑みを見せる。やり方は姑息な気がするが、はなから不利なキツネ側ならやむを得ないだろう。

「あと10分か。しらみつぶしに隠れられる場所を探すしかないな」


 俺は気だるげにぼやく。

「そうですね」

 滝本さんは相槌を打つ。

「じゃあまず……」

「いつっ」

 児島が指示を出そうとした時、北原の痛がる声を聞く。北原を見ると、肩を押さえて膝をついており、胸につけた番号プレートが光っていた。その肩と頬には弾の中に入っている着色料が飛び出し、オレンジ色の液体がかかっている。

「後ろです!」

 滝本さんが叫ぶ。俺達は一斉に収納棚の陰に隠れる。収納棚の隙間から覗くと、1つの影が俺達から離れていく姿を見つけた。

「H7、8地点にターゲット発見。ターゲットは自陣側方向に逃走だ」

 俺はみんなに早口で報告する。

「追いましょう!」

 俺達は一条が去っていく方向へ走り出した。


 俺達はローラーコンベアのある中央エリアに戻った。

「どこに行きやがった?」

 梁間は悪い顔をしながら辺りを見渡している。

「ヒットアンドアウェイをしてるんですかね?」

 新内はくだらないといった様子で笑っている。

「つっても、このゲームエリアに隠れる場所があるのか?」

 梁間の言う通り、大きな陳列棚が並ぶ通路とローラーコンベアが走っている交流場所があるだけだけのフィールド。隠れる場所があるとすれば、大きな段ボールとローラーコンベアの機械の影くらい。すぐそばで隠れているなら、相手から撃ってくるなりのアクションがあるはずだ。

「梁間、新内。周りに警戒した方がいい。一条が狙ってるかもしれない」

 俺は新内と梁間に注意する。

「あ、すみません」

 梁間と新内はそれぞれ盾になる物の前で身を屈める。


「一条さん、このエリアのことを調べ上げてたんですかね」

 反対側にいる児島がインカムを通して問いかけてくる。

「かもな」

「今度は私達の陣地側で待ち構えてるかもしれませんね」

 滝本さんは少し緊張気味に答える。

「行くか。児島」

 俺は児島に確認する。

「あ、はい……」

 俺達は自陣側へ戻る。

「梁間、背後を警戒してくれ」

「了解」

「児島。背後を常に警戒するように滝本と協力しろ」

「はい」

 俺達は周囲への警戒を強め、壁際をゆっくり進む。

 収納棚の隙間から右側のスペースを確認する。その時、壁に弾が当たる音が近くで聞こえた。

「走れ!」

 俺はそう叫び、自陣側へ走る。

「どこから飛んできたんだ!?」

 梁間は慌てた様子で尋ねる。

「分からない」

「こちら児島。キツネは後方から接近中」

「新内は自陣方向へ、梁間は相手側陣地方向へ行け」

「「了解」」


 俺は右に走る。一条がいるであろう道の列に入る。収納棚から一条らしき足が確認できる。相手陣地方向へ向かって走っていた。

 やっぱりそうなるか。

 梁間と一条は交戦しているようだ。

「こちら梁間。左方側から一条を追ってる奴はいるか!?」

「はい。児島が追ってます」

「姿を消されないようにしよう」

「はい」

 俺の視界にも一条の姿は見えている。一条は左側に回った。俺もローラーコンベアを迂回し、一条を追う。すると、一条が片手を挙げて立ち止まっていた。

「こちら児島。ターゲットへの着弾を確認」

 息を切らした児島の声が報告する。俺は走りを止めた。

「了解」

「試合終了。狩人側の勝利です」

 俺は振り返った。児島と視線が合う。児島は親指を突き立てた。

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